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神前決闘の後始末

「よくお似合いですよ、オリビア殿」


「……あなたはいつも女性ものの服を持ち歩いているのですか、アルス・バルカ殿?」


「いえいえ、そんなわけ無いでしょう。たまたま魔法鞄の中に入っていたのです。それはドレスリーナの街で行われた服飾品評会で入選した衣服なのですよ。神界にいる神アイシャに渡したのと同じものです」


「神様が着ているのですか? この服と同じものを? そ、そんなものを私が着るわけにはいかないでしょう。お返しします」


「いえ、どうぞ受け取ってください。鎧を返せない以上、なにか着てもらわないとこちらも困りますからね」


「……うう、リゾルテ家の宝が……」


 神前決闘後のバルカ軍対リゾルテ王国軍における武力衝突。

 それはオリビアが復活して止めに入ったことでなんとか終わりを告げた。

 どうやら、リゾルテ王国軍ではオリビアは本当に慕われているらしい。

 無事な姿を見せながら、そのよく通る声で争いをやめるように言うと、特に竜騎士たちは戦うことをやめたのだ。

 もちろん、それに他の貴族や騎士も従ったし、農民兵も同様だ。


 ただ、止まらなかったものもいる。

 スルト家当主であるブライアンに対して執拗に攻撃していた軍の指揮官だ。

 それは同じスルト家の者だった。

 ここでブライアンがいなくなれば継承権が変動することになる。

 そのときに都合がいいという理由もあったのだろう。


 といっても、決して止まらなかったわけでもない。

 ただ、軍の動きを止めるのが他よりも遅かった。

 結局、判断を誤ったリゾルテ側のスルト軍はその将が討ち取られるまで戦うことになった。

 そして、ブライアンの提案もあり、彼が戦犯扱いされることとなる。

 本来、神前決闘というのはその勝負がついたときに、決闘を行う当人同士だけではなく、その周りの配下の者たちも同様に条件に従わなければならない。

 それを破れば教会から神の敵であると言われても仕方がないということもあり、昔から重要な勝負に用いられてきた経緯がある。


 神前決闘における勝負の結果を汚すことは許されない。

 今回のように決闘が終わった後にそんな勝負は無効だと言って介入してくることは断じて認められないのだ。

 ゆえに、それを行った者を神敵認定しなければならなかった。


 だが、ここで竜騎士部隊を神敵として認めてしまうのは少々やりにくかった。

 もしそうすれば、相手は再び破れかぶれで攻撃してくるかもしれない。

 俺は神の盾と名乗っているがあくまでも教会直属の人間ではない。

 ここでなんとかしてしまえば、自身の神敵認定がなかったことになる可能性がある。

 そうであれば、今度はオリビアの言葉を無視してでも、全力で攻撃してくる可能性があったのだ。


 さすがに数百騎もいる竜騎士が相手ではバイト兄も大苦戦して疲弊していたし、こっちも相手にするには大変すぎる。

 が、だからといってお咎めなしにはできなかった。

 そのために、ブライアンの提案に乗ることになったのだ。


 ブライアンは同じスルト家の継承権持ちを討ち取り、俺にこう言った。

 こいつを犯人に仕立て上げろ、と。

 神前決闘の結果に不服を言い、軍同士の武力衝突に発展したのは竜騎士たちが発端ではない。

 このスルト家の男がブライアンから当主の座を奪い取るために動いたために争いになったのだ、ということにしようと言ってきたのだ。


 つまりは生贄、スケープゴートというやつだ。

 竜騎士の代わりにすべての罪を着せてしまうことで、この争いを穏便に終わらせようということになる。

 これはスルト家にとっては本来喜ばしいことではないだろう。

 なにせ、自分の家から神敵を出してしまうことにもなりかねないからだ。


 だが、事実はいくらでもごまかせる。

 この戦いは本格的な軍による衝突ではなく、神前決闘後のちょっとしたトラブルだったことにする。

 神前決闘の結果を覆すために軍が動いたのではなく、スルト家内の問題により争いが起こった。

 そのため、物議を醸して何人もの死傷者を出すに至った犯人はその場で処分されたがゆえに、神敵認定するまでもなくこの事件は終わったのだということになった。


 これはブライアンに借りができた形になるだろうか。

 あとでカイルにも言っておく必要があるかもしれない。

 ラインザッツ領南部がリード領として運営されていく際には、借りのあるブライアンを重用してやるようにと伝えておこう。

 サルディア家のビランのように、周辺地域のまとめ役のような扱いにでもなればいいだろうか。


「まあ、なんにしてもブライアン殿の機転によって争いは終わりました。オリビア殿もくれぐれも約束は違えないようにお願いしたいものです」


「わかっています。神前決闘の結果をきちんと受け入れて、すぐにリゾルテ王国軍を撤退させましょう」


「お願いします。といっても、オリビア殿はこのままこちらに来てもらうことになります。それも神前決闘での約束でしたからね」


「わ、分かっています。私も武人として戦場に出ていた身です。覚悟は決まっていますし、そうでなくとも神への誓いを守ります」


「それはよかった。竜騎士の中から後任の将を決めて、撤退を行ってください。ああ、ご実家や亡き夫になにか伝えたいことがあるのであれば、手紙を書く時間くらいは用意しますよ」


 うまく戦闘が終わったので、さらに事後処理をしていく。

 きちんとラインザッツ領南部からリゾルテ王国軍が撤退するように、オリビアの後任を決めさせておく。

 さらに、今回の出来事の事の顛末をリゾルテ王国に伝えるために、オリビアの直筆での手紙なども用意させた。

 そして、オリビアは亡き夫に対しても手紙を書いていた。


 実はオリビアは既婚者だ。

 もっとも、旦那はすでに亡くなっているらしい。

 お相手は前竜騎士部隊の将を務めていたようで、その縁もあって、オリビアが三貴族同盟に壊滅させられた竜騎士部隊の復活のために送り込まれることになったようだ。

 部下からの信頼も厚かった夫のあとを継いで竜騎士部隊に入ったことで、短期間でここまでの信頼を得ることにもつながったのだろう。


 つまり、オリビアはこの若さで未亡人だということになる。

 このことをバイト兄が知っていたかどうか定かではない。

 が、未亡人であったことは結果として幸いしたと言えるのではないだろうか。

 もしお相手が健在であれば、相手としてはこんな決闘は受け入れられないだろう。

 たとえ、神前決闘であったとしても、自身の妻が他の男に奪い取られていくことを黙ってみていては沽券に関わるというのもある。

 再度決闘を申し込んだり、改めてオリビアを奪い返すために戦いを挑んだりということもあったかもしれない。


 が、すでに数年前に亡くなっているというのであれば問題ないだろう。

 こうして、神前決闘はここに終わりを迎え、リゾルテ王国軍は撤退を開始し、バイト兄は新たなお嫁さんを手に入れることになったのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
野蛮
[気になる点] 賛否両論あると思うが、この作品のクオリティ的に最新話は必要ないかな。女性を物扱いするのが気持ち良くない。 [一言] 最近マンネリ化が緩やかに進行してきて辟易感が否めない。 すごくいい作…
[一言] 決闘までした新たな嫁さんの生まれたままの姿を先に弟に見られたバイト兄さん…南無。
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