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精霊を求めて

「じゃあ、行ってもいいんだな、シオン?」


「はい。私と同じく族長を務める兄とも話はついています。ぜひ、私と一緒にトラキアの森へと行きましょう」


「わかった。じゃ、さっそく行くとしようか」


 魔導列車アルフォンス・バルカラインをひとまずは地上で走らせ、地下は水道を作ることとなった。

 が、あくまでもそれらは今後の方針であり、今すぐにというわけではない。

 地下水道のほうはラッセンが実際にあちこちに水の通り道を作り、その効果を確認しながらさらに改良をしていくこととなるだろう。

 しかも、いずれは地下通路に流用できるように構造なども考えながらだ。

 それがうまくいき、呪文化するとしても完成するまではそれなりに時間がかかるだろう。


 そして、魔導列車のほうもそうだ。

 機関部は制御の魔法陣を組み込んだ駆動車が列車全体を引いていくことになる。

 が、それはあくまでも本当に根本的な部分だけだ。

 アイが用意した駆動車の設計図というのは、精霊石を用いて回転するコマのようなものなのだ。

 それを列車として使うには、コマの棒部分に歯車などを介して、車輪部分を回す機構なども必要になる。

 それらはこのオリエント国で作っていく必要がある。


 というのも、実際に魔導列車が運用されているバルカラインとこのオリエント国では手に入る物が異なるからだ。

 歯車などはどうしても摩耗するし、その他の消耗品の数も多くなってしまう。

 なので、ガリウスなどはオリエント国周辺で手に入れやすい素材を使って、故障があればすぐに修理できるように魔導列車を設計しなければならないのだ。


 ただたんに、見た目だけにこだわるわけにはいかない。

 列車というのはとにかく実用性が第一に来るものであるからだ。

 なので、最高級の素材を使って最高の品を作る芸術性よりも、比較的安価でありながらも耐久性があり、どこででも交換しやすい物を使って魔導列車を作らなければならない。

 そのために、どうしても魔導列車の完成には時間がかかってしまう。


 まあ、それでもたいていの部品はバルカ鋼でいけるだろうし、今年中には魔導列車アルフォンス・バルカラインの一号機が完成するだろう。

 そのときを待つばかりだ。

 が、なにもしないというのはもったいない。

 なので、俺は新たな力を求めて動き始めたのだった。


 現状で言えば、魔力はある。

 ベンジャミンの魔力を取り込んだことで、十分すぎるくらいだろう。

 なので、魔力以外の力として俺が目を付けたのは精霊だった。


 吸氷石や精霊石の内部にいる自然そのものとも言われる精霊の力を使役した。

 俺の場合はベンジャミンとは違って、どうやら一番力の弱い精霊になるようだ。

 使役する際の魔力の流れを調整すれば、また少し違うことにはなるのかもしれないが、これはこれで都合がいい。

 氷の狼などの姿をしていなくても、ただの光の玉のような存在でもしっかりとした精霊には違いないからだ。


 現在、俺が手に入れている精霊は三種。

 吸氷石から使役した氷精。

 精霊石から使役した土精。

 そして、炎鉱石から使役した火精だ。


 だが、この世には他にも精霊が存在する。

 そして、間違いなくいると断言できるのが、カイル兄さんの契約している木精だ。

 木の精霊である木精の力をこれまでにもカイル兄さんは使っていたからだ。


 つまり、俺が新しく手に入れようと考えたのは、その木の精霊である。

 これは木とはいえども、植物全体に影響を与える精霊だ。

 カイル兄さんは木精の力を戦いに使う以外にも、たとえば品種改良に使ったりしたそうだ。

 バルカ米も、木精が急激に成長させた米を選別しながらさらに交配して育てていったらしい。


 そんな木精を俺も手に入れる。

 が、このオリエント国にはカイル兄さんが木精と契約した世界樹と呼ばれる古木はなかった。

 だが、ふと思い出したのだ。

 似たように、変わった木があるということを。


 それが、シオンのいたトラキアの森だ。

 オリエント国で影の者として働いていた刺客たち。

 その影の者たちはオリエント国首都の近くにある森で生活していた。

 生まれた時からその森で育ち、大きく成長した際に森の外にでて影の者として活動するのだ。

 そんな場所が街からそう離れていない場所にあった。


 にもかかわらず、オリエント国の人間やその他の国の者たちの誰もがトラキアの森には入れなかったのだ。

 いや、森には入ることができる。

 だが、森の奥までは進めなかったのだ。


 どうも、森全体が侵入者を外に出す働きをしていたらしい。

 森に入った者は知らず知らずのうちに方向を間違えて、自分から外に出てしまう。

 それは森の中の植物が移動し、景色そのものを変えてしまったりしたからだ。


 なぜそんなことができるのか。

 それは森の一番奥にあった大木が理由だろう。

 トラキア一族はその大木を御神木としてありがたりながらも、木に自分たちの家を作って生活していたりもした。

 そして、そういう生活をすることで、そこで育った者は特殊な魔術の使い手になったりもしたのだという。


 あまりにも変わった木がそこにはあるのだ。

 迷いの森として外敵の侵入を阻み、なおかつその森に受け入れた者の生活を許し、あまつさえ力をつけることができる。

 そんな不思議な木であれば、まず間違いなくトラキア御神木には精霊が宿っているはずだ。


 そう考えた俺は婚約者の一人であるシオンとともに、久しぶりにトラキアの森へと赴くことにしたのだった。

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