話し合い
「よし、じゃあもう一度だけ確認な。リオンはフォンターナ軍を連れて、王都に駐屯する。で、その王都からリゾルテ王国に裏工作を仕掛けつつ、北部貴族をしっかりとフォンターナ王国に臣従させる。それでいいんだよな?」
「そうですね。では、お手数ですがアルス様には一度王都まで来てもらい、王都でもフォンターナの街とつなぐ転送魔法陣を設置していただきたいと思います」
「わかった。で、その間に俺は南にまだ残っているリゾルテ王国軍を追い出して、ラインザッツ領南部を手に入れる。そして、カイルは西に行ってコスタンブル要塞の攻略とその後はラインザッツ領都を攻めて、ラインザッツ領を完全に取りきる。この方針でいいんだな?」
「うん、間違いないよ、アルス兄さん」
3人であーだこーだと話し合った結果、フォンターナ軍は結局リシャールの街ではなく王都に置くことにした。
これにはいくつか意味がある。
一つはリード家が完全に王都を放棄したことを内外に見せることだ。
戦場にて活躍し、武名を高めたことで満足して、そこで手に入れたものをフォンターナ王に委ねてしまったという形にする。
これによって、周りの貴族からの印象を多少アップできるかもしれない。
が、それ以上にカイルの負担が大きすぎるというのもあった。
全員を生け捕りにした王都連合軍の戦い。
その結果、大量の捕虜をリシャールの街で養う必要もあった。
そして、その捕虜を使っての交渉。
これも、相手はいくつもの貴族家が話し合いの対象であるために、かなりの時間がかかる。
それぞれに家によって事情も違えば、考えていることも、求めるものも違っているので非常に粘り強い交渉力が求められる。
どうせ、王都圏や北部貴族の土地に一切の色気を出さないと決めたのであれば、その手間に時間をとられるのはもったいない。
ならば、リオンに丸投げしてしまおうということになった。
これによりカイルは面倒な仕事を手放しつつ、フォンターナ王国に大きな恩を売りつけるということになるだろう。
リオンがフォンターナ軍を連れて王都に身を置く。
そこで、フォンターナ軍を使って王都圏や周辺を安定化させ、かつ、北部貴族などの交渉にも乗り出す。
それをするにはリシャールの街よりも王都のほうがやりやすかった。
さらに、その王都に位置しながら南のリゾルテ王国へと手をのばす。
しばらくそちらは水面下の動きになるだろう。
で、そんな雑務をリオンがしている間に俺たちは各方面でぶつかり合っている軍を動かし、戦闘を終わらせようということになった。
俺の方は王都に行って指定された場所に転送魔法陣を作り、あとはリゾルテ王国軍を追い出すだけということになる。
今年の春先から起こったこの戦いもそろそろ夏が見えてくる時期だ。
なるべく早く終わらせよう。
ようやくある程度のゴールが見え始めてきたので、俺は気合を入れ直して行動を再開したのだった。
※ ※ ※
「……ああ、アルス。いっこだけ聞いてもいいか?」
「なんだよ、バイト兄?」
「さっきのお前の話でおおよその流れは分かった。リード家は切り取った領地の裁可をフォンターナ王に委ねてその忠誠を示したことで、ラインザッツ領だけは確保できる。フォンターナ王国としてはリード領が大きくなりすぎることを防ぎつつ、リゾルテ王国も取り込む可能性が出てきた。それはいい。それはいいんだけど……」
「だから、なんだよ、バイト兄?」
「なんだよ、じゃねえよ。この戦いでバルカは何を得るってんだ? こんだけ戦って、今のところバルカが得たものって言えば、ラジオで戦いぶりを放送して有名になったってくらいじゃねえか。なんかこう、恩賞とかってないのかよ」
王都までひとっ飛びした後、俺はすぐにバイト兄に任せていたバルカ軍のもとへと戻ってきた。
そこで、バイト兄などにおおよその話し合いの結果を伝え、これから本格的にリゾルテ王国軍と戦おうと意思統一をした。
が、どうやらバイト兄はこの話の流れの中でどうしても気になる部分があったようだ。
それはバルカへの対応がすっぽりと抜けているということだ。
ここまで戦ってきたのになにもないというのはどう考えてもおかしい。
バイト兄の主張は貴族や騎士であれば誰もが持つ当然のものだった。
「ああ、そのことか」
「そのことか、じゃないっつうの。なんでそんなにのんきなんだよ、お前は。なんの報酬もなしで働くなんて馬鹿のすることだぞ、アルス」
「ごもっともな意見で。まあ、バイト兄の言うとおりだろうな。この戦いが終わったらなんか報酬でももらうようにしようか」
「当然だ。こんだけ働いたんだから相応のものをもらわねえとな」
「そうだな。ただ、まだ戦いが終わったわけじゃないぞ、バイト兄。次はおそらく当主級もいるリゾルテ王国軍の本隊が相手だ。気を引き締めていこう」
バルカへの報酬。
その話が3人の中で出なかったわけではない。
が、俺としてはそこまで飛び地となるような領地などがほしいわけでもなかった。
そのため、なんらかの宝物や権利が得られるように調整中だが、まだ何も決まっていない状態だ。
終わったあとで要相談という感じだろうか。
そんな俺の言葉をきいて、バイト兄も完全に納得したわけではないだろう。
が、俺が利益度外視で動いているというわけではないと分かっただけで十分だったようだ。
その後は、さっと切り替えて次にすべきことに集中する。
こうして、俺が合流したことをきっかけにして、バルカ軍は再び動き出した。
ライン川を渡り、リゾルテ王国軍と対峙することになったのだった。
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