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取り込んだ力

 宙に浮かぶ光の玉。

 攻撃力をほとんど持たないような力の弱い精霊。

 吸氷石内を俺が魔力で細かく砕いて吸収するようにしたからか、そんな最弱の氷精たちを俺は使役することに成功した。


 こいつらは狼型などのように精霊単体での戦闘能力はないかもしれないが、かといってなんの役にもたたないわけではないだろう。

 光る氷精がいるだけで、吸氷石がなくとも周囲の寒さを吸い取って吸収してくれるからだ。

 それに、氷精たちに魔力を渡せば周囲の雪を操ることもできる。

 地面に積もる雪を氷の槍などのようにして相手を攻めることもできるわけだ。

 だが、これだけでは足りない。

 なので、俺はさらに別のものから力を得ることにした。


「ラムダ、そいつを俺に渡せ」


「これですか、アルフォンス様? はい、どうぞ」


「ありがとう」


 バイデンの町から俺たちと一緒にここまでやってきたラムダ。

 そのラムダが手に持っているものを受け取る。

 それは、ベンジャミンが白竜に負けて失ったことになっていたものであり、すでにその所有権は俺にあるものだった。

 魔装兵器の核。

 アトモスの里で手に入れた大きめの精霊石に魔法陣が描かれたそれをラムダから受け取った。


 その精霊石にも魔力を流し込む。

 通常であれば魔法陣が描かれているそれは魔力に反応して岩の巨人になるはずだ。

 だが、内部に入り込んだ魔力が精霊石内を蹂躙するように咀嚼する。

 そして、その中にある精霊石の力を吸氷石の時と同じように取り込んでいく。


「これが土精かな?」


 圧倒的に濃密な魔力によって精霊石内にいたであろう精霊を細かく砕いて自分の体に取り込み、そしてそれを表出させた。

 その精霊を見ると氷精は少し青みがかっているのにたいして、薄い土色というか茶色っぽい光の玉となった。

 土の精霊ってことだろうか。

 こいつを使えば、アルス兄さんのように地面を自由に変形させて、一日で大規模な要塞なんかを作れるようになるかもしれないってことになるだろうか。


 だが、これでもまだ足りない。

 さらに追加でもう一つ、今度は俺の魔法鞄から精霊が宿っていそうな物を取り出した。


「それはなんですか、アルフォンス様?」


「そうか、ラムダは初めて見るかもな。ま、見てれば分かるよ」


 俺が取り出したものというのは炎鉱石だ。

 オリエント国にあるラッセンの獄炎釜。

 大地の割れ目から超高温が発せられる場所の、その地下深くからノルンによってもたらされた他では手に入らない鉱石だ。

 この炎鉱石を使って作られる九尾剣は魔力に反応し炎の剣を作り出すことができる。

 あるいは、炎鉱石を使って作られた炉は通常のものよりもはるかに高温が出せる出力の高い炎高炉となる。

 そんな炎鉱石に俺は魔力を流し込み、その内部から力を自分の体に取り込んでいった。


「こいつは火精ってとこかな?」


 どうやらうまくいったようだ

 この炎鉱石にも精霊が宿っていたのだろう。

 炎鉱石から取り込んだ最弱の精霊。

 氷精や土精とも違う少し赤みがかった光の玉が新たに俺のものとなった。

 火、あるいは炎の精霊である火精を手に入れることに成功した。

 これで三つの属性の精霊を使役できたことになるのだろうか。


「ラムダ、そっちも俺に」


「えっと、これですね。重たいんで気を付けてください」


「大丈夫だよ。俺はラムダより力あるしね」


「あ、そうか。アルフォンス様は子どもなのにすごい力持ちですもんね。はい、どうぞ」


 そして、そんな三属性の精霊を手に入れた俺は、今度はラムダから王級魔装兵を受け取った。

 ベンジャミンがブリリア魔導国の迷宮から持ちだした魔物だ。

 ベンジャミンはこいつを使役しつつ、その体に精霊を取り込ませていた。

 その時は、土と氷の二属性だ。

 そして、その二つの精霊の力を手に入れた王級魔装兵は人造高位精霊としてベンジャミンのかわりに魔装兵器を操り、白竜と戦った。


 今はその王級魔装兵も力を失っている。

 もともとは魔物と分類されてはいるが、死んだように動かない。

 もしかしたら、魔導迷宮内では迷宮核によって魔力が満たされた環境で常に魔力補給がなされて動いているのだろうか。

 それが、迷宮の外に持ち出されたために魔力が無くなり自立して動けなくなっているのかもしれない。

 が、ベンジャミンが使役してさっきまで動いていたので完全に機能停止しているわけではないはずだ。

 白竜と実際に戦っていたのも土と氷でできた魔装兵器だったので、こいつが損傷を受けたわけではないしな。


 そんな魔装兵器に俺が魔力を送りこむと、ビクンと体が反応したように動いた。

 しかし、完全に起動しきる前にさらに内部に魔力を送りこむ。

 吸氷石や精霊石、そして炎鉱石にしたときのように俺の魔力が王級魔装兵の中を蹂躙しながら咀嚼し、吸血するようにしていく。

 さきほどまでの物言わぬ石のときよりも抵抗を感じる。

 これが魔装兵という魔物だからだろうか。

 さっきまで動かなかったとはいえ、こいつも一応自我があるのかもしれない。

 が、その抵抗を魔力で強引に押さえつけるようにしながら、分からせる。

 どちらが上か、徹底的に示すように力の差を示して、忠誠を誓わせるように魔力での力比べが王級魔装兵の体の中で行われた。


「よっし、成功だ」


 そうして、その戦いに勝ったのは俺のほうだった。

 ビクビクと体を震わしながら抵抗していた王級魔装兵だったが、ついにその体が痙攣を止めた。

 そうして、次はむくりと起き上がり、片膝をつきながら俺に頭を下げる。

 緋緋色金と呼ばれる特殊な金属でできた鎧の魔物。

 俺に忠誠を誓ったその王級魔装兵に、俺は自分の周りで宙に浮かんでいた三つの属性を持つ精霊たちを送り込んでいった。

 それにより、ふたたび王級魔装兵は精霊の力を手に入れることとなった。


 こうして、ベンジャミンの血から力を手に入れた俺は、三属性の力を備えた高位精霊化した王級魔装兵を手駒とすることに成功したのだった。

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