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設備と素材

「ここだよ。ここに大猪の牙も保管してあるんだ」


 村にやってきた旅人のグランさん。

 彼によると俺が倒した大猪は武器の素材とすることができるという。

 ならばということで、俺はさっそくグランさんを牙が保管してある倉庫へと案内したのだった。


「ふむ、失礼。拝見するでござる」


 そう言って俺に続いて倉庫に入ってきたグランさんが目的の牙のもとに向かう。

 一言かけてから棚においてある牙へとそっと手を伸ばした。

 まるで貴重な骨董品でも扱うかのように優しく扱っている。

 なんだか前世で見た鑑定団のようだ。


「素晴らしいでござるな。たしかにこれは魔法生物の牙でござるよ。しかも、魔法を使用中にしとめているようですな。魔力の残滓を感じるのでござる」


「魔力の残滓? それはなにかメリットがあるの?」


「そうでござるよ、アルス殿。できれば魔法を使用する動物を狩るときには、その魔法を使用中に仕留めるほうが素材としてはいいものになりやすいのでござる。武器にしたときに魔力の通りが違ってくるのでござるよ」


「じゃあ、そこにある大猪の牙はちゃんと強い武器にできるってことだよね?」


「そのとおりでござる。であるのだが、アルス殿の望みを叶えられるとは限らないのでござるよ……」


「え? どうして? 俺には武器を作ってくれないってこと?」


「別に意地悪でそう言っているわけではないのでござる。魔法生物の素材を武器にするにはそれなりの設備と触媒が必要になるのでござる。この村にはそれがないので作れないのでござるよ」


「設備と触媒? それって何が必要なのさ」


「そうでござるな。高熱を操ることのできる炉と魔法生物の魔核となる触媒が必要なのでござる」


「炉はわかるけど、魔核ってなんだ?」


「魔核とは魔法生物が魔法を使うために必要な身体部位でござるな。それぞれの生物によってどの部位が必要かは違っているので、一言では説明できないでござる。ただ、どれも希少でなかなか手に入らないものなのでござる」


 魔法を使うために必要な体の部位って、もしかしてあれが使えるのではないだろうか。

 グランさんの話を聞いて俺はすぐにピンときた。

 俺の使役獣であるヴァルキリーたちの角だ。

 ヴァルキリーたちは魔法を使うことができているし、角を切り落とせば魔法の使用が不可能になる。

 もっとも、魔法生物と言えるのかどうかはわからないが、少なくとも魔核と同じような特徴を持っているのは間違いないように思う。

 俺はすぐに倉庫の中を駆け回って、倉庫の一角に積んであった使役獣の角を手にとり、グランさんに見せた。


「これは魔核のかわりにならないかな? もしそうならあとは高温の炉だけが問題になるんだろうけど……」


「……拝見させてもらうのでござる」


 俺が手渡した使役獣の角を見てグランさんが驚きの表情を見せた。

 そして、すぐにその顔をもとに戻して、食い入るように使役獣の角を観察しだす。

 しばらく、その表面を見たかと思えば、手を添えるようにして角の隅々までを触ったりして、穴が空くほど見続けていた。


「おそらく、としか言えないのでござるが、これは魔核として触媒に使えるのではないかと思うのでござる」


「やっぱり。俺もそう思ったんだよ」


「もしかして、この土地にいる使役獣にこの角が?」


「そうだね。よくわかったね」


「そういう話を聞いたことがあるのでござるよ。使役獣の中には魔法を使える種も存在し、それから魔核を取り出すことで安定して魔核を調達するところがあると。まさかこの村でそのような現場をお目にかかることができるとは思いもよらなかったのでござる」


「ちょっと待って。使役獣の中には魔法を使えるやつも存在しているんだ?」


「そうでござるよ。知らなかったのでござるか? 魔法型の使役獣は超高級品として取り扱われているのでござるよ」


 まじかよ。

 行商人も知らなかったのだろうか。

 ってことは今の値段で販売しているのは安すぎってことにならないだろうか。

 これは再度値段交渉が必要だな。

 わざと情報を隠していたんなら、行商人のおっさんとの今後の関係についても考え直したほうがいいかもしれない。


「助かったよ。全然知らなかった。いいことを聞いた」


「そ、そうでござるか。アルス殿の助けになったのであればよかったのでござる」


「で、あとは高温を出せる炉があればいいんだよね?」


「厳密に言えばほかにも材料や道具は必要であるが、とにかく炉は必須でござるよ。まさか、この村にはそんな炉があるというのでござるか?」


「いや、ない。けど作ってみるよ」


 高温を出す、というのが何度くらいを想定しているのかはわからない。

 だが、俺の作るレンガは単に粘土を焼き固めて作るタイプではなく、通常よりも高温に耐えることができる耐熱レンガのはずだ。

 最初に魔法でレンガを作るときに、そう想定して作り上げたのだ。

 実際にそれが何度くらいなら耐熱効果があるのかはわからない。

 だが、このレンガで炉を作ってみよう。

 武器を手に入れるチャンスを目の前にして、俺のやる気は天井知らずに上がっていったのだった。

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