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ハマンの街攻略戦

「攻撃開始だ。ハマンの街を攻略せよ」


 騎兵で構成されたバルカ軍7000に加えて、サラディア軍5000が加わったこちらの陣営。

 その軍が目標に向かって動き始めた。

 ハマン家の治める土地にある一番大きなハマンの街。

 周りを壁で囲まれた城塞都市であるハマンの街へと攻撃を加えていく。


 結局、ハマン家は俺が送り出した使者に対して、なんとか返答を遅らせようとばかりしてきた。

 が、いくらなんでもそれは悪手だ。

 こちらとしてはリゾルテ王国にラインザッツ領を獲られるわけにもいかない。

 動かざるを得ない状況にどっちつかずの態度を示すのは、はっきり言って自殺行為というものだろう。

 もしも、ラインザッツ家を裏切れないというのならこちらの要求はきっちりと突っぱねていたほうがいい。


 が、それもできかねるという気持ちがあったのかもしれない。

 なにせ、ハマン家でもラジオを聞いてバルカ軍の活躍を聞いていたはずだ。

 こちらの要求を断り、ラインザッツ家が万が一にも敗北すればどうなるかはわからない。

 そう思ったからこその時間稼ぎなのだろう。


「「「「「ウォオオオオオオォォォォォォォォォォ」」」」」


 だが、それも意味がない。

 なぜなら、このハマンの街攻略は思ったよりも簡単に終わりそうだからだ。

 城塞都市としての防御の要である壁に向かっていくアトモスの戦士たち。

 その巨人たちは複数で大きなものを持って走っていた。

 まるで担架を運ぶように6人で一つのものを持っている。

 それは俺が魔力で作り出した硬化レンガ製の大きく薄い平らな板のような形のものだった。


 ハマンの街の壁の上から降り注ぐ弓矢や魔法による攻撃。

 しかし、それらの攻撃を物ともせずにアトモスの戦士たちは壁への接近に成功する。

 そして、手に持っていたものを壁にぶつけるようにして立てかける。


 ガガンっと大きな音を立てて、それが壁にもたれかかった。

 それは遠目から見ていると大きな坂道、あるいは壁のようにすら感じる激坂のスロープみたいだった。

 俺がアトモスの戦士に持たせたのは、壁を越えるための足場だったのだ。

 突如できたその足場の上をサラディア軍が進んでいく。


 サラディアの当主ビランやそれに付き従うサラディアの騎士コフィンら。

 彼らは志願してこの攻城戦に出てくれている。

 作戦会議を開いたときにも、アトモスの戦士が足場を作った際に一番槍として切り込んでいくのは自分たちだと主張した。

 まあ、実際にそれは適材適所であるかもしれない。


 足場ができたとは言え、それは逆にこちらの狙いがはっきりと分かってしまうことを意味する。

 つまり、足場を通って壁の上に辿り着こうとしていることが相手からはっきりと分かってしまうのだ。

 なので、そこを通って壁を越えようとすれば当然のことながら狙い撃ちにされてしまう。


 が、サラディアの騎士たちであればその心配はいらなかった。

 【水壁】を発動させながら全力で駆けていくビランたち。

 サラディア家が誇る【水壁】はバルカの【壁建築】と同じように防御の役に立つ魔法だが、【壁建築】とは全く異なる点があった。

 それは、【壁建築】が地面に壁を作るのに対して、【水壁】は使用者の目の前に水の守りを展開するということだった。


 つまり、ビランやコフィンが【水壁】を発動させながら足場を走っているとき、水の壁は常に彼らの目の前を移動し続けるのだ。

 移動中でも発動して目の前からの攻撃を防いでくれる防御の魔法。

 これがサラディア家に伝わる【水壁】だった。

 これは、意外と水の壁というのもメリットが有るようだ。

 土の壁と違って自分たちの目の前の視界がシャットアウトされる心配がないので、壁の向こう側がはっきりと見えている。

 なかなか便利そうな魔法だった。


「うまくサラディア軍が城壁に取り付いたようだな。手筈通りなら、じきに城門が開かれる。その瞬間を見逃さずに城に飛び込んでいくぞ、バイト兄」


「任せろ、アルス。いつでも行けるぜ」


「タナトスも頼む。相手はアトモスの戦士の大きさにビビってたから勢いよく荒らし回ってくれ」


「了解した」


 意外といいな、サラディア軍は。

 貴族や騎士という特権階級であるはずの者が先頭を走り、【水壁】を使用している。

 このことが後続を守ることにつながっているようで、アトモスの戦士が架けた足場の上でさほども被害が出ずにすんでいるようだった。


 その動きを見ていると、後続を走る農民の兵のだれもがサラディア家の【水壁】の守りを信頼しているように見えた。

 決して逃げ腰にならずにビランやコフィンの後をついて追いかけていっているのだ。

 これはおそらく今回だけのことではなく、普段から【水壁】の守りを見ているからこその信頼なのではないだろうか。

 さすが、普段からラインザッツ家のもとで戦場に出向いているというだけある。

 決して貴族であるからと言って後ろでふんぞり返っているわけではないのだろう。


 そんなサラディア軍の活躍もあり、ハマンの街の城門はその後すぐに開くことになった。

 それを確認し、即座にバイト兄が騎兵を引き連れて壁の中へと突入していく。

 これによって、ハマン家との戦いはこちらの勝利が近づいてきたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 意外に便利な水の壁 (ΦωΦ)フフフ…
[一言] まあ壁を斜めに作るとか作った後の壁をっ立てかけるとか 少しずつずらして高の違う壁作って階段にするとか・・・はムリか確か設定じゃその手の応用出来んし
[良い点] 動けない事情もあったのだろうが 悪手過ぎましたね。 サラディア家は、アルスに気に入られたようだ
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