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制度の違い

 エリザベスやセバスから話を聞いて、おおよその仕組みを理解した。

 といっても、請求権関連の話は俺が想像した以上に複雑みたいで、まだまだ分からないことも多い。

 が、今のところは別の国の話だしな。

 俺とエリザベスの間に子どもができた時に関わってくるかもしれないけれど、まだ先の話だ。


 頭の中で今回知ったことをまとめていく。

 ヴァンデンブルグ家は伯爵領を所領として持っており、ブリリア魔導国の王家に仕える貴族である。

 そして、その伯爵領にはいくつもの子爵領や男爵領、騎士領などの下位貴族の領地がある。

 つまりは、王と貴族の関係が、伯爵領内にもあるということだ。

 伯爵領が小さな国といってもいいくらいには力がある。

 小国家群の中の国ひとつでは向こうの伯爵領にも負けるくらいの国力差があると言えばいいだろうか。

 そんなふうに、上下で主従関係という契約を結んで成り立っているのがブリリア魔導国というわけだ。


 それに対して、帝国と呼ばれる別の大国もある。

 そちらも基本的には同じような仕組みをしているらしい。

 ただ、帝国は内部に複数の王国が存在している。

 いくつもの王国があり、王族がいて、さらにその王たちの上に皇帝と呼ばれる者がいるのだ。

 が、不思議なことに皇帝となれる者はたくさん存在するのだとか。


 どうも、帝国には選帝侯とかいう諸侯が存在しているらしい。

 現在の皇帝が死去し、その跡継ぎがいない場合には、選帝侯という特別な地位にある王族や貴族などの有力諸侯が皇帝を選ぶための選挙をするのだとか。

 そうして、選ばれた皇帝が帝国の一番上に立つことになる。


 が、だからといって一番強い奴が皇帝になれるわけでもないのだとか。

 むしろ、いろんな特権を持つ選帝侯たちは自分たちの上に目障りな存在を作りたくなくて弱い皇帝を擁立することもあるのだそうだ。

 皇帝になっても帝国全部の土地が自分のものになるわけでもないらしい。

 極端な話で言えば、小国程度の国力しかない田舎貴族が皇帝に祭り上げられる可能性だってあるのだろう。

 まあ、現在の皇帝は別にそこまで弱いわけではないらしいけど。


「世の中にはいろんな国の仕組みがあるんだな、アイ。初めてオリエント国に来た時も驚いたけど。こっちは王がいなくて選挙で選ばれた議員が議会で国を動かしているって聞いたときには信じられない気持ちになったからな」


「人が集団で生活するには実態にあった秩序が必要です。そのために、その土地や風土、風習や習慣、そして歴史によってさまざまな政治体制が求められるのだと思います」


「まあ、そうなんだろうね。エリザベスたちからすれば、フォンターナのように継承権第一位の男子が家督を総取りするのは信じられないって感じみたいだし。東方だと力のある女性もいるからね。場合によっては女性が家督を継ぐこともあるらしいからな」


 そのへんは魔法の継承という問題が関係しているんだろうな。

 もともとは初代王から認められた貴族たちというのは、ほとんどが魔法使いだったらしい。

 そして、貴族というのは魔法を継承する家を指すこととなっていた。

 魔法は女性では継承できないという特徴があるゆえに、当主となるのは男子のみになっていた。

 それを問題視する人はいなかっただろうし、男子継承が自然な流れとなったんだろう。


 ただ、東では魔法の継承はなく、純粋に家の継承が求められた。

 が、家を継ぐ際に兄弟間で争うこともあったりで、新しい当主が誕生した際にはそのほかの兄弟たちは不審死することも多かったらしい。

 そんな状況で唯一の男子となる新当主が病気などでぽっくりとこの世を去ったら大変だ。

 お家断絶となってしまう。


 そのために、基本的には男子優先ではあるけれど、女性が当主になることも認められているのだそうだ。

 家を残すために女性にも請求権が認められており、男子がいない場合に限り、家を継ぐことができる。

 そして、その女性がどこかの家から婿をもらって子をなした際には、その子には請求権があり、家を次代につなぐことができる。

 なので、完全に男性社会になっているフォンターナ連合王国はブリリア魔導国から見ると異質なものに映るらしい。


「けどさ、強い国を作るって言うなら分割相続はまずいよね? 王家ですら、代替わりのたびに分割されるんでしょ? 完全な等分ではないみたいだけどさ」


「はい。領地が分かれることは力の低下を免れません。強い国を作りたいのであれば、違った仕組みのほうがよい場合が多いのではないかと考えられます」


「だよね。だったらさ、オリエント国は長子相続にしたほうがいいんじゃないかな? そういう法を作るように議会に提案してみるってのはどうだろう?」


「議題にあげることは可能でしょう。ですが、賛同が得られるかどうかは不確定です。議員となっている者は必ずしも長子であるわけではないですので。また、議員を選出する一級市民権を持つ者も長子以外のほうが多いので、反感を買う可能性が考えられます。その議題に賛成票を投じた議員が次の選挙で落選する可能性を考慮すると、賛成票がどれほど得られるかは不明です」


 強い国を作るために分割相続はやめたほうがいいんじゃないか。

 そう思ったのだけれど、アイが言うには反発が大きくなる可能性が高いみたいだ。

 まあ、そりゃそうか。

 今までだったら親の財産が兄弟みんなで分けられて受け取れるのに、それが新しい法が成立すれば長男以外は分け前が無くなることになるんだからな。

 そんな法の内容を聞けば、たいていの奴は反発するだろう。


 ただ、新バルカ街にはバルカ教会がある。

 ほかの街に作った教会の建物だけではなく、継承の儀が行える大教会とも本教会とも呼ばれる施設がある。

 あそこで結婚式を挙げて結婚した者は継承の儀の効果で、その夫婦間から産まれる子には継承権というものがついてくる。

 今のところ、ほかで継承の儀ができる場所はない。

 ゆえに、名付けによって東方に広がっている魔力のつながりは、いずれ今の世代が死ぬころになれば新バルカ街の人間にその魔力が集まることになるだろう。


 それくらいになれば、継承権のこととあわせて、フォンターナ連合王国のような長子相続制度にできるかもしれないな。

 なら、今はまだ議題にあげる段階ではないか。

 とりあえず、そういう制度もあるんだよくらいの話を聞かせておくに留めておくことにしたのだった。

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[良い点] 寓話的に、広めるのだろうか?
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