カイルの欲したもの
「うーん、なんだかんだで、俺はやっぱりカイルに甘いな」
カイルのおねだりによって、俺はカイルの求めるものをプレゼントしてしまった。
なんというか、意志薄弱だ。
なぜなら、俺がカイルに与えたのは俺が魔力で作り出した精霊石だったからだ。
本来ならばアトモスの里でのみ採取できる特別な土の魔石。
その精霊石をブリリア魔導国などは手に入れて、軍事利用するに至った。
その結果、俺も手に入れたのが魔装兵器と岩弩杖だった。
これらは精霊石というものに特殊な魔法陣を描いて作っていく。
魔装兵器は巨大な人型で、かつ岩でできており、破損しても自動修復するという恐ろしい機能がついていた。
対して岩弩杖のほうはもう少しシンプルな機能しかなく、魔力を込めれば杖の先から岩が発射されるというものだった。
カイルは俺に対してそれらの材料になる精霊石を求めた。
が、別にカイルが欲しかったのは魔装兵器でもなければ、岩弩杖でもなかったらしい。
カイルが求めていたのは、東方で見つけたそれらの技術を持ち帰り、俺やグランとカイルが一緒になって作り出したものだった。
すなわち、神の依り代をカイルは求めたのだった。
神の依り代。
それは神界にある神殿の中で神像に変えられた神アイシャが自由に動き回れるように俺が作ったものだ。
ベースは東方で手に入れた魔装兵器だが、もはやほとんど別物といっていいほどに変わってしまっている。
俺が作り出した精霊石にカイルが魔法陣を描き込み、グランが仕上げる。
それによって出来上がった精霊石に魔力を込めると、非常に均整のとれた美しい女性の体が出現するのだ。
魔装兵器のように巨人型ではなく、通常の人間サイズの人形だ。
だが、外見は魔装兵器のように岩がむき出しでゴツゴツしているわけではなく、皮膚がついている。
これは西のジャングルでとれた木の樹液からゴムを作り出し、それらとミームが開発していた人工皮膚を用いて作ったスキンになっている。
それを依り代にピタリと添わせて、まるでツルツルのお肌を持つかのようにしているのだ。
ちなみにこの依り代はさらに改良を加えて、新たな技術も追加されている。
それは髪の毛だ。
頭部にはサラリとしつつもふさふさの髪の毛がついていた。
これは実は本物の髪ではなく、植物の一種らしい。
魔力を吸収して伸びる細い糸のような植物を使用して、まるで自然に髪が伸びるかのようなかつらになっている。
ただ、もっといいものができないかどうか引き続きミームらによって、発毛技術の研究は続いている。
俺はカイルのおねだりによって、この新型の依り代をあげることにしたのだった。
「でも、なんだって依り代なんか欲しがるんだ、カイル? これは魔装兵器を基礎として開発したし、構造材も硬化レンガだから硬いけど、それでも戦闘用ではないんだぞ?」
「わかっているよ、アルス兄さん。この依り代は別に戦のためにほしかったわけじゃないんだ」
「だったら、どうするつもりなんだ?」
「うん、見てて。今、実践してみせるから」
カイルが手にしていた精霊石の核に新たな魔法陣を描き込んでから魔力を送り込み、依り代を出現させる。
なにをするつもりだろうか?
今描き込んだ魔法陣はいったいなんなのだろうと思いつつも、無言で見守る俺。
そうしていると、カイルが満足げな顔でこちらを見てきた。
そして、その後に依り代も俺の方へと向いて、体の位置を変えた。
「はじめまして。あなたのお名前を教えてください」
「…………は?」
「お名前を教えてください」
「……アルス・バルカ、です。俺の名はアルス・バルカだ」
「アルス・バルカ様ですね。承知いたしました。以後、よろしくお願いいたします」
「……なにこれ? おい、カイル。お前、なんだこれ? ふざけて操作しているのか?」
「ううん、違うよ、アルス兄さん。この依り代はもうボクが操作しているわけじゃないんだ。自律的に動いているんだよ」
「自律的に? なにそれ、どういう意味だ? この依り代はカイルが操作しているわけじゃないのか?」
「そうだよ。ほら、リード家ってなんだかんだで寄せ集めの急造組織じゃない? ボクについてきて一緒に領地を治める手伝いをしてくれる人はいるんだけど、それでも人手が足りなかったんだよね。もしこれ以上、領地が増えてもちょっと管理ができないかもしれない。だからこうして、依り代が自律的に動いて仕事を手伝ってくれたら助かるなと思ってたんだ。ありがとう、アルス兄さん」
いや、ちょっと待ってよ。
なにそれ?
この依り代、勝手に動くってこと?
なんで?
どうやって?
カイルが嬉しそうに俺がプレゼントした依り代を次々と実体化させ、そしてそれを自動人形として動かし始める。
何を隠そう、この依り代たちは神界にいる神アイシャのために作った試作品であり、廃棄予定だったものだ。
そのため、数がそれなりに多かった。
その数は百を超えているだろう。
その全てにカイルは魔力を注ぎ込み、自律的に動く自動人形としてしまったのだった。
さすがにこれは俺もびっくりだよ、カイルくん。
お前、俺より変人度が高いだろ。
俺はカイルの行動を見ながら思わずそう突っ込んでしまいそうになったのだった。
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