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鉄を求めて

「よ、バイト兄。領地運営は問題なくできてるのか?」


「ああ、大丈夫だ、アルス。配下になった騎士たちはちゃんと俺に従っているぜ。今はとりあえず検地をやりながら、農地改良もしているところだ」


「うん、それでいいと思うよ。ジタンからもいろいろ聞いているみたいだね?」


「ああ、ジタンのやつはアーム騎士領の当主を息子に譲ってバルト騎士家の相談役についているからな。領地持ちの騎士たちが言いたいことがあったら、あの爺さんが先に話を聞くようにしている」


「なるほどね。まあ、ジタンならうまいこと捌いてくれそうだしな。いい人選じゃないかな」


「そんなことより、お前、俺の知らないところでまたいろんなことをしてたらしいじゃねえか。なんだよ、不死者の竜と戦ったって。しかも、聖騎士になったとか言うじゃねえか」


「ああ、そのことね。大変だったよ、不死者の相手は。魔力に触れただけでものが腐っていくんだから、厄介この上ないし。って、言っとくけどもしこの辺に不死者が出たら戦おうとかするなよ、バイト兄。まずは教会に連絡入れて清めの儀式を頼まないとまともに戦えないからな」


「……お前とカイルはその儀式なしで戦ったんだろ?」


「予想しない遭遇で逃げることもできなかったからな。戦いたくて戦ったわけじゃないって。けど、忠告はしたからな。不死者は見つけても戦うなよ、バイト兄」


「わかってるよ。でも、聖騎士ってのはなんなんだ? お前、フォンターナの騎士から教会の騎士にでもなったのか?」


「いや、そうじゃないよ。聖騎士ってのは教会に従う騎士ってわけじゃなくて、教会が認めた騎士だってことらしい」


「はあ? なんかちがうのか、それ?」


「うーん、ようするに今回俺の持つグランバルカは清めの儀式の時に聖剣になったから、もしかしたら他にも聖剣を作る可能性があるって考えられたわけだよ。で、聖剣っていうのは世界の敵である不死者に対する特効武器みたいなものなんだ。そんな武器を生み出す可能性がある俺は教会にとってもなるべく長生きして聖剣を生み出してほしい存在である。つまり、一介の騎士という存在じゃなくて、教会が有用だと認めた騎士であるってことで聖騎士認定されたってわけだな」


「……つまり、教会の役に立つやつを聖騎士って言ってるだけか? なんか意味あるのか、それ?」


「まあ、多少の効果はあるだろ。聖騎士である俺と戦うことになったやつは、俺を殺したら教会に文句を言われる可能性が高いってことになるんだしな。抑止効果があるとは思うよ」


「ふーん、なんか聖騎士って言っても大したことはなさそうだな。で、その聖騎士様が今日はどうしたんだ。わざわざこんな東にまで来て」


 バルカニアでグランと久しぶりに色々なものづくりをしたあとのこと。

 俺は再び旧ウルク領へとやってきていた。

 バルカ家が旧ウルク領の東部分を切り取り、今はバイト兄が当主をつとめるバルト騎士家が管理している領地。

 その中でもバルトニアというバイト兄の本拠地へとやってきていたのだ。


 少しぶりに会うバイト兄。

 俺と一緒に軍を動かしてウルク領に攻め入り、その後は領地を任せて俺はバルカニアに帰っていった。

 そして、気球を作り、森のなかで不死骨竜と戦い、教会に聖騎士認定を受けた。

 いろいろなことがあったが、まだそれほど時間が経過しているわけではない。

 が、それでも再会したバイト兄の顔つきはどこか変わっているように見えた。


 男子三日会わざれば刮目して見よ、というがほんの少し会わなかっただけで少年の顔から大人びた顔になっていたのだ。

 俺と別れ、周りは力で従えた男たちを相手にしながらも領地運営をはじめたことが関係しているのかもしれない。

 が、それでも少年の心はまだ残っていたようで、俺とカイルの冒険譚については羨ましく思っていたようだった。


 そんなバイト兄とあれやこれやを話しながら本題に移る。

 なにもバイト兄の顔を見たいだけで俺も遠方まで足を運んだわけではないのだ。

 今回の来訪の目的についてバイト兄へと伝える。


「ああ、バイト兄にやってほしい仕事ができたんだ。鉱山から鉄を採掘してバルカニアに運んでほしいんだよ」


「鉱山? 鉄? ああ、確か鉄が取れる鉱山がバルト騎士領にはあるな。けどちょっと問題があるな……」


「なんだよ、バイト兄? 取れた鉄はバルカの方で買い取る。そっちにもきちんと儲けが出るように計算しているぞ?」


「ああ、そうじゃない。お前は今の状況を知らないんだな。今は鉱山があるあたりは封鎖されている。立入禁止になっているんだ」


「は? 立入禁止? なんでまた」


「そうだな。ちょうどいいか。せっかくお前がこっちに来たんだ。ちょっと手伝えよ、アルス」


「おい、どういうことだよ、バイト兄。何言ってんのかわからないんだけど」


「だから、鉱山の立入禁止を解除するためにお前も手伝え。魔物退治に行くんだよ」


「……まさか、鉱山に魔物が住み着いているのか?」


「そうだ。鉱山に横穴をほって鉄とかを採掘していたんだが、そのあなぐらを住処にしちまったやつがいるらしい。それで完全に鉱山が止まっちまった。今は鉄くずひとつ取れない状態なんだよ」


「まじかよ。そんなはた迷惑な魔物がいるのか。……わかった。俺も手伝おう。一緒に鉱山まで行こうか、バイト兄」


 なんともタイミングの悪い、あるいはバイト兄にとってはちょうどいいのか、目的の鉱山に問題が発生していたようだ。

 危険な魔物が鉱山を住処にしてしまうと、今後の鉄の入手に問題が出てしまうことになる。

 さすがにこれを放置することはできないだろう。

 はぁーっとため息をつきながらも、俺はバイト兄と一緒に魔物退治にでかけたのだった。

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