再開発
「そういえば、魔導列車は完成したのか、カイル?」
「ああ、あれなら一応完成したよ。バルカニアでの試運転では問題なく使えている。けど、地上で使うなら考えないといけないこともあるかもね」
「考えないといけないこと?」
「速度の違いだよ、アルス兄さん。魔導列車は魔装兵器の作り方を参考に回転機構を作って、それを列車を動かすための駆動部分に活用したでしょ。で、完成した魔導列車は速く、疲れ知らずに、昼でも夜でも走り続けることができるようになったわけだよね?」
「うん、そうなるな」
「けど、それじゃあ、今までのヴァルキリーが牽いて走る列車のほうはどうするの? 既存の列車とは魔導列車は走る速度が違うのに、同じ線路で運用するとなると色々面倒かもしれないよ?」
教会で俺がこれからはアルス・バルカとして神の盾なる怪しげな名称を名乗ることを取り付けた後のことだ。
天界であるバルカニアに戻ってきて、魔導列車について研究を続けていたカイルに話を聞いていた。
なるほど。
カイルの言うことは一理あるのかもしれない。
ようするに、各駅停車と同じ路線で新幹線を使おうとしてもその性能を発揮できなくなると言いたいのではないだろうか。
他の列車がすべての駅で止まるのにあわせて新幹線が止まっていたら、新幹線がどれほど速かろうが意味がない。
それに、今のところフォンターナ王国で作った線路は基本的に単線なのだ。
ヴァルキリー列車が一時停止して、魔導列車が追い抜くのを待つという仕組みも取りにくい。
「それに、問題は他にもあるよ。魔導列車の駆動部分で必要な精霊石はアルス兄さんが魔力で作っているでしょ? ということは、それは一般には入手できないもので、貴重な品に当たる。今後、どれだけ作られるか分からないなら、魔導列車の運用はきちんと考えて決めたほうがいいかと思うよ」
「なるほどなあ。まあ、たしかにそれもそうか。それに、バルカの勢力範囲以外でなにか問題が起こった時も面倒になるかも。それなら、新しい線路を牽いて、魔導列車専用路線でも作ろうか」
「バイト兄さんとバルガスさんの土地を結ぶ線路でも作るの?」
「そうだな。前に一回断念した、横断列車を作ってしまおう」
カイルとの協議の結果、魔導列車の地上での運用は限定的なものにすることに決めた。
本当ならば、フォンターナ王国中を張り巡らせるように路線を設置したほうがいいのかもしれない。
が、例えば同じ王国内でもほかの貴族や騎士が支配する領地内に線路をひいて、そこで走っていた魔導列車になにかトラブルが起きた時、責任の所在や賠償問題などで揉める可能性もある。
そもそもだが、列車は狙われやすい特徴もある。
線路の上しか走ることができないので、襲撃しやすいのだ。
なので、バルカの領地内に限る運行とすることにした。
そのために、東のバルト領と西のバレス領にかけてを横につなぐ線路を新たに設置して、そこに魔導列車を走らせる。
これも今までだったら断念していたかもしれない。
が、新たに得ていた領地がそれを可能にしたのだ。
実はバルカ家は新たに領地を加増されていた。
理由は俺が宰相兼大将軍職を退いたうえに、力を息子に継承したことが関係していた。
戦功の大きい俺が自分から身を引き、しかも、フォンターナ王家に害を与えないと主張するかのように俺個人の力を失う継承をしたことが理由だそうだ。
別に領地が欲しかったわけではないが、もらえるというのであればもらっておくのもやぶさかではない。
というわけで、フォンターナの街よりも北側にあるバルカの領地と東にあるバイト兄のバルト領、西にあるバルガスのバレス領を結ぶように領地をもらっていたのだ。
これによって、バルカ家の支配領域はフォンターナ王国の中でも一番北側を横に長く伸びた形になった。
ここに、新たに線路を設置して、魔導列車専用で使う。
東からは鉱山から採れる金属とヤギの毛から作った生地などを、西からは湿地帯の泥人形から採れる魔電鋼や川の魚、あとはいずれ穫れる予定の米などでも運ばせよう。
「よし、元バルカニアだった地上部分の再開発の方向性は決まりだな。列車の街にしよう。西と東から入ってくる列車の線路を元に、街の構造を考えて作ってみようか。天界を作ったときに土地がまるごと無くなったところを埋め立てだけはしてあるから、一から作るには都合がいいだろうしな」
「列車の街か。いいね、それ。これまでは街があるところに対して線路を敷設していたから、どうしても線路の最終地点は街の壁の外とかになりがちだったもんね。そうじゃなくて、街そのものに入る構造にしたほうが、利便性は良さそうだね」
「ああ。それに横断列車とは別にフォンターナの街へ向かう線路は魔導列車を使ってもいいだろう。なんだかんだでフォンターナの街が一番の消費地になるからな。需要があるところに、すぐに商品を送り出せるようになる」
「いいね。わかった。それじゃあ、トリオンさんとも相談してみるよ。新しい街の設計を考えているはずだからね」
バルカニアを地上から空へと上げた。
それ自体はよかったのだが、地上には大穴が残ることになった。
その土地をどう再開発するかというのは、これまでずっと考え続けてきていた。
おっさんと話していたのは新しく商売のしやすい街にするというものだった。
が、バルカはフォンターナの北に位置しており、基本的にすべての道はバルカニアではなくフォンターナの街に繋がっている。
バルカニアを商売のための土地としたいと思っても、わざわざそこに行かずともフォンターナの街という大きな市場が目の前にあるのだ。
なので、商売を盛んにしたいという以外でもう一つくらいはっきりとしたいいコンセプトがあればいいなと話していたのだ。
それが、カイルの開発した魔導列車によって叶うかもしれない。
他の土地では使用しない、今までよりも性能の良い魔導列車を利用して土地を結ぶ。
その魔導列車の拠点となる場所として街を造る。
こうして、旧バルカニアの再開発は列車の街を目指して動き始めたのだった。
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