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魔法の指輪

「これ、すごいですね。まるで自分がとんでもない大魔導師になったみたいですよ、アルフォンス様」


「大魔導師ラッセンか。かっこいいじゃないか」


「いやいや。これが自分の力じゃないということはちゃんと理解しているつもりですよ。この魔道具のおかげだということは嫌でもわかりますから」


 新バルカ街にいたラッセン。

 そのラッセンが俺の姿を見て、声を上げる。

 【地質調査】という呪文を完成させたラッセンだが、俺はすぐに次の魔法の開発にとりかかってもらうように頼んだ。

 だが、呪文化というのは気の遠くなる作業の繰り返しでもある。

 同じことを何万回という数えきれないほどの回数を繰り返すのは精神的にもきつい。

 なので、やる気を出すように贈り物を渡したのだ。


 それをラッセンは非常に喜んでくれたようだ。

 嬉しそうにして、顔が緩んでいる。

 そこまで喜んでくれるというのは、贈り物をしたこちらもうれしい。

 それに、これでやる気を出してさらに穴を掘る魔法を開発してくれればさらにいいしな。


「これって、精霊が宿っているんですか?」


「そうだ。緋緋色金という特殊な金属に土の精霊を宿して、さらに大量の魔力をぶち込んで作った指輪だ。それをつけていたら、土の魔術がやりやすいだろ?」


「ええ。全然違いますよ。なんていうんでしょうか。まるで、こちらがやりたいことを指輪の中の精霊が手助けしてくれるというか、勝手にやってくれるというか、そんな感じですね。同じ魔力でも疲れ方が全然違いますし、効果もはるかに大きくなりますよ」


 ラッセンに渡した魔道具というのは、新しく作ったものだ。

 ブリリア魔導国第一王子のベンジャミンが白竜と戦った際に失った品を俺が回収した、ということにしてもらい受けた魔導鞄。

 その鞄の中に王級魔装兵の素材である緋緋色金の破片が残っていたのだ。

 白竜との戦いで使用していた王級魔装兵のものなのか、それとも別のものの欠片が魔法鞄に混ざりこんでいたのか。

 それは今となっては分からない。

 が、なんにせよ霊峰で失ったと思った緋緋色金がわずかとはいえ手に入ったのだ。


 小さな破片として魔法鞄に入っていたそれは、魔装兵の素材としては全く量が足りなかった。

 なので、魔装兵として使うことはできなかったが、魔道具の素材としたわけだ。

 教会で人々に渡している腕輪と同じように【自動調整】の魔法陣が描きこんである。

 そのため、ラッセンの右手中指にぴったりと合う大きさの赤い色合いの指輪が輝いていた。


 もちろん、わざわざ貴重な緋緋色金を使用した指輪が【自動調整】が加えられただけの魔道具ではない。

 その特殊な金属の中に、俺がベンジャミンの魔術として手に入れた【精霊使役】の力で精霊石から取り出した土精を入れているのだ。

 王級魔装兵の場合は、その精霊が意思を持つことで高位精霊となっていた。

 が、この緋緋色金の破片を使った指輪ではそこまでの効果は発揮できなかった。


 しかし、そこにさらにもう一つの魔法陣を加えることで性能が飛躍的に増した。

 それは、制御の魔法陣だ。

 オリエント魔導組合の魔道具の性能を一段も二段も引き上げることになったその魔法陣はアイの魔法陣を利用したものでもある。

 つまりは、土精が込められた緋緋色金の指輪の制御をアイにさせることとしたのだ。


 制御の魔法陣を加えたことで、アイからの魔力の供給もある。

 そのうえ、土の精霊の力をアイがある程度制御することも可能になった。

 その結果は、指輪の装着者の魔術の安定というのが一番影響があるのではないだろうか。

 ラッセンの言うとおり、指輪をつけていない時よりも効果が上がったり、消費魔力が減ったりしているようだが、なによりも発動した魔術の効果が自動で一定になるように制御できていることが重要だ。


 アイが土の魔術の効果に干渉しているらしい。

 ラッセンやオリバが魔法を創り上げるのに時間がかかっていたが、それは毎回一定の効果を繰り返し発動し続けることが難しかったことが関係している。

 そりゃそうだろう。

 自分では同じようにやっているつもりでも、毎回出来上がるものは微妙に違う、なんてことは当たり前にあるからだ。

 ぶっちゃけ、人間だったら誰でもそれがあって当たり前で、しょうがないと思う。

 が、魔術の呪文化のためにはどうしても発動した魔術の効果を一定にする必要があった。

 それをこの魔道具は自動的に制御して行ってくれるというわけだ。


「これなら、新しい魔法の開発も速くできそうかな?」


「そうですね。魔導列車アルフォンス・バルカラインでしたっけ? 結構大きな広さの横穴を掘る魔法を作れって言われたときには無理だと思いましたけど、これがあればなんとかなると思います。期待していてください、アルフォンス様」


「頼んだよ。頑張ってくれよ、ラッセン」


 魔導列車は結構縦横高さが大きいからな。

 今までのラッセンだと、横穴を開ける魔術をひたすら繰り返すのは魔力量的にも厳しかった。

 が、それがこの指輪のおかげで解決しそうだ。

 これなら、そう遠くないうちに新しい魔法ができるかもしれない。

 それに備えて、ガリウスと魔導列車について話したり、アイとどこに線路を引くか検討したりして過ごしたのだった。

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