水上要塞パラメア
「よく集まってくれた。今から作戦会議を行うこととする。リオン、状況の説明を頼む」
「はい。現在フォンターナ領は未曾有の危機に陥っています。東西からウルク家とアーバレスト家がタイミングを合わせて挟撃する事態となっています。これを撃退するのが今回の戦の目標となります。ここまではいいですね」
「ちょっといいですか、リオン・フォン・グラハム殿。今回の出来事の発端はそこにいるアルス・フォン・バルカ殿によるものだと考えられます。我々はアーバレスト領と自分たちの領地が接しているのでアーバレストの軍を迎撃することに異論はありません。が、アルス殿と一緒に戦うのは正直気がすすまないのですが」
「お気持ちは大変痛いほどわかります。ですが、バルカ軍の強さを知らないわけではないでしょう。今回、アーバレスト家と戦うためにはどうしてもバルカ軍と歩調を合わせる必要があります。どうか、ご協力を」
「ふむ。そうですね。ですが、何もなしでというわけにはいきません。この戦で得るものはアーバレスト領と接する騎士家が優先的に頂戴するくらいは許していただきたい。いかがですか、アルス殿」
「わかりました。こちらに異論はありませんよ、ガーナ殿」
「では、今回の戦での報酬は原則としてアーバレスト領と接する騎士家が優先的に得ることとしましょう。次に行きます。現在入っている情報によると、進軍中のアーバレスト家は8000ほどとのことです」
「多いな、リオン。アーバレスト家はフォンターナ家よりも動員数が多いのか?」
「そうですね。最大で動員可能な数はおおよそ12000ほどだと言われています。フォンターナ家よりも多いですね」
「半数以上をつれてきているのか。かなり本気なんだな」
「はい。フォンターナ領内が動揺しているということもありますが、それ以上にウルク家との挟撃のタイミングが良すぎるように思います。おそらくは以前から何らかのやり取りがウルク家とはあったのでしょう。今回のフォンターナ領内の問題がなくとも、いずれは起こっていた事態だとも言えると思います」
「そういう考えもあるか。で、アーバレスト家に対する作戦はこの前言っていたとおりでいくのか?」
「はい。進行中のアーバレスト家をバルカ軍を中心とした我々で真正面から迎撃するのは困難だと思われます。籠城するよりも逆侵攻という形で奇襲をかけるという案には私も賛成です。そのため、今回の作戦は要塞パラメアを攻撃目標として設定します。難攻不落と言われるパラメアを攻め落とし、アーバレスト家を引きつけることとします」
「ちょ、ちょっと待ってください。パラメアですか、リオン殿。あのパラメアを攻めるというのですか? 難攻不落で、今まで一度も落ちたことがないあそこへと。本気ですか?」
「そうです、ガーナ殿。領地がアーバレスト領と接しているあなた方ならよくご存知のようですね。あの水上要塞を攻めます」
「無茶だ。今までフォンターナ家が西へと進めなかったのは、あの要衝をアーバレスト家がガッチリと抑える要塞を作ったからです。リオン殿はそれを知らないのだ。とても攻め落とせるわけはない。あそこを攻めている間に本隊のアーバレスト軍8000が来たら我々は一撃のもとにすり潰されてしまいます」
「大丈夫です。そのためのバルカ軍です。バルカの魔法があれば無敵の水上要塞といえども手出しできない相手ではありません」
「リオン、その水上要塞とかいうパラメアについて説明を頼む。どんな感じなんだ?」
「わかりました。では説明いたします」
そうしてリオンが話しだした。
フォンターナ領の西に位置するアーバレスト領。
ここは水の豊富な土地なのだそうだ。
俺が治めているバルカ騎士領に流れていた川もそうだが、いくつかの川が東の大雪山から西のアーバレスト領へと向かって流れているのだそうだ。
そして、アーバレスト領はその川が複数合流して大きな川があり、湖などもあるらしい。
水上要塞パラメアというのはその複数の川が流れ込んでできた湖の中央に建てられた砦なのだそうだ。
周りを大量の水で囲まれた自然の要塞。
そこから川を遡れば複数の領地へと向かうこともできるため、各地を見張る要衝にもなり得るという。
「そんなの船に乗って攻めればいいんじゃないのか?」
「いいえ、それは難しいでしょう。船の扱いには相手のほうがはるかに慣れてます。仮に船で近づけたとしても敵だと分かれば要塞を閉じて攻撃されて終わりです」
「じゃあ、どうするつもりなんだ? まさか、俺たちバルカ軍に湖に橋をかけろなんて言わないだろうな、リオン」
「駄目ですか? バルカの魔法があればどうにかなりそうなのではと思ったのですが」
「うーん、難しいだろうな。ていうか、仮に橋ができてもそこから要塞を攻略しなきゃなんねえんだろ? アーバレストの本隊が来るまでの時間制限付きで」
「そう……ですか……。では、こんな方法ならどうでしょうか?」
どうやら俺の魔法を当てにしていたらしいリオン。
リオンには悪いができることとできないことは存在する。
きっちりとできないものはできないと言っておいたほうがいいだろう。
そう思って俺が無理だというとリオンは代案を出してきた。
一応先に確認するために俺に近寄ってきて耳元でささやくようにしてリオンの考えを聞く。
なるほど。
それならまだ可能性がありそうだ。
そう判断した俺はリオンの考えを実行するために目的地へと向かっていったのだった。
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