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対魔装兵器戦

「タナトス、行けるか?」


「おう。ライラとともにあの岩巨人を叩く」


 俺がヴァルキリーに乗りながら、タナトスへと声をかける。

 俺とほぼ同じタイミングで魔装兵器なる存在に気がついたタナトスはそれが危険な相手であると瞬時に感じ取り、行動を開始していた。

 自分が騎乗していたヴァルキリーから飛び降りて、巨人化する。

 そして、その横にはタナトスと同じようにもうひとりが巨大化した。

 アトモスの戦士であり、つい先日までは手足を失った状態だったライラがタナトスに並び立つようにして同じように魔法を発動させたのだ。


『行くぞ、ライラ』


『ええ、わかったわ、タナトス』


 二人が声を掛け合い、魔装兵器に攻撃を仕掛ける。

 タナトスは手にしていた如意竜棍を、ライラは俺が用意した長めの硬化レンガ製の棍を手にしてそれを振り上げる。


 ガガン。


 その攻撃が命中した瞬間、ものすごい大きな音がした。

 相手の姿は決して見掛け倒しではなく、本当に硬い岩だったのだろう。

 硬く質量のある物質を強い力で叩いたのだとこちらも分かる。


 魔装兵器の岩の巨人はガクンと膝をついた。

 タナトスが叩いたところが大きく吹き飛ぶようにして、特に左肩が削れている。

 まあ、いくら魔装兵器が大きいとは言っても巨人化したアトモスの戦士のほうがもう一回り大きいのだ。

 岩の体としての防御力はあっても、無傷ではいられないだろう。

 俺もタナトスも、そしてライラもそう思った。


『……気をつけろ、タナトス。そいつ、復元するぞ』


『なに? まさか、もとに戻るのか』


 しかし、次の瞬間、嫌なものを見せられた。

 膝をつくような形で姿勢を崩し、左肩を削られた岩巨人はそのまま再起不能となるのではないかと思ったのだが、そうはならなかったのだ。

 のそりと動き出したかと思うと、自分で岩を拾いそれを肩に当てる。

 すると、削り取られたはずの左肩が修復していたのだ。


 これはもしかしてあれか?

