天空の霊園
「と、いうわけで今年中にドーレン王家の葬儀を執り行う予定です。で、その後にはこの場所を天空霊園として、ここにドーレン王を始めとした王侯貴族の墓を作ることになると思います」
「……天空霊園、ですか。正直、ここが墓場となるのは微妙な心境なのですが。しかし、教皇の指示には従うと念書を交わしましたからね。受け入れるしかありませんか」
「ええ、そういうことですので、よろしくおねがいしますね、ミリアリア枢機卿」
パウロ教皇との話を終えた俺は次に天空霊園へと戻ってきていた。
カイルの魔法によって空に浮かんだこの聖都跡地の土には塩分が減って土地が再生してきている。
そして、その土地には天空霊園統括管理者となったミリアリア枢機卿がいる。
彼女と彼女が保護した子どもたち、そしてこの地を復興させるための人員がいた。
ちなみに、この土地は空に浮いている関係上、どうしても転送魔法陣を設置せざるを得なかった。
地上部とつなげた転送魔法陣はリード家が管理している。
ここも、転送魔法陣を形作っている転送石の一部を取り外しできるようにして、転移できるかどうかのオン・オフを切り替えられるようにしていた。
一応これで勝手に地上から攻め込まれることはないだろう。
今のところ、この空飛ぶ土地でなんらかの事件が起こったという話も聞いていないので、結構うまくミリアリアがまとめてくれているようだ。
そのミリアリアにドーレン王家との和解と葬儀、そしてお盆という行事について話をした。
ただ、これから聖都として復興させようと頑張ってきたところがいきなり墓地になると言われれば誰だっていい気はしないだろう。
それはもちろんミリアリアも同様だったようだが、それでも以前交わした契約書が効果を発揮したようだ。
あまり歓迎はしないが、それでも反対はしないで従ってくれるらしい。
「ですが、土地に限りがあるのではないでしょうか? アルス・バルカ様がこの聖都跡地を空に浮かべたときには、広大な面積の大地を切り離して驚きましたがそれでも有限です。先程のお話ではドーレン王家はもとより、他にも貴族家の墓を用意しようと考えておられるのでしょう? すぐに手狭になってしまうのではないでしょうか」
「確かに、この聖都跡地だけに墓を作ればそうなるかもしれないですね。王家や貴族家の墓がこじんまりしているわけにもいかないだろうし、ある程度の面積は求められる。なら、すぐに空き地が無くなる可能性は確かにあります」
「そうですよね? では、どうされるのですか?」
「私に考えがあります。墓を作る場所として新しく浮島を作りますよ」
ミリアリアの懸念する土地の問題についてもすでに考えていた。
もともと聖都があった街の面積くらいしかない土地にそれなりに広大な敷地面積を占めることになる墓を大量に用意するのは難しい。
ならば、それ以外の土地を用意してしまおうと考えたのだ。
そのために、早速俺は準備を始めた。
真っ平らで下の面がお椀のような形をしている空飛ぶ土地。
天空霊園のそんな地形の端っこに移動する。
ここもバルカニアと同じように雲よりも高い位置に浮いていて、その土地が途切れて空へと続いていた。
一歩踏み外せば地上へと真っ逆さま。
そんな危険な天空霊園の端まで行って、俺はその地面に手をついた。
とりあえず、今必要なのは王家の墓にふさわしいだけの面積だ。
ドーム数個分くらいの土地をドーレン王家用に割り当てるようにすることにして、天空霊園の地面に魔力を注ぎ続ける。
そして、十分に魔力が行き渡ったと感じたら、その魔力を使って土を変化させた。
大本である天空霊園と同じようなお椀型の、しかし、それよりは遥かに小型の浮島。
その浮島を空に浮かぶ天空霊園の端っこの土地の外に移動させる。
どう表現すればいいのだろうか。
もともと空に浮いた天空霊園は半球状の土地だったが、その端っこの土地が一部切り離されて外に飛び出した格好になった。
その飛び出した土地は下の土が浮遊石に変化しており浮力があるが、一部の土が硬化レンガになって繋がっている。
硬化レンガでできた橋でつながる独立した空に浮く土地が出来上がったことになる。
まるで衛星のように付き従って飛ぶ土地だが、その土地の分だけ本体面積が減ってしまった。
が、これはいずれ元に戻すことができる。
なぜなら、この天空霊園には転送精霊石が埋め込まれているからだ。
聖湖の地下で魔力を吸い上げ、アトモスフィアの子機として機能する転送精霊石。
これがあれば、空に浮いた土地は風化せず、欠けたりもせずに維持し続けられるように自動修復されるようになっている。
つまり、今回切り離した土地も魔力を補い、徐々にもとの面積に戻すことができるはずだ。
いずれ、天空霊園本体の土地面積が元に戻ったらさらにお墓用の衛星土地を作っておこう。
イメージとしてはシャンデリアみたいに外にいくつもの土地があり、そこを墓として利用する。
そうすれば、ある程度の墓の数はまかなえるはずだ。
空から地上を一望できる場所に墓を建てられると知れば、たいていの人は喜ぶだろうしな。
いや、魂は天国である神界に行くのであればこの場所の風景は実際には関係ないのかもしれないが、まあいいだろう。
ようはあとに残された人が満足すればそれで十分なのだ。
こうして、俺は着々と墓づくりの準備を進めていったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けますと執筆の励みになります。
また、本作の第3巻の発売が決定致しました。
本日より予約が開始されます。
第3巻のカバーイラストとともに活動報告にて詳細を書いておりますので、そちらもご覧になっていただければと思います。
どうぞよろしくお願い致します。





