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秘密の修験場

「ラッセンの獄炎釜のことを思うと、多分地脈が通っているところのほうが精霊石が見つかる可能性が高いんじゃないかな?」


「地脈ですか。地面の中にある魔力の流れを探せばいいわけですね。バルカ殿のいうアトモスフィアがあった場所から地脈が繋がっていれば、遠く離れていても精霊石という魔石が手に入る可能性がありそうですね」


 いろいろと話し合った結果、探す際の指標に地脈を用いることにした。

 俺には地面の中の魔力の流れとやらはいまいちピンとこないのだが、どうもラッセンは分かるらしい。

 というよりも、【ラッセンの獄炎釜】の件で地中の魔力の流れが理解できるようになったのだとか。

 今まではそこまでは理解できていなかった。

 あれほどの強烈な経験がラッセンを成長させたのかもしれない。


「魔力の流れ、か。俺にはその地脈は分からないが、秘密の修験場のほうに行ってみるのもいいかもしれんな」


「秘密の修験場? イアン、それはなんなの?」


「アトモスの戦士になるには子どものころから死と隣り合わせの修行を行う。そして、最後には大地の精霊が宿りし偉大なる石の前で決闘を行って成人する。が、その戦いではたいていどちらかが命を落とすからな。みんなと同じ修行だけではなく、決闘前には隠れた場所で修行を行う者もいた」


「そういや、アトモスフィアの前で戦って子どもから大人になるんだったっけ。なるほどな。みんな秘密の特訓でもしていたってことか」


「そういうことだ。少しでも強くなるためには自分で鍛えなくてはならない。そして、その修行を積む場所は重要だ。場所によっても強くなれるかどうかは変わると言われていたからだ」


「……そうか。アトモスの里は迷宮核であるアトモスフィアの影響で魔力が多い場所だった。けど、その中でも場所によって魔力量に濃淡があるってことだろうな。で、秘密の特訓をするにも、その魔力量が多い場所ほど強くなりやすい。ってことは、そこはほかの地点よりも魔力が多い、つまり、アトモスフィアと地脈がつながっている可能性があるってわけか」


「さっきも言ったが、俺にはわからん。が、なにもなしで歩き回って地脈とやらを探すくらいならば、俺が行っていた秘密の修験場を調べてもいいかもしれん」


「いいね。じゃ、そこに行ってみようか。案内してくれ、イアン」


 イアンの言う秘密の修験場は別に精霊石が特別多く落ちていた場所などではないようだ。

 だが、昔から子どもたちの間で強くなりやすい場所だとひそかに伝えられていたのだとか。

 そこでイアンも特訓をして、自分だけの攻撃方法なんかを模索したことがあったという。


 イアンの案内でその秘密の修験場へと向かう。

 ものすごく高い崖に囲まれたような地形の中をくねくねと曲がりながら進んだ。

 途中でいくつか採掘跡地も見られた。

 どうやら、そこかしこで地面へ穴を掘り進めていたらしい。


 興味を持ったラッセンが一度その採掘跡をのぞいて、魔力で軽く調べてみたりもした。

 結構深くまで掘っているらしい。

 そのことからも、ここ数年でこのアトモスの里が枯れたと言われるほどにかなり大規模に採掘していたんだろうなということが分かる。

 きっと、人を大量に連れてきて穴を掘らせていたことだろう。

 それが今では警備の兵を置くにとどめるくらいには採りつくしてしまったのだとすれば、ブリリア魔導国は相当に力を入れていたのだろうな。

 もっとも、数年で精霊石が尽きるほどに量が限られていたということでもあるのだろうけれど。


 実際、どのくらいの量を採掘できたんだろうか?

 その数によっては、あの圧倒的な強さを持つイアンのような者たちを蹂躙した魔装兵器が、その当時よりも今ははるかに大量にあるということになる。

 改めてそう考えるとかなり危険だ。

 ブリリア魔導国が魔装兵器を並べて進軍させるだけでも、相当な被害が出てしまうことになるのだから。


 そう考えると、結婚話というのは思った以上に重要なことかもしれない。

 ブリリア魔導国の貴族とやらと繋がり、そこが派閥争いで負けでもしたら、そのままうちにも魔装兵器が送り込まれてくるかもしれないし。

 シャルル様には頑張って勝利者側になるか、せめて負けないようにしてもらいたい。


「ついたぞ。ここが俺も修行した場所だ」


 しばらく進んだ先の奥地。

 高い壁のようになった場所をいくつも越えた先にある広間のような場所。

 どうやらそこが秘密の修験場だそうだ。

 確かにここなら、周りが囲まれているので誰に見られることもなく秘密の特訓ができそうだと思った。


 けれど、感覚的には別にこの場所の魔力量が高いというわけでもなさそうだった。

 少なくとも、俺にはわからない。

 が、雪を払って地面に手をつき、魔力を流していったラッセンが驚く。


「すごいですよ、これは。地面の下、ものすごく深い場所ですが魔力の流れを感じます。……えっと、向こうのほうから魔力が流れてきている感じですね」


 そう言ってラッセンが指さす方向を見たイアンが答える。


「あっちの方向はかