男子三日会わざれば刮目して見よ
「おまたせ、アルス兄さん」
「おう、よく来たな、カイル。王都連合軍との戦いはすごかったみたいだな。お前のおかげでリード家につくと言ってきた連中も多かったよ」
「ありがとう。ちょっとはアルス兄さんに近づけたかな?」
「近づいたっていうか、完全に飛び越えていったようなもんだけどな。俺はあんなことできないしな」
コスタンブル要塞をどう攻略していくか。
それを思案中にカイルから連絡があり、そのカイルがこちらへと合流してきた。
離れてからまだそれほど時間が経っていないのにもかかわらず、カイルの姿は少し大きく見えた。
まだまだ成長中なのか、それとも大きな戦の経験を積んで心身ともに大きくなったのか。
それはわからない。
ただ、重要なのがカイルは周囲から認められる男になったということだろう。
リード軍対王都連合軍の戦い。
あの戦いの放送によってカイルの名は劇的に広まった。
圧倒的な勝利とその勝ち方によって、それまでの知名度の無さを払拭して一気に名を知らしめた。
そして、それこそがラインザッツ領の切り取りがうまくいく原動力になっている。
「じゃあ、こっちで新しくリード家の配下になった連中との顔合わせが終わったら、早速カイルの力を見せてもらおうかな。頼めるか?」
「うん、いいよ、アルス兄さん。ボクに任せておいて」
そのカイルをビランほか、ラインザッツ家から鞍替えしてバルカ軍とともに行動している貴族や騎士連中と引き合わせる。
そして、それが終わったら、コスタンブル要塞攻略のためにカイルに出張ってもらうことにしたのだった。
※ ※ ※
ライン川にて対岸にあるコスタンブル要塞を見る俺たち。
この川はアーバレスト地区にあるミッドウェイ河川と同じくかなり川幅が広い。
水量も多く、水深も深いため、浅い場所を探してヴァルキリーに乗ったまま川を渡るということはできないだろう。
そのために、通常であれば船を使うことになる。
だが、そのための船はここにはない。
カイルがリード軍を率いてきたため、こちらの軍は全部で35000を超えるほどになったが、それだけの数を運ぶための船が急に用意できなかったというのもある。
が、それ以上にカイルが来たことによって、別に船はいらないだろうということになったからだ。
「おい、アルス。カイルはこれからどうしようってんだ?」
「橋をかけるみたいだよ、バイト兄。カイルがこのライン川を渡れる橋をかけてコスタンブル要塞に取り付く。川の上をヴァルキリーに乗ったまま渡れるようにするって言っていただろ?」
「……本当にそんなことができんのか。すごいな、カイルは」
「そりゃそうだ。バイト兄だってバルカ軍の指揮を執りながらも王都連合軍との戦いについてラジオ放送を聞いていたじゃないか。あれでカイルの力は分かっているんだろ?」
「そうなんだけど、やっぱり本当なのかって思うだろ。いざ、ラジオで話されていることを聞いた側になると、それがホントかどうか疑っちまうみたいだわ」
「それは確かにそうかもしれないな。ということは、バルカの戦い方もラジオを聞いていても理解できていない者も多いかもしれないな。まあ、ここに至ってはどうでもいいけど」
どうやら、バイト兄は王都連合軍を相手に完勝したカイルの活躍をラジオで聞いていたにもかかわらず、それがいまいち現実のものとして受け入れられていなかったようだ。
まあ、そういうこともあるかもしれない。
人は自分の理解を超えた物事に対して時折思考停止してしまうことがある。
ラジオで聞いた戦の話はどこか現実味のないおとぎ話のようなものとして無理やり消化してしまう者も意外と多いのかもしれない。
だが、カイルのしたことは紛れもない事実だった。
120000もの数で構成された王都連合軍に対して、ただの一兵卒すら失うこと無く勝利した。
というよりも、まともな戦いにすらならなかった。
戦いが始まったと思ったら終わっていたと言ってもいいのかもしれない。
しかも、その結果、大量の捕虜を手に入れた。
もちろん、その中には貴族や騎士もいる。
それは王都圏の有力貴族であるビスマルク家の当主やそのビスマルク家から担ぎ出されて臨時のドーレン王となった者、そして、その臨時王の招集によって集まってきた各地の貴族の当主級たちも当然含まれている。
つまり、カイルは王都連合軍との戦いで、そこに参加したすべての貴族たちを捕虜としたのだった。
誰一人血を流すこともなく、全員を拘束し、勝利を掴む。
そして、その捕虜となった者を利用して各貴族家と交渉する。
無事に返してほしければ、これからはリード家に従うようにとカイルは言ったのだ。
それにより、俺たちバルカ軍がラインザッツ領の切り取りをしている間にカイルは王都圏から北を中心に多くの貴族家を従える盟主となっていた。
そのカイルの後ろ姿を見ながら、俺とバイト兄はラジオ放送で聞こえてきたカイルの活躍を思い出していたのだった。
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