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独立承認

「リオン、ペイン。結局、ドーレン王の行方はわからずか?」


「はい、アルス様。王都の混乱によりドーレン王はどこにいるか追跡できていません。ただ、継承権の第一位の王子をメメント家が保護しているようで、その王子が王の力を継承した形跡は無いようです」


「そうなると、まだどこかで無事ではいるということだよな。……どうしようか? フォンターナ王国の討伐を命じたドーレン王がいないと終戦についての話し合いすらできないんじゃないか?」


「一応、やろうと思えば王家との対話は可能でしょうが、王が戻ってきた際にその話をなかったことにされてしまう可能性は否定できないかもしれませんね。ただ、こちらの意思を示しておくためにもドーレン王家に対してなんらかの使者を送るのは悪い考えではありません」


「そうか。なら、王都に向けて使者を出そう。内容は例の協議で出た案でいいだろう」


 フォンターナ討伐のための連合軍を押し返し、フォンターナ内部の仕事に邁進していた。

 その間に、バルカ銀行でバルカ銀貨まで作ったりしていたが、それと並行してずっとフォンターナ王国の外の情報を集め続けていた。

 が、国外は非常に混乱している。

 連合軍を率いていたメメント軍は、二つに分かれた連合軍のうちメメント側についた貴族軍とともに王都圏に入った。

 そして、結果としてブレーキの壊れた暴走車のように王都圏を地獄に叩き落とした。


 俺はバルカで軍を作ってから、戦で勝利したときの相手の兵が残した武器防具を追い剥ぎするような行為はたしかに認めていた。

 が、街などでの略奪行為は禁じていた。

 これはパラメア要塞を攻略したときの経験もある。

 勝者には相手のものを奪っても良い、という認識がこの動乱の世にはあるのだが、あまりにひどいとその後の領地としての運営が難しくなる。

 毎回、祭りを開いて住民を慰撫するのも楽ではない。

 そのために、相手の兵からの武器防具の回収は認めても、攻略した街などからの略奪行為は認めていなかった。

 このことはウルクやアーバレストを攻略したときも、フォンターナ軍全体としてカルロスに認めてもらっていた。


 が、それはあくまでもフォンターナの中だけの話であり、他の貴族の軍ではそうではない。

 戦いに勝ち、攻略した土地の街では勝者として振る舞う権利があると考えるものがほとんどなのだ。

 それは今回の王都圏でもそうであり、それによって王都に住む者たちに悲劇が起きることになった。

 が、そこでもまた連合軍内で争いが起こったのだ。


 王都圏というのはドーレン王家が持つ領地の周りに、攻撃魔法は持たないが生産系の貴重な魔法を所持する貴族の領地がひっつくようにして経済圏として成立している。

 今まで王家の権威と一番力のある貴族家が覇権貴族として睨みをきかせていたので、王都圏の街々は比較的安全だった。

 だが、それが今回暴走したメメント連合軍によって襲われた。

 いくつもの貴族軍で構成されたメメント連合軍は王都圏に入ると蜘蛛の子を散らすようにバラけて各自で略奪を開始したのだ。


 しかし、メメント家が一番に王都に向かい、王家を押さえた。

 そして、王家の宝物庫を独占したのだ。

 その動きに乗り遅れた貴族軍は結果として一番の宝を逃したと言ってもいい。

 ほかのいくつもの街から略奪するよりも王都の宝物庫のほうが何倍もの利益をあげることができたのだから。


 そして、そのことに不満を持つ貴族軍がいた。

 メメント軍につくように行動していたとはいえ、別にメメント家の配下になったわけでもない。

 それに、連合の盟主として振る舞うのであれば、略奪で得た利益はあまり不公平にならないように分配するべきだと主張したのだ。

 が、それに対してメメント家は冷たかった。

 そう思うのであれば最初に王都に入ればよかったのだ、その判断ができなかったお前が悪いのではないか、と。


 それはある意味で正論かもしれない。

 が、暴走した軍でその正論は最適な答えではなかったのだろう。

 このとき、メメント家は確かにドーレン王の身柄を確保していた。

 そのことに満足して、たとえ少しでもいいから宝物庫の宝をメメント連合軍内で分配していればよかったのだ。

 だが、バッサリと切り捨てるその発言に腹を立てた貴族軍はひとつではなかった。

 なんと、そこで今度はメメント家についた連合軍内でさらなる抗争に発展したのだ。

 その結果、メメント家は勝利したものの、ドーレン王を見失ってしまったという。


 メメント家はその後、王都圏で自分たちの言うことを聞かない貴族軍を追い出すというさらなる愚行に走った。

 そのため、王都と王以外の王家を押さえたメメント家だが、周囲からは浮いている状態になった。

 そして、その王都の西ではリゾルテ家とラインザッツ家が争い続け、北部では反メメント連合というべき勢力も台頭してきている。


 こうなると、もうフォンターナ討伐があったのは過去の話かのような扱いになってしまっていた。

 宙ぶらりんの状態だ。

 フォンターナ王国はこの後どう動いていくか。

 その話し相手がいない状態になってしまっていたのだ。


 が、フォンターナ内では意見をまとめている。

 フォンターナは確かに王国として独立を主張し、それに反対するドーレン王家とはぶつかった。

 しかし、あくまでもフォンターナの主張は自主自立することであり、決してドーレン王家と戦いたいわけではなかったのだ。

 そして、その意見の対立によって実際にはお互いが武器を取り合って戦うことになってしまったが、そこでフォンターナは勝利した。

 ゆえに、ドーレン王家はフォンターナを新たな王家として認めて独立を承認すること。

 それさえあれば、ドーレン王家とは対立せず、同じ王家として仲良くやっていきたい。

 以上がフォンターナ側の主張である。


 ようするにフォンターナは自分たちの領地で勝手にやってるから、それを認めればこれ以上ドーレン王家とは戦いませんよ、という内容を王家に伝えたのだ。

 もちろん、現在の王家は肝心のドーレン王がおらずまともに機能していない。

 その使者を実際に対応するのは王家を押さえたメメント家になった。

 メメント家は今、ほかの貴族軍から総スカンを食らっているので、フォンターナがそこに介入してこないと言えば受け入れられるだろうという予想だった。

 そして、それは間違いなかったようだ。


 ドーレン王不在の王都から使者が帰ってきた。

 曰く、ドーレン王家はフォンターナの主張を認めて、旧フォンターナ領・旧ウルク領・旧アーバレスト領・旧カーマス領の領地をフォンターナ王国として認めると。

 こうして、フォンターナは王家からも教会からも正式に王国として認められたのだ。

 めでたしめでたし。

お読みいただきありがとうございます。

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