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再襲撃

「やっぱ軍の進軍速度ってのは遅いんだな。まだこんなところにいたのか」


「おそらくアルス様が夜襲を仕掛けたからではないでしょうか。警戒して進むといつも以上に進むのが遅くなるものですし」


「そうか。まあ、それならあの夜襲も十分意味があったってことだな。これなら事前に準備ができる。進軍が予測できるコースで一番いい場所を狙うぞ」


 前回、俺とバイト兄が威力偵察のような夜襲を行い、巨人の存在を把握した。

 そこで無理をせずに一度退却してからアインラッド砦で軍議を開いて、再び出撃したのだが、まだ思った以上に遠い距離にウルク軍がいた。

 どうやら警戒しながら進んでいるようで、進むスピードがかなり遅いようだ。

 これなら余裕を持って準備ができる。


「それで、どういう作戦でいくつもりなんだ、アルス」


「ああ、作戦は一応考えてきてあるよ、バイト兄。あの巨人とはまともに戦うとこっちにも被害が出るかもしれない。だから、罠にはめようと思う」


「罠? でも、一度攻撃されている相手を罠にはめるのは難しいんじゃないか? 向こうも警戒しているだろ?」


「だろうね。だからこそ罠にハマれば戦果が得られるってことさ。ま、今から言うから準備に取り掛かろうぜ」


 こうして、俺達はウルク軍の進行ルートに罠を仕掛けていったのだった。




 ※ ※ ※




「で、罠を仕掛けるって言っといて結局夜襲するのか、アルス」


「夜襲しないとは言ってない。ていうか、しょうがないでしょ。相手はこっちより人数が多いんだから」


「まあ、な。さすがに俺もあの人数相手に正面から普通に突撃しようなんて言わないさ」


 うーむ、バイト兄ならいいそうな気がしているんだが、さすがにそれくらいの分別はあったか。

 結局、俺は再び夜襲を仕掛けることにした。

 理由はある。

 今回の狙いはウルク軍にいるアトモスの戦士という巨人になる魔法を使うものを狙い撃ちすることにあったからだ。

 だが、ウルク軍はバルカ軍よりも圧倒的に人数が多い。

 普通に戦いを挑むと人数が多いところにあの巨人が加わってきて手がつけられなくなる。

 なので巨人だけを釣り出すことにしたのだ。

 そのための夜襲。

 寝静まったところに攻撃を仕掛けて敵軍を叩き起こす。

 そして、できれば巨人だけを引っ張り出して仕留めようというものだった。


「見つけた。あそこにアトモスの戦士がいるぞ」


「よく分かるな、アルス。双眼鏡があるっていってもまだ巨人化してない普通の人間と同じ姿なのに」


「簡単だよ、バイト兄。眼に魔力を集中させれば魔力が見えるからね。前の夜襲のときにアトモスの戦士の魔力を実際に見てるし間違えようがないさ」


 数千人いるウルク軍の中にいる一人を狙い撃ちにする。

 そのためには最低限、敵陣のどこにターゲットがいるかを知っておく必要があった。

 だが、それは思った以上に簡単にわかった。

 それはバイト兄に言ったように、眼に魔力を集中させればその人から出ている魔力が見えるという特性があるからだった。

 グランの言うように戦場にて傭兵として働いているらしいアトモスの戦士は明らかに他とは違う魔力量をしている。

 また、魔力量が多いのはもちろんだが、魔力の質も高い。

 ひと目見てすぐに分かるので、見間違えるということもないだろう。


「気をつけろよ、バイト兄。あの巨人の魔力はやべえぞ。俺やバイト兄が二人がかりで戦っても勝てないと思う。作戦通りにむちゃだけはしないようにな」


「そんなにやばいのか?」


「ああ、魔力の量も質もこっちを圧倒している。ただ単にでかくなるだけだと思ってたら死ぬぞ」


「わかったよ。気をつけるさ」


「よし、夜襲は前回よりもさらに時間を遅らせて出よう。早朝に近いくらいのほうがいいだろ」


 すでに準備は整っている。

 日が傾きかけてこの日の進軍を停止し野営の準備に入ったウルク軍の中にいるアトモスの戦士の居所を確認し終えた俺とバイト兄は偵察を終了してバルカ軍へと戻っていったのだった。




 ※ ※ ※




 日が沈んで夜になり、さらに月が頭の真上を越えてからも移動し続けたころ、ようやく俺達は動きはじめた。

 この日は月もだいぶ欠けてきており雲も出ている。

 前回夜襲を仕掛けたときよりもだいぶ暗いがそれでもヴァルキリーは問題なく移動してくれた。


 ウルク軍への偵察は俺とバイト兄が2人だけで行い、敵の偵察部隊には見つからないように気をつけていた。

 目視での確認とともに魔力的にもあたりを確認していたのでこちらのことは気づかれていないと思う。

 だが、おそらくは夜襲を警戒したウルク軍では狐化した騎士が見張りをしているに違いない。

 どんなに音を消して近付こうとも敵陣に入り込むまでに見つかる可能性が高い。

 なので、今回は察知されないであろう距離から一気にヴァルキリーが駆けていって夜襲を行うことにした。


「見えた。やっぱり前よりも向こうの動きが遅れている。このまま、アトモスの戦士がいる場所に突っ込むぞ」


 狙い通り遠距離から一気に接近したことによってウルク軍の初動が遅れている。

 だが、向こうも警戒しているだけあって、前回よりも寝ずの番を多く配備していたようだ。

 動き出しが遅れてはいるが動いている人数そのものは多い。

 対してこちらは一気に夜襲を仕掛けるために前回同様に騎兵だけで攻撃を仕掛けている。

 囲まれるとまずい。

 さっさとアトモスの戦士をおびき出す必要がありそうだ。

 こうして再び暗闇の中での戦闘が始まったのだった。

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