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身を護る魔法

「そういえば、新しい魔法作ったんだってな。どんな魔法なんだ、カイル?」


「あ、うん、そうなんだ。実は植物を使った魔法をつくってみたんだよ、アルス兄さん」


「……もしかして攻撃魔法か?」


「ううん、違うよ。いや、全く違うってことでもないのかな? 相手を無効化する魔法でもあるから、攻撃したともいえなくもないのかな?」


「どんな魔法なんだ?」


「えーっと、簡単に言うと身を守る防御魔法だよ。前からアルス兄さんが言っていたでしょ。ボクやリード家の人が誰かに誘拐でもされたら危ないって。だから、その対策にと思ってね」


 カイルから魔力草の栽培成功の話を聞いたついでに、もう一つ気になっていたことを聞く。

 それはカイルが新たに呪文化した新しい魔法についてだった。

 カイルいわく、それは身を守るための防御の魔法。

 攻撃用の魔法ではないが、今までの【速読】や【自動演算】、あるいは【念話】や【念写】などといった魔法とは少し毛色の違った魔法を作り上げたようだ。


 カイルは俺とは全く別物のような魔法を作り上げる才能がある。

 俺が呪文を唱えたら条件反射のように同じ現象を発現するような魔法を作るのに対して、もっと柔軟に効果を発揮する魔法を作ることができるのだ。

 そして、今回もそんなカイルの特徴が出ている魔法を作ったようだ。


 【守護植物】。

 それがカイルの作った防御魔法だ。

 どうやらカイルが北の森のなかにある意思ある大木とやり取りして契約した精霊を使って呪文を作ったようだ。

 効果は非常にわかりやすい。

 例えば、夜、自室で寝る前に【守護植物】を発動すると、その部屋の中の壁を植物がびっしりと覆うのだそうだ。

 そして、それは呪文を唱えた本人が解除しない限りはそのままの状態を保つ。

 もしも解除しないのにもかかわらず外から侵入しようとした者がいた場合、侵入者は部屋の壁を覆っていた植物によって拘束されてしまうのだという。


 確かにその効果を聞くと攻撃魔法とは言えないだろう。

 が、防御とも少し違うような気がする。

 どっちかというと、簡易結界みたいな呪文ではないかと思ってしまった。


 ちなみに、植物の拘束というのは結構強力で身動きが取れなくなってしまう。

 さらに、その植物が毒や麻痺、睡眠などの効果を相手に与えるというおまけ付きだ。

 どうやら、ガラス温室にてミームが育てた薬草などからその性質を持つ植物を知り、利用したのだとか。

 カイル自身はこの魔法を作る際に木精に協力してもらったそうだが、呪文化が成功したあと他のリード姓のものに試してもらうと木精なしでも同様の効果を発揮することが確認された。

 ちなみに、部屋の中に土の入った植木鉢と植物があったほうがより効果が高まるとかなんとか。


「なんとまあ、相変わらずすごい魔法を作るな、カイルは」


「そうかな? アルス兄さんのほうがいろいろすごい魔法を作っているじゃない。それにフォンターナ家の【氷精召喚】もすごいと思うよ」


「まあ、そうかもしれないけど、やっぱりカイルはすごいよ。一晩中部屋を守る魔法が、結構少ない魔力量で実現できるんだし。リード家の人間はだいたいできるってことだよな?」


「そうだね。きちんと部屋の中に植物を用意しておけばみんな使えると思うよ。ただ、過剰な期待はできないけどね。例えば侵入してきたのがアルス兄さんやタナトスさんみたいな強い人なら拘束から抜けられるかもしれないし」


「なるほど。絶対に侵入を防げるわけでもないってことか。ただ、それでも時間稼ぎにはなるか。【守護植物】で時間を稼いで【念話】で助けを求めれば十分かな?」


 カイルがこうして新しい魔法を作ったのは理由がある。

 それは遠く離れた王都圏で活動しているリオンと行動をともにしているリード姓の者から相談されたのだそうだ。

 もともとグラハム家の人間だったが、リオンの指示によってカイルから名付けを受けてリード姓を得て魔法を身につけた者がいた。

 主にリオンの家臣として事務系統の仕事を行っていたが、王の護送にリオンと一緒に行動しており、例の事件でなんとか生き延びた。

 そして、その後、フォンターナ領に戻らずに王都圏やリゾルテ領を行き来して、主に【念話】などを通してフォンターナとの連絡係を任されている。


 その人があるとき、少し危険な目に遭いかけたのだそうだ。

 その時はなんとか事なきを得たが、領地から遠く離れた場所で少しでも身を守る術はないものかと悩んでいたのだという。

 それをたまたま知ったカイルが、こうして自衛手段を持てるようにと作り上げたのが【守護植物】なのだ。


 この魔法の良いところは同室の人も一緒に植物に守られているということだろうか。

 例えばリオンはフォンターナの騎士であるために、リード家の【守護植物】を使うことはできない。

 が、呪文発動時にその術者と同じ部屋にすでにいた場合には侵入者とは見なされないのだそうだ。

 あくまでも、部屋の中の壁が植物で覆われたあとから侵入しようとしたものを拘束するようになっているらしい。


 そのため、本来カイルが想定していた、人間が一番無防備になる夜の就寝時だけではなく、日中の話し合いのときにもこの魔法が使えるとリオンから報告があった。

 誰かに邪魔されずに話をしたいときにこの【守護植物】を発動しておけば一定の安全を確保できるということらしい。


 こうして、カイルの新魔法によって常に危険にさらされながら王都圏の情報をこちらに送っていたリオンは安全に行動できるようになったのだった。

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