 泥人形と同じように、体の中のどこかに核となる物があって、それをどうにかしない限り復活するのだろうか。

 厄介すぎる。

 もしかすると、アトモスの戦士はこの岩の巨人に負けたのかもしれない。

 なぜなら、この魔装兵器は決して一品物ではなく、複数あるようだからだ。


「おいおい、ぞろぞろ出てきたぞ。あれはこっちの兵が使う魔法では倒せないぞ」


「どうする、アルス? あれを倒す方法はなにかないのか?」


「そうだな。もしかすると泥人形と同じようにあの岩巨人の体の中にある核を取り出せば動きが停止するかもしれない。どこにあるかはわからんのが困りものだけど」


「わかった。可能性があるならやるしかない」


「そうだな、タナトス。なら、タナトスは如意竜棍で片っ端から叩きまくれ。ライラは俺と行動させる。いいな?」


「アルスと? ああ、わかった。ライラを頼む」


『よし、ライラ。お前は俺と組め。タナトスのことなら大丈夫だ。俺がこれからあの岩巨人に攻撃を加える。その後、合図を出したらその棍で相手を叩いてくれ』


『……わかった。命の恩人たるあなたに従おう。私を導いてくれ、アルス』


 一体目の岩巨人相手にこれ以上手こずるわけにはいかない。

 ならば、早急に相手を停止させなければならない。

 ゆえに、俺は泥人形と同じ対処法を試してみることにした。

「氷精たちよ、あの岩の巨人を凍らせろ」


 すでに周囲に浮かばせていた氷精に指示を出す。

 その声を聞いてすぐに宙にふわふわと浮いていた氷精たちは行動を開始した。

 岩の体の表面を凍らせるように魔装兵器を凍らせる。

 が、相手もなかなかパワーがあるようだ。

 凍りつきながらも、バキバキと音を鳴らしながら動こうとしている。


「燃えろ」


 だが、一瞬でも動きが止まれば十分だった。

 すぐに凍った魔装兵器に駆け寄り、俺は剣による攻撃を与える。

 その一撃は決して強いものではない。

 凍った岩にわずかに傷を与えたかという程度の攻撃だ。

 だが、それで十分だった。


 俺の手にする氷炎剣によって凍った岩ごと燃え上がる魔装兵器。

 動きを止めるほどの氷によって包まれた後に、その氷を炎へと変換されて超高温で熱せられる。

 そして、次の瞬間には再び氷精によって冷やされる。

 あの岩の塊の体がどのように動いているのかは知らないが、おそらくは熱の変化についてはこられないだろう。

 その推測は当たっていた。


 急激な熱の変化によってビキビキと音を立ててひび割れる岩の体をみて、俺はライラに合図を出した。

 それを聞き、ライラがひび割れた魔装兵器に対して大上段から振り下ろすように棍を叩きつける。

 すると、次の瞬間、魔装兵器はバラバラに砕けてしまった。


「あれか? ヴァルキリー、あれを回収しろ」


 崩れ去る魔装兵器を眼に魔力を集中させて観察する。

 すると、その崩れ去る岩の中から他の岩や石と似ているが魔力の内包量が格段に多いものが目に止まった。

 それをすかさずタナトスが乗り捨てたヴァルキリーに回収させる。


 これは、タナトスが言っていた精霊石、なのだろうか?

 なんとなくそんな気がした。

 黒い石だ。

 それをツルツルに磨き上げた上に、どうやら表面に模様を彫っているみたいだった。

 おそらくはこれが魔装兵器の核となるものではないだろうか?


 その推測はどうやら間違いではなかったようだ。

 俺とライラの共闘で倒した岩の巨人はバラバラに砕け散った後も復活することがなかったからだ。

 どうやら、こいつは氷精と氷炎剣の組み合わせの戦い方が通用するらしい。

 そう考えた俺はタナトスが先行して他にも現れた魔装兵器たちに如意竜棍をぶち当てているところへ加勢しに行こうとした。

 だが、その時別方向から俺を呼ぶ声が聞こえた。


「おい、待て、アルス。こっちも手伝え」


「どうした、バイト兄?」


「相手の数が多すぎる。こっちは囲まれたぞ。このままだと包囲されて軍の損耗が大きくなりすぎる」


「……くそ、次から次へと」


 岩の巨人である魔装兵器に対しての戦い方を発見し、これからというところで声がかかってしまった。

 どうやら、俺とタナトスたちは魔装兵器に釣られるようにして本軍と少し距離が離れてしまったようだ。

 そこを狙われた。


 攻撃魔法をぶっ放せる魔法の杖を持った相手の兵が東方遠征軍を取り囲んで遠距離攻撃を仕掛けているのだ。

 本来ならば、数が少ないとはいえバイト兄がいればもう少しうまく立ち回れたかもしれない。

 が、これは俺のミスだ。


 東方遠征軍には大雪山を越える際にヴァルキリーに【道路敷設】を行わせるために角ありばかりを連れてきていたのだ。

 それは転送石を設置するためにも必要なことではあった。

 が、この場ではそのことが裏目に出たようだ。

 角の生えたヴァルキリーに騎乗していては満足に武器を振るえない。

 ゆえに、突撃時は魔法攻撃を主体にしていたが、建物から出てくる相手を攻撃するために戦いにくい角ありから兵たちが降りた。

 そこを狙われてしまった。

 足が止まった軍が包囲されて攻撃される。

 その恐ろしさは以前行われた軍事演習でのカイルの攻撃を彷彿とさせるものだった。


 ……仕方がない。

 本来はもう少しとっておきたかったが奥の手を使おう。

 戦場を見回して俺はそう決断するしかなかった。

 魔装兵器は今もタナトスが抑えてくれているが、まだ数がいる。

 あれを相手にするには普通の兵は無理だ。

 が、だからといって包囲されて粘るしかないバイト兄たちを放置することはできない。


 俺はとっさに腰につけた魔法鞄に手を入れて、新しく手に入れた奥の手を解禁することにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 奥の手とは何だろう?「明日まで待ちきれんやろ」って感想に成りますな。
[一言] 岩巨人解析したら作れるようになるんだろうか? 屋内ならともかくそうでなければ乗りながらは・・・ 今まで角無しでだから慣れて無いわなあ 騎獣が顔上げてれば攻撃し辛さなんて角の有る無しだけじゃ…
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