都市維持機能
「いやー、それにしてもアトモスフィアはすごいわ。こんなに使えるとは思いもしなかったよ」
「ごきげんだな、坊主」
「そりゃそうだろ、おっさん。これでバルカニアは新しく高さ50mの壁で囲まれた8km四方の都市になったんだ。それにアトモスフィアによって鉄壁の防御を手に入れたことになるしな」
「ん? どういうことだ? アトモスフィアによってだと?」
「ああ。迷宮核であるアトモスフィアの魔力を土地に馴染ませたって言っただろ。それはバルカニアの壁やものが迷宮の一部になったことを意味する。で、多分だけどアトモスフィアはそれらのものを自動修復してくれる働きがある」
「……はあ? 自動修復? どういうことだ、坊主。勝手に壁が直るのか?」
「そうだ。というか、俺がそういうふうになるようにアトモスフィアに働きかけた。壁や下水道が崩れたりして壊れたら、アトモスフィアの魔力で直してくれるようにってお願いしたんだよ」
「おいおい、そんなのありかよ。というか、お前はあの巨大な岩と会話でもできるのかって話になるんだが……」
「いやー、あのアトモスフィアが精霊石って言われてたからさ。カイルみたいに精霊と契約できないかとずっと粘ってはいたんだよ。毎晩、アトモスフィアに触れて魔力を送って会話を試みていたってわけさ」
「へー。で、精霊様とは話でもできたのか?」
「いや、できなかった。けど、アトモスフィアに魔力を送っていたら気がついたんだよ。今回の都市拡張みたいに俺が魔力を操作してバルカニアの土地をいじれることに。そして、なんとなくの感覚だけど、今回作った壁とかを壊れたら自動で直してくれないかとお願いしてみたら、どうやらそうなっていたんだな、これが」
「ふーむ。ちょっと信じられない話だけど、坊主が言うならそうなんだろうな。迷宮の核をそこまで使いこなせるやつは坊主以外にはいないだろうな」
「はっはっは。これからは俺のことはダンジョンマスターと呼んでくれてもいいんだよ、おっさん」
アトモスフィアは非常に素晴らしい。
ただそこにあるだけで大気に含まれる魔力の量が増えていた。
そのため、最初はアトモスフィアがバルカニアにあるだけで将来的に魔力量の多い人がこの地には多くなるだろうと思っていた。
だが、それだけがアトモスフィアの効能ではなかったのだ。
時間が経つにつれてアトモスフィアの魔力は大気だけではなく、地面にまで浸透していった。
そして、その魔力を俺は毎日アトモスフィアと接することで利用できることに気がついたのだ。
今回の都市拡張だけではなく、その維持までも迷宮の核として担ってくれている。
これは俺の感覚でもそうだが、実際に壁をわざと攻撃して一部を崩して確認もしてみた。
その結果、崩れた壁は時間経過とともに勝手に修復されていたのだ。
なんというか、これは本格的に迷宮っぽいのではないだろうか。
もしかしたらアトモスの里で精霊石が採掘されるというのは、アトモスの戦士が精霊石をありがたがって崇めていたからなのかもしれない。
確証は全く無いがアトモスの里ではアトモスフィアがあったからこそ精霊石が採掘できて、バルカニアではその対象が硬化レンガに置き換わったという感じだろうか。
そのうちバルカニアの外壁は物語であるようなダンジョンの破壊不能オブジェクトみたいになってくれたりしないだろうかと夢想してしまう。
もしそうなら、絶対に攻略不能な難攻不落の城塞都市として歴史に名を刻むことができるに違いない。
「けど、それなら他の使い方もできるじゃないのか、坊主?」
「え、他の使い方? アトモスフィアの活用法をほかにも思いついたのか、おっさん?」
「ああ。どういう仕組みかは俺にはよくわからんが、とにかく坊主が壁を修復し続けてほしいとアトモスフィアに願ったから、その願いを叶えてくれたってことだろう? なら、他のお願いもしてみたらいいんじゃないかと思ってな」
「他のお願いってなんだ? なんかいいお願いがあるのかな」
「壁が勝手に直るなら、いつでもずっと【土壌改良】したときと同じ栄養満点の土地を維持し続けたい、っていうのはどうだ? バルカニアの中の小さな範囲でもいいから、豊穣が約束された土地があれば、いざというときに籠城するようなことがあっても食料を自給自足できるんじゃないか?」
「……なるほど。魔法を使っていなくても【土壌改良】した後と同じくらいの土の状態を保ち続けることができるかどうかってことね。それ面白いかもしれないな。なら、アトモス地区の一部と牧場区をそうしてみようか」
おっさんがなかなかおもしろいアイデアを出してくれた。
勝手に壁が直る機能があるなら、土の状態を勝手に元に戻す機能もあってもおかしくないというわけか。
牧場区は現在ヤギとヴァルキリーを放牧させている。
この土地は角ありも放牧していることもあり、ヴァルキリーが自分たちで【土壌改良】をしてハツカが育つようにして食料にしていて、それをヤギも食べている。
が、アトモスフィアの影響で勝手に土地の栄養状態が維持できるのであればヴァルキリーがいなくともそれができるかもしれない。
そして、アトモス地区の一部を再び区分けして農地にしてみることにした。
ここはいざというときの食料プラントみたいになるかもしれない。
できればそんな未来はないほうがいいが、バルカニアに籠城することになった場合に備えて内部で自給自足できるようにしておく。
こうして、迷宮核の存在する新バルカニアという都市は今までにない全く新しい防衛機能を手に入れたのだった。
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