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ラグナとの会話

「お久しぶりですね、ラグナ殿。カルロス様に忠誠を誓い、フォンターナの一員となったこと、心より歓迎します。以後よろしくおねがいします」


「ああ、君か。いや、アルス殿と呼ばせてもらおう。これからはアーバレスト家はフォンターナのために働く。アルス殿のバルカ家に負けぬように励むつもりだ」


「ええ、お互いがんばりましょう。しかし、ずいぶん思い切りましたね。てっきり、もう少し賠償金返済を目指して粘るのかと思っていたのですが」


「最初はそのつもりだった。が、アルス殿がアーバレスト家に勝ったあとにメメント家にも一撃を食らわせたと聞いたからな。メメント家との件が片付けばフォンターナの目は自然と再びアーバレストに向くことになる。で、あれば決断を今すぐ下すべきだと考えたのだよ」


「まあ、メメント軍とはまだ戦闘継続中ですけどね」


「ふむ。三貴族同盟間での会談があるとの話だが、メメント軍にはまだその情報が届いていないということだろうか?」


「いや、どうも違うようです。メメント家の首脳陣は軍の停止を指示したようです。といっても、引き上げるというわけではないようで、フォンターナ領に圧力をかけつつカルロス様に交渉を持ちかけたとか」


「交渉か。どのようなものか聞いているのかな?」


「それがどうやら、メメント家とフォンターナ家で手を組まないかと言ってきているようですよ。三貴族の中でメメント家を覇権貴族として支持してともに歩もうと言ってきているようです」


「ほう。あの強硬派のメメント家の態度がかなり軟化しているのだな。バルカ軍に敗北したことで、大貴族からみると小さいと思っていたフォンターナ家がそれなりに対等な交渉相手として見ることにつながったということだな」


「ですが、現場の指揮官からするとあまり面白くない方針のようですね。奇襲にやられてまともに戦わないうちにはしごを外された形になりますから。とくにメメント軍の中の一部の軍は断固フォンターナを攻めるべきだと主張しているとか」


「なるほど。まあ、それもそうだろう。初戦で負けてしまったとはいえ、いまだに数が多いようだからな。しかし、カルロス様はその提案を受け入れるのだろうか? 普通に考えれば敵対したメメント家と手を組みたいとは考えないだろう」


「さあ、どうするのでしょうね。アーバレスト家としての考えはどうですか、ラグナ殿?」


「そうだな。アーバレストとしてはメメント家ではなく、ラインザッツ家と手を結んでくれるとありがたいのだがな」


「ラインザッツ家ですか。確か、王領の西にある大貴族家ですよね。三貴族同盟の中で一番力があるという」


「そうだ。おそらくフォンターナが手を組むには一番いい相手であると思う。それにアーバレスト家にとっても利が大きいからな」


「……そうか。メメント家は東で、ラインザッツ家は西ですもんね。フォンターナが組むのが西にあるラインザッツのほうがアーバレスト領を通る商人の数も増える。アーバレスト領にも活気を取り戻しやすいということですか」


「そのとおりだ、アルス殿。なにせアーバレスト領はここ数年で大きく人の数を減らしたからな。回復するには時間がかかるのだよ」


「あっ。……それはそれは大変ですね」


「本当にな。だが、水運でならそれほど人手を取られずに利益も出すことができるだろう」


「そういえば、アーバレスト領について聞きたかったことがあるんですけど、あそこって川がたくさんありますよね? あの川をさらに下っていったらどうなるんですか? 他の貴族領じゃないんですよね?」


「そうだな。アーバレスト領は北西に位置する最果ての領地だ。その先はない。さらに先に進むと湿地帯が続いているだけだ」


「湿地帯、ですか。人が住めないんですかね?」


「無理だな。あそこはバルカの北の森と同様に魔物が住み着く場所だ。かつて、アーバレスト家のご先祖様がたも開拓に挑戦し、失敗し続けた場所だよ」


 フォンターナの一員となったアーバレスト家当主のラグナと再会した。

 今までは貴族家としてのアーバレスト家だったが、これからはフォンターナ家の中の一騎士家としての位置づけになるという。

 もともと貴族家として君臨していただけに、受け入れがたいところもあるだろう。

 だが、今フォンターナに降伏し軍門に下れば、既存の領地を安堵されるのだとか。

 なんとか再起を図りたいと考えていることだろう。


 そんなラグナがメメント家に対するための前線基地にまでやってきた。

 今、カルロスがこの陣地に詰めているからだろう。

 そこで俺とも顔を合わせたので軽く話をする。


 その話の中で三貴族同盟絡みの話の他に、アーバレスト領についても聞きたかったことがあったので少し聞いてみた。

 アーバレスト領にはいくつかの貴族領から川が流れ込み、多数の船を浮かべることができるほどの大きな河まで存在している。

 その河を利用すれば多くの荷物を運び込み、フォンターナへともたらすことができる。


 が、その川などをさらに下っていったらどうなるのか。

 他の貴族領がないとは聞いていた。

 さらにいえば、別の国があるわけでもなく、人が住んでいるわけでもないという。

 広大な湿地帯が続いており、そこには魔物がひしめき合っているのだそうだ。


 危険な魔物がはびこり、人の侵入を防いでいる。

 そのため、かつてのフォンターナが森の開拓に失敗したのと同じように、アーバレスト家も領地の拡大としての開拓事業に失敗し続けた歴史があるらしい。


「しかし、そんなことはフォンターナにいても知る機会があっただろう? 本当は別のことが聞きたいのではないのかな?」


「鋭いですね。では単刀直入にお聞きします。雷鳴剣の素材ってなんなんでしょうか? アーバレスト領、あるいはそのさきの湿地帯で取れる素材で作ったのでしょう?」


「アルス殿は魔法武器の開発に熱心だと聞いていたが、雷鳴剣にも興味があるのか」


「そりゃまあ、そうでしょう。魔力を通したら電気が発生するんです。利用価値は高いですよ」


「確かに雷鳴剣ほど使い勝手のいい魔法剣もないだろう。あれは一振りで多くの敵を薙ぎ払えるからな。いいだろう。同じフォンターナの騎士としてアルス殿には教えてもいいかもしれんな」


 こうして、俺は雷鳴剣に用いられた魔物の素材についてラグナから聞き出すことに成功したのだった。

 情報料として賠償金額の減額を認めてしまったが、うまく手に入ればもとは取れるだろう。

 俺はこの戦いが終わったら湿地帯に行こうと心に決めたのだった。

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