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守るために

「リオンもバルカと一緒に西に行くのか。……って、リオン殿って呼んだほうがいいのかな?」


「別に今までどおりで構いませんよ。私もこれまで通りアルス様と呼ばせてもらいますので」


「そうか、わかった。なら、これからもよろしくな、リオン。で、バルカと他の騎士もあわせての連合軍で1500くらいの数になるわけだけど、これで大丈夫だと思うか?」


「まだ西から来ているというアーバレスト家の総数がどれほどになるかわかりませんからなんとも言えません。が、間違いなく数的不利になるでしょうね」


「だよな。ていうか、東に向かったカルロス様はどうなんだ? 向こうは大丈夫なのか?」


「どうでしょうか。ウルク家も昨年の損害があるので多少はマシでしょうが、数的不利になる可能性が高いのではないかと思います」


「うーん。これってさ、正直詰んでるんじゃないのか? 別々の貴族家から同時に挟撃されている時点で終わってんぞ」


「その原因はひとえにアルス様にあるかと思いますよ。よくこれだけフォンターナ領を引っ掻き回しておいてそんなことが言えますね」


「しょうがないじゃん。状況に流されて仕方なく取れる選択肢をとってたらこうなってたんだから。全部あいつが悪いんだよ。俺を挑発してきた何とか君とかいう若い騎士が」


「ラフィン殿にも困ったものですが、すでに亡くなった方を悪く言うのも良くないでしょう。それで、これからどうするつもりなのですか、アルス様」


「どうするって、そりゃ戦うしかないんじゃないか? こっちに来ているアーバレストとかいう貴族率いる軍勢と」


「なるほど。では、そのための準備をはやくいたしましょう。まずは敵の数を調べ上げて、どこで迎え撃つかを早急に決めて陣地を作成することが先決かと思います」


「え?」


「……どうかしましたか、アルス様?」


「いや、リオンはアーバレスト家を迎え撃つつもりなのかと思って……」


「え、違うのですか?」


「そんなことをしたらこっちに被害が出るでしょ。俺は死にたくないんだけど」


「何を言っているのですか、アルス様? まさか、カルロス様の命令に背いてどこかに逃げるつもりなのですか? さすがにそれは駄目です。わたしはその考えに同意しませんよ」


「いやいや、そんなつもりはないよ、リオン。俺が言いたいのはアーバレスト家をわざわざ迎え撃つ必要なんかないんじゃないかってことだよ。俺がカルロス様から受けた命令はアーバレスト家の侵攻を食い止めろってだけだ。ってことは、向こうが攻撃するのをやめさせればいいってことだろ?」


「もしかして、アルス様。あなたが考えているのは守りに入らずに、ということですか?」


「そういうことだ、リオン。こっちからアーバレスト家を攻めよう。向こうの領地を引っ掻き回してフォンターナ領へと手を出す気にならなくさせればそれでいいだろ」


 バルカ騎士領の隣に新たに当主として君臨することになったリオンと移動しながら話をする。

 カルロスに命令されてさっそく移動を開始していた。

 バルカ軍と新たに領地を得たグラハム家が急遽兵を集めて、さらに西のアーバレスト家との領地の境に位置する騎士家を吸収するように移動していく。

 が、その途中、俺とリオンの中では今回の作戦について齟齬が生じていたようだった。


 リオンのやつはもしかしてフォンターナ領とアーバレスト領の境目に壁で囲った陣地でも作って籠城する気だったのだろうか?

 別にできないわけでもないが、俺にはそんなことはしたいとは到底思えなかった。

 なんといっても本隊となるカルロス率いるフォンターナ軍ですらウルク家に数的不利になる可能性すらあるのだ。

 こちらを助けるための援軍が存在しないような状況で俺達が守りを固めるのは怖すぎる。

 もしかすればそれがうまくいく可能性はあるのだろうが、失敗する可能性も同じくらい高い。

 であれば、俺は守るよりも攻めるほうを選択したい。

 こちらから打って出てアーバレスト家に損害を与える。

 それがうまくいき、相手が退いてくれるようなら、それから防御を固めればいい。


「そうこなくっちゃな。さすがはアルスだ。よくわかってんじゃねえか」


「バイト兄か。嬉しそうだな」


「そりゃそうだろ。なんで俺がいない間にお前は一戦交えてんだよ、アルス。ずるいぞ」


「ずるくはないだろ。別に俺は戦いたかったわけじゃないんだよ。状況的にしょうがなくだな」


「ウソつけ。お前が隣の騎士領を攻めたって聞いたときはみんなやっぱり、ついにやったかって大騒ぎになってたんだからな。お前ほど戦が好きなやつはいないんじゃないか?」


「冗談はよしてくれよ、バイト兄。俺は基本的に平和主義だよ。戦いなんかせずに平和に暮らしたいだけなんだって」


「わかったわかった。だけど、見直したんだぜ? お前が自分の女のために躊躇せずに戦ったって聞いてな。たまに何考えてんのかわかんねえときもあるけど、お前も男だったんだなってのがよくわかったよ」


「そりゃあ、そうだろ。つうか、バイト兄みたいに考えるやつが多いから引くに引けなくなったんだけどな。あそこで甘い対応していたら俺についてくるやつなんかいなくなるだろうし」


「当たり前だろ。自分の女も守れないやつに仲間が守れるかよ。で、今度はどこに攻めるんだ? 今回は俺もしっかりとついていくからな、アルス」


「いや、ぶっちゃけ全然考えてない。というかあんまりアーバレスト領のことを知らないし。どっかいいところはないかな、リオン。相手の急所で攻めやすくて、攻められたら相手も無視できず、でも落としやすそうなところってない?」


「あるわけないでしょう、と言いたいところですがアルス様ならあるいはというところがありますね」


「おお、そんなところがあるのか。どんなところだ?」


「要塞パラメアです。アーバレスト家が誇る難攻不落の要塞と呼ばれる場所でパラメアが作られてから突破されたことがないという評判付きですが」


「……どう考えても落としやすそうとは思えないんだが。まあ、とりあえず候補に入れておくか。もうすぐ斥候に出した連中も戻ってくるだろうし、情報が集まり次第もう一度作戦会議を開こう。ふたりともいいな?」


「おう」


「はい」


 こうして、迫りくるアーバレストへの迎撃戦のときが刻一刻と近づいていったのだった。

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