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増える結婚相手

「それはそうと、アルフォンス様に提案があります」


「ん? どうしたんだ、アイ? アイからの提案って珍しいけど、なに?」


「私からも結婚を申し込みます」


「……は? アイが結婚するのか? 誰と?」


「アルフォンス様とです」


 継承権に絡めた財産権について、各国の仕組みとあわせて今後オリエント国はどういう方向にもっていくかをアイと話し合っていた。

 その話が一段落ついたところで、急にとんでもないことを言われた。

 アイが俺に求婚してきた。

 ちょっと、予想外のことすぎてなんて返していいのか分からない。


「……えっと、なんでだ? 俺とアイは子どもとか作れないでしょ」


「もちろんです。私には子を産む機能は備わっていません」


「じゃあ、結婚する意味ってあるのか? さっきまで話していた財産のことだったら、アイは寿命ってないんだから心配いらないでしょ」


「そこが問題なのです。私は普通の人間ではありません。ですが、現在はオリエント国の一級市民権を持つ戸籍を手に入れ、議員として選出されて議長を務めています。それを今後も続けるのであれば、アルフォンス様と婚姻関係を結んでおくことは必要なのではないかと考えます」


「アイが議長でいるために? もともと、慣習的にも議長職は議長になった人が死ぬまで続けることになっていて、あとでそういう法整備もしただろ? だったら、アイは今後ずっと議長で居続けられるはずだけど?」


「法という決まりでは確かにそうです。が、人は異質な存在を拒絶するものであると考えます。私のように外見が変化しない者がずっと議長にとどまっていた場合、私を議長として認め続けていくかどうかは考慮の余地があるでしょう。おそらくは、どこかの時期で人ではないことを理由に退任させられるのではないかと考えます」


 なるほど。

 まあ、そういうこともあるかもしれない。

 アイはきれいな女性の姿をしていて、真面目に働くし、不正の類もしない。

 ただひたすらに仕事をしまくっていて、今のオリエント国はそれなりにうまくいっている。

 なので、オリエント国議会をまとめる議長のアイの人気は高い。


 が、きれいな女の人が実は人間ではなかったとわかったら、普通の人はどう思うだろうか。

 以前、話に合った不気味の谷現象ではないけれど、人のように見えて人ではない相手というのは無意識で気味悪く思うかもしれない。

 そうなったときにアイは議長で居続けることができるかどうか。

 そればかりはなんとも言えない。


「でも、それが俺との結婚になんの関係があるの?」


「アルフォンス様はどんな怪我も、失われた手足さえも治すことができる【回復】の使い手です。奇跡の子、と呼ばれることもあると認識しています。そのアルフォンス様の【回復】ならば、おそらくは寿命を伸ばすことも可能でしょう」


「まあ、そうかもね。っていっても、毎日のように【回復】をかけ続けて、しかも何十年も続けないと効果が確認できないから、俺の【回復】が寿命延長できるかどうかって実際は分かんないんだけどさ」


「ですが、できる可能性がある、というだけでも十分です。アルフォンス様はエリザベス様とご結婚された際にはできるだけ【回復】を使っていただきたいと考えています。そうして、エリザベス様が若さを保つことができれば、同じくアルフォンス様と結婚した私の外見に変化がなくとも、周囲からは納得が得られます」


「あー、なるほど。そういうことか。確かにそれならアイの不老性をごまかせるかもしれないね」


「はい。また、ローラ様からご指摘もありましたが、ミーティア様との結婚のほかにも、ユーリ様との結婚も推奨いたします」


「おいおい、さらに結婚相手を増やすのかよ。ってか、なんでユーリまで?」


「アルフォンス様との結婚ができる女性の条件設定のようなものです。ミーティア様は【にゃんにゃん】という魔法を持つため、ユーリ様は【うさ耳ピョンピョン】を持つためにアルフォンス様と結婚できたということにいたしましょう」


「ふたりが独自の魔法というこれまでにない新しい呪文を作ったからってこと? でも、それがアイに関係するのか?」


「はい。シオン様は公表していませんが未来予知の占いという魔術を行使できます。そして、私は【分身】の魔術を持つことにいたしましょう。新バルカ街やローラ様の秘書、あるいはバルカ教会での仕事などで私のほかの端末が同時に複数個所で目撃されることも、人間としての存在に疑問を持たれかねない一因です。しかし、それを利用して、体を分身できる魔術を持つことでアルフォンス様との結婚相手に認められたとされてはいかがでしょうか?」


 ふーむ。

 一応、理屈は通っているか?

 けど、シオンの占いなんて知る人はほとんどいないからな。

 隠れ蓑にするには弱い。

 まあ、だからこそ、【にゃんにゃん】や【うさ耳ピョンピョン】のように知名度がものすごく高い魔法の造り手たるミーティアとユーリと結婚させようというわけだろう。


 ってことは、なにか?

 俺は十五歳くらいになったら婚約していたエリザベスと結婚して、その後にシオンとミーティア、ユーリとアイの四人とも結婚することになるのか?

 それは俺の人間性が疑われたりしないんだろうか?

 ヴァンデンブルグ家もなにか言ってきそうな気がするが、どうだろう?


 まあ、けど、アイが実は人ではないということはいつまでも隠し通せるものではないだろう。

 そのための対策として結婚が利用できるなら、確かにそれを使わない手はない。

 ……エリザベスと相談してみるか。

 シオンのときのようにまずはエリザベスにアイとの結婚が認められないと話が進まないだろうしな。

 あとは、ユーリ本人とその保護者であるゼンとも話し合いは必要だろう。


 こうして、俺は瞬く間に複数の女性と結婚をたくらむ、ませた子どもとして周囲から見られることとなったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「英雄、色を好む」の格言の 通り対外的に分かり易い行動ですしね。 屋敷に、元高級娼婦を大勢囲っている様にみえるしね。
[気になる点] アイから解決策を持ち掛けてきたか。 なるほど。
[一言] 好色王になる条件が揃ってしまった! これから自分の意思は関係なく増殖だな。 ハーレムは女性に囲まれるのを癒しとか趣味にできる人ならそんな苦痛では無いらしいけど…自分の時間を最優先するヤツには…
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