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最終確認

「あ、お久しぶりです、アルフォンス様。そちらの方は? 前に来た時にはいなかった人ですね」


「こちらはブリリア魔導国の王子であるベンジャミン殿下だ。失礼のないようにな、ラムダ」


「……え、魔導国の王子様? な、なんでそんな人がアルフォンス様と一緒に?」


「霊峰に行くんだよ。魔物を倒すためにな」


 オリエント国を出発した俺たちはヴァルキリーの脚で数日駆けてバイデンの町へとたどり着いた。

 普通に歩くと一月以上はかかる距離だが、相変わらず速い。

 だが、ここからは時間がかかるかもしれない。

 なにせ、この先は魔境とも呼ばれる土地だからだ。

 バリアントへと向かうのとはまた少し違う方向のエルメラルダをさらに越えていくことになる。

 その前の最後の休憩場所としてバイデンの町で疲れを落とすことにした。


 この町はバイデンが治めているが、最近ではラムダの影響力がかなり増しているらしい。

 ラムダは金貸しでかなり儲けているみたいだしな。

 そんなラムダのもとで食事を取り、今後について話をする。


「このバイデンの町からエルメラルダに入り、さらにその先の山をいくつか越えていくと白竜が住まう山があるようです。雪と氷で閉ざされた極寒の土地ということで、人が入り込むのは容易ではないでしょう。そこで白竜と戦うことになりますが、覚悟はいいですか、ベン?」


「もちろんだ。だが、そんな環境で戦うためにはさすがにアルの持つ吸氷石がないと無理だろう。それは貸してもらえないのかい?」


「この吸氷石は貴重すぎて渡せませんよ。ただ、現地まで行ってしまえば大丈夫のようです」


「それはどうしてだい?」


「白竜は氷と雪を統べる竜とのことですが、住んでいる場所には吸氷石がたくさんあるようなんですよ。つまり、極寒の土地ではあるんですけど、行きついてしまえば寒くない場所ということです。なので、問題なく戦えるでしょう」


 白竜はアイが四枚羽で存在を確認した竜だ。

 霊峰の奥深くに住まうが、その白竜が寝ている場所にはたくさんの吸氷石が確認されている。

 吸氷石は周囲の寒さを吸収するという不思議な性質がある。

 そのため、白竜の寝床にまでいければ寒さは問題ではなくなるとのこと。

 もちろん、そこに行くためには吸氷石がなければ到底到達できないので、今まであまり姿が確認されていなかったようだ。


 ちなみに、俺の今回の目的の一つにはその吸氷石も含まれている。

 冬場に寒さなく行動可能になる吸氷石は軍を動かすだけではなく、街に設置すれば人の活動量も増やせるからな。

 どれだけあっても困ることがない。

 なるべく多く魔法鞄に詰め込んで持って帰ろうと思う。


「竜の住処か。もしかして、何体もの竜が一緒に寝ているということかな?」


「竜の生態はよくわからないんですけど、今回向かう先にいるのは一体だけのようです。なので、戦っている最中に何体もの竜が集まってくるということはないと思いますが、まあ、行ってみないとわかりませんよね。なにごとも例外はつきものですし」


 人が入り込むことすら困難な場所に住んでいる竜。

 そんな竜のことをなぜアイは知っていたのか。

 ベンジャミンでなくとも誰だって疑問に思うことだろう。

 だが、四枚羽という飛行装置で上空から情報を得ているということはさすがに言えないので、適当な説明に終始している。

 そんなこちらの説明であってもベンジャミンは疑うことなくしっかりと聞いてくれていた。


 それは本当に正しい情報なのか、と疑うことも大切なことだろう。

 だが、協力を求めてそれを受け入れたこちらのことを考えてか全面的に信用してくれている。

 その点は普通に助かるしうれしく思う。

 なので、ここ数日、一緒に行動して俺のベンジャミンの評価は結構高かったりする。

 初対面の相手でも信用してその意見を聞くというのはなかなかできないことだと思うからだ。

 これがこの人の生来の性質であるというのであれば、案外王になっても仁政を施すのではないだろうか。


「吸氷石、か。アル、頼みがある。できればでいいんだが、白竜の住処に行くまででどこかに吸氷石がある場所はないかな? 試してみたいことがあるんだ」


「試してみたいことですか?」


「ああ。白竜と戦うための準備といったところかな。さすがに相手が大物だからね。こちらも万全の準備を整えてから挑みたい」


「……わかりました。ただ、確認しておきますが、今回の道程で手に入れたものは白竜由来のもの以外はすべてこちらの取り分であることをお忘れなく。途中にある吸氷石も回収するならこちらのものとさせていただきますからね」


「もちろん、それは承知しているよ。案内してくれるだけでいい」


「ほかに白竜と戦うための準備というのはなにか必要ですか?」


「いや、それくらいで十分だよ。あとは道を示してくれれば問題ない」


 吸氷石がそんなに重要なんだろうか?

 白竜と戦うために必要なのだということは、ベンジャミンの戦い方に関係していることなのかもしれない。

 ここまでくる間は特に誰かに襲われるといったこともなかったので、いまだにベンジャミンの強さは測れていない。

 が、その一端が垣間見れるかもしれないな。


 とりあえず、これで予定は決まった。

 エルメラルダを越えて、途中で吸氷石がありそうなところを通ってから白竜の住処へと向かう。

 ベンジャミンがそこで白竜に勝つか負けるかは分からないが、その戦いぶりをしっかりと見させてもらおう。

 どんな戦いをするのかわくわくしながら、ラムダの用意した食事を食べ終え、翌日には霊峰へと入っていったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばスレイヤーズに『白竜の山』という話がありましたが、まさかあの手の落ち(ギャグ)では…いやいや(^_^;)
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