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波紋の影響

「お呼びですか、カルロス様」


「アルスか。よく来てくれたな。今回の件、貴様も話は聞いているだろうな?」


「カルロス様が王を保護されたというお話ならリオンから聞きました。……大丈夫なのですか?」


「大丈夫、とはどういう意味だ?」


「そのままの意味ですよ、カルロス様。王の身柄を保護するということは、つまり3つの貴族家から睨まれるということでしょう。実際に力ずくで王の身柄を確保しようとした貴族もいるというのに、いいんですか?」


「正直なところ、難しい判断だった。だが、断ることのできない話でもあった。貴様が危惧していることも当然考えている」


「そうですか。今後、フォンターナはどうするおつもりですか?」


「今しばらくは大貴族たちにはしらを切る。知らぬ存ぜぬを通せば時間は稼げるし、なにより、例の3つの貴族家はお互いがお互いの動きを牽制しあっているからすぐには動けんはずだ。その間に少しでもリスクを排除しておきたい」


「リスクですか?」


「そうだ。他の貴族家がもしこちらへと侵攻してきた場合、それを防ぐために無視できない存在がいる。貴様はそれがどこかわかるか?」


「……ウルクとアーバレストですね」


「そうだ。フォンターナの東と西に位置する2つの貴族家。そこが3つの大貴族のどこと手を結んでも厄介だ。そこで、貴様にやってもらうことがある。バルカは今どのくらいの戦力を動員することができる?」


「今は最大で1500程ですかね。って、もしかして……」


「そのとおりだ。バルカは全兵力を以って東へと侵攻し、ウルクを打倒せよ。大貴族が動き出す前に、可及的速やかにな」


 あー、カルロスに呼び出しを食らった瞬間に変なことを言われると思っていた。

 だが、やはりこうなるのか。

 断ったら怒られるんだろうか。


 どうやら、カルロスもあとには引けない状況に追い込まれているらしい。

 そこまで状況が悪くなるなら王様なんて受け入れなければいいのにと思ってしまう。

 しかし、現状況から判断を下すとなるとカルロスの出した指示は間違ってはいない。


 他の大貴族がフォンターナに目を向ける前に身近な敵を排除しておく。

 フォンターナは北に広がる大森林によって今まで領地を広げにくかったという面はあるが、逆に言えば背後から襲われる心配はない。

 であれば、東と西を制圧しておけば、少なくともどの貴族家が来ても南へと注意を向けるだけでよくなる。

 そして、昨年の戦いで西のアーバレスト領は難攻不落のパラメア要塞を落としてこちらが手に入れている。

 パラメアはアーバレスト領の玄関口のひとつであると同時に、アーバレスト領からの出口でもある。

 つまり、現状ではアーバレストがこちらへと襲いかかってくる危険性は低い。

 すなわち、東西では東のウルク家のほうが邪魔になる可能性が高くなるということだ。


「しかし、ウルク家に攻め込むにしろ、大義名分はいるでしょう? バルカが理由もなくウルク領に乗り込んでいっても、仮に勝利したところで大義がなければ統治もままなりません。東の安定化には繋がりませんよ、カルロス様?」


「わかっている。そのために、昨年蒔いた種を使う。貴様も覚えているだろう? ウルク領に偽の情報を流したことを」


「ああ、フォンターナにいた裏切り者と連絡をとっていた者を二重工作員に仕立て上げるっていうあれですか。その後、進展があったのですか?」


「その通りだ。こちらが思った以上の効果があったようだ。ウルク領内ではすでにそいつは敵同然として認識されており針のむしろのような立場に立たされているらしい。こちらに泣きついてきたぞ」


「なるほど。ということはそのフォンターナと繋がっていたというウルクの騎士を利用する、というところですか。ウルクの騎士からの救援要請を受けてそれを助けにウルク領へと入る、って感じでしょうか」


「それでいい。よほど切羽詰まっているのか、本当にフォンターナに助けを求めて手紙を送ってきているからな。救援が受けられればフォンターナへと忠誠を誓うとまで言ってきているぞ」


「……すごいですね。そんなやつ、信用できるのですか?」


「別に信用する必要もないだろう。利用できればそれでいいし、忠誠を誓ってフォンターナのために行動するというのなら、それなりに評価はするさ。もっとも、こちらを裏切るような行動をするようならば容赦せんがな」


「まあ、なんにしてもその裏切りの騎士を救援して、ウルク領を攻め落とせばいいんですね。わかりました。やりましょう」


「ほう、存外思い切りがいいな。貴様はもっと戦いたくないなどと言うかもしれないと考えていたのだがな」


「いやー、あんまり積極的に戦いたくはないんですが、状況も状況ですから。それに、私が功績を上げれば領地をもらえるんですよね、カルロス様?」


「ん、ようやく領地に興味が出てきたのか? 構わんぞ。バルカがウルク領を切り取った暁には相応の領地を約束しよう」


「ありがとうございます。実は兄のバイトが独立してバルト家をたてたものの、私が与えられる領地がなかったのが気になっていたんですよ。では、さっそく行ってくるとしましょう」


「なに? すぐに出陣するのか?」


「はい、カルロス様。前からバルカは農民を呼び集めて作る軍ではなく、常備軍になっていますので。出陣するのにそれほど時間はかかりません。では、失礼します」


 こうして、三度目となるウルク家とバルカの戦いが幕を開けたのだった。

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