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炎鉱石と切り取り

「おおー!!」


 エルビスが持ち帰った見たこともない鉱石。

 それに【魔力注入】を行うと炎が出現した。

 本物だ。

 これこそまさに九尾剣の素材となった金属に違いない。

 間違いようもない現物をエルビスは持ち帰ってくれたのだ。


「よくやったな、エルビス」


「ありがとうございます、アルス様。実はもっと持ち帰ろうかと思ったのですが、たくさんありすぎて無理でした」


「そんなにたくさんあったのか? これと同じ金属が?」


「はい、そうです。狐谷は土の壁があって、そこがまだら模様みたいになっているんです。その壁面にこれと同じものがたくさんありました」


「ふーむ、断層でも露出しているのかな。ま、なんにしてもお手柄だ。よくやってくれた。明日の朝になったら【毒無効化】の魔法が使えるやつだけで狐谷に入ろうか。とりあえず回収できるだけしておこう」


「おい、アルス。やったな。これで九尾剣が作り放題じゃないか」


「バイト兄、落ち着けよ。まずはきちんと明日の朝に回収できてからの話だ。それに九尾剣の製法は大昔に失われたって話だしな。同じのが作れるとは限らないぞ」


「大丈夫だって。グランならできるさ。夢が広がるじゃねえか。ヴァルキリーに騎乗したバルカの騎兵団が九尾剣を持って敵を倒す。絶対強いぞ」


「そうだな。ま、とにかく明日狐谷に俺達も向かおう。さっさと飯食って寝るぞ。明日の朝は早いんだからな」


「おう、わかってるぜ」


 こうして、俺達はすでに手に入らないと言われていた幻の金属、炎鉱石を手に入れた。

 そうして、一晩経って狐谷へと向かい、荷車に積めるだけ積んでその鉱石を回収したのだった。




 ※ ※ ※




「まさか……、本当に狐谷に行ってこられたのですな……。それが失われた幻の炎鉱石。ああ……、まさかこの目で実物を見ることができるとは思わなんだ。信じられませぬ」


「ジタンが狐谷に案内を出してくれたおかげだ。思った以上に早く回収を済ませられた。感謝する」


「いえ、狐谷から炎鉱石を得ることができたのはアルス様のお力以外の何物でもありますまい。……それで、その炎鉱石を入手されたアルス様は次はどのように動くおつもりなのか聞いてもいいですかな?」


「決まってるだろ、ジタン。俺達がここに来た目的は炎鉱石だけじゃない。ウルク領でキシリア家に反抗した騎士領から領地を得ることだよ。これから他の騎士領を攻めることになる。当然、アーム家も手伝ってもらうぞ」


「わかっています。我がアーム家はウルクの名を捨て、アルス・フォン・バルカ様に忠誠を誓うことを宣言します。いかようにもお使いください」


「それはちょっと違うな、ジタン。お前が忠誠を誓うのは俺じゃないぞ」


「な……、それは話が違いますぞ、アルス様。我がアーム家はウルク家を倒したキシリア家の下につく気は一切ありませんのじゃ。どうか、我が身に忠誠を誓うことをお許しください」


「いいから聞け、ジタン。別にジタンにキシリア家へと忠誠を誓えと言っているわけじゃない。そうじゃなくて、お前は俺の兄のバイト、すなわちバルト家に対して忠誠を誓ってもらうことになる」


「バイト……様にですか?」


「え、俺? なんで俺なんだよ、アルス。お前が名付けするんじゃないのか?」


「何言ってんだよ、バイト兄。バルト家の領地がほしいだろ。このへんの領地を切り取って統治しろよ。ま、基本的にはバルカ騎士領の飛び地の管理って感じになるかもしれないけど」


「いいのか? 本当に俺が自分の領地を持ってもいいのか、アルス?」


「いいけど、ちゃんと統治してくれよ? 領地運営失敗とかなったらバルカ家が領地を取り上げるからな」


「おっしゃ、任せろ、アルス。なんだよ、お前そんなこと考えてたのか。もっと早く言っておいてくれよな」


「頑張れよ、バイト兄。で、ジタンはどうだ。バイト兄に忠誠を誓う気はあるか?」


「……わかりました。我がアーム家はバイト・バン・バルト様に忠誠を誓います」


「よく言ってくれた。で、そんなジタンにもうひとつ頼みたいことがある。聞いてくれるか?」


「なんでしょうか、アルス様?」


「バイト兄が切り取ったウルク領をスムーズに統治するためにはバルカの力だけでは足りない。わかるよな?」


「……婚姻ですな。バイト様にはこの地を統治するに相応しい血筋の者と結婚していただく必要があるでしょうな」


「そうだ。誰かいい相手がいないか、ペインと一緒に考えておいてくれ。やったな、バイト兄。家族が増えるよ」


「まじかよ。急に結婚の話まで行くとは思わなかったんだけど……。おい、ジタン、血筋も大事だけどいい女を頼むぞ」


「かしこまりました、バイト様」


「よし、話は決まりだ。ってことで、バイト兄は早速仕事だ。領地の切り取りを開始するぞ」


「わかったぜ、アルス。早速攻めるか」


「その前に周囲の騎士に手紙を出そう。改めて、キシリア家ではなくバルカの一部となるかを問いただす手紙を出す。それに従って挨拶に来ればよし、来なければ攻め落とそう」


 俺は当初の目的通り、切り取った領地に関してはバイト兄に丸投げすることにした。

 それから騎士へと通達を出し、従うものは味方へと取り入れて、反対するものには鉄槌を下す。

 が、一応狐谷の採掘権だけはこっちで確保しておいたほうがいいだろう。

 張り切るバイト兄が領地の切り取りをしている間、俺はアーム家の館を拠点としつつ、狐谷に何度も炎鉱石を回収に向かってありったけの量を確保したのだった。

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