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三者会議

「どうやら新しい区画は完成したようだな。貴様ももう移り住んでいるのか、大馬鹿者?」


「はい。妻のリリーナもすでにこのフォンターナの街へと移ってきて、ともに生活しております。というか、カルロス様、わたしの呼び方をそろそろ戻してはいかがでしょうか?」


「貴様は何するかわからんからな。馬鹿者と呼ばれたくなければそれ相応の振る舞いをするように心がけておけ」


「肝に銘じておきましょう。で、今日はどうされたのですか。わざわざリオンまで呼び出してまで」


「ああ、これからのフォンターナについてのことを考えていこうと思ってな。貴様らの考えも聞こうと思った」


「これからの、ですか?」


「そうだ。我がフォンターナは東のウルク家と西のアーバレスト家との戦いに打ち勝ち、勢力範囲も増えた。そこで、今後どのようにして動いていくかについてを考える必要がある」


「もしかして、どちらかの領土に攻め入るおつもりですか?」


「そういうこともあるかもしれない。何しろ、今回の戦いでは貴様らが当主級を討ち取っているからな。フォンターナにはそれだけの勢いがあるといえるだろう」


「お言葉ですが、こちらもそれなりの損害が発生していますよ、カルロス様。それにフォンターナ領内のゴタゴタもありました。以前と比べて騎士の数が減っているという側面もあるのでは?」


「ああ、貴様のお蔭でな」


「あはは、それはもう言いっこなしでしょう、カルロス様。一応それでフォンターナ領内はカルロス様のもとに一本化された勢力へと変わったのですし」


「リオン、貴様はどう考えている?」


「はい。領土を増やすというのも確かに一つの案であると思います。東のウルク家は昨年と今年の二度の戦いで多くの騎士と兵、そして直系の子供を2人も失っています。アーバレスト領は兵の損失そのものはウルクよりも劣るものの、現当主と側近たちが討ち取られています。かなりの動揺があるものと思われ、領土を奪っても即座に対応してくる可能性は低いと思います」


「では、リオンは領土を奪うことに賛成というわけだな」


「はい。ただ、奪った領地をどのように統治するおつもりですか、カルロス様? 現在東にはピーチャ殿、西にはガーナ殿を各領地に対する抑えとして配置していますが彼らに任せるおつもりですか?」


「それでは駄目か?」


「東のウルク領はなんとかなるかもしれません。が、西のアーバレスト領はもしかすると難しいかもしれません」


「ん? どうしてなんだ、リオン?」


「アルス様、ご自分がしたことを忘れたのですか?」


「え、俺? 俺に原因があるのか?」


「いえ、厳密に言えばアルス様に原因があるわけではなく、我々のとった行動がという意味ですが」


「はっきりといえ、リオン。西の統治が難航する理由とはなんだ?」


「はい。それは住民たちの感情です。西からアーバレスト家の軍が進行してきた際に、我々の陣営は水上要塞パラメアを攻略しました。その際、パラメアは水没し、パラメア湖に潜む魔物が住人に被害をもたらしたのです。それもほぼ全滅という形で」


「けど、あれはしょうがなかっただろ。リオンだって知っているはずだぞ。水没させる前に、パラメアに住む住人には要塞からの退去を言い渡していたんだ。それなのに誰一人として出ていかなかったんだから」


「そうですね。今まで一度も落ちたことのない難攻不落の要塞としての歴史がありましたからね。退去勧告を受けても、パラメアよりも安全なところなどないと言っていた住人もいたようですし」


「だろ? それでスライムにやられたからって、こっちが恨まれても困るんだけど」


「ですが、パラメア湖付近に住む人にとっては我々が水上要塞パラメアを攻略した際、一人残らず皆殺しにしたと考えてもおかしくはありません。その場合、フォンターナ領として領地を切り取っても、そこに住む者たちは反抗する可能性が高いと考えられます」


「なるほど。つまり、リオンが言いたいのは、アーバレスト領を奪い取ってもそこに住む住人たちは取り込めない可能性がある。それによって領地の統治がうまくいかないことが考えられる。こういうことだな?」


「はい、そのとおりです、カルロス様」


「確かにガーナから似たような内容の報告は受けている。しかし、だからといってアーバレスト領を手付かずに放置しておくこともあるまい。住民の感情だけを考えていたら手に入るものも手に入れられなくなるぞ?」


「そのとおりです、カルロス様。ですので、何らかの手を打つ必要があるのではないかと思います」


「ふむ。今回の戦では東のウルク家は撃退しただけだ。対して西のアーバレスト領はバルカ軍が西進して奥まで切り込んでいる。現在、フォンターナのものとしやすいのはどちらかと言えば西か……。だが、その西の領地が切り取っても統治しにくい。となれば、方法は限られてくるな」


「カルロス様、わたしはリオンほど頭が良くないのですが、その方法というのは?」


「武力だ。力のあるものが武力をちらつかせて、そこを抑える。住民の感情ごとな」


「おうふ……。なかなか力技の解決法ですね」


「しかし、それができるものはフォンターナ領で限られている。大馬鹿者の貴様には誰か分かるか?」


「……カルロス様、まさかですが……」


「貴様だ、アルス・フォン・バルカ。貴様はこれからパラメアへと行って、近隣の住人たちを慰撫し、統治の基礎を作り上げてこい。これは命令だ。いいな?」


「……はっ、かしこまりました」


 いや、全然良くないんだけど。

 パラメアを水没させる案はリオンが立案したんだから、リオンが行けよと思わなくもない。

 だが、命令を受けた以上やるしかないか。

 俺はせっかく移り住んだ新居から再び軍を率いて西へと向かうことになったのだった。

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― 新着の感想 ―
神輿は軽いほうがいいもんねと言いたくなるぐらいカルロスさん頭弱々なような? 今回の挟み撃ちでバルカも大打撃受けたと思うけど、フォンターナ全体が力落としてるはずなのに更に切り札足り得るバルカの忠誠を得よ…
[一言] 主人公もよくこんなしょっぱい上司についていくな。 よそに比べれば話はできるのかもしれないけど、有能な部下ゴリゴリ使い潰す上司なんて先ねーぞ。
[気になる点] 逆らえば皆殺しにされるかも知れない相手に逆らう気概のある一般民とは・・・
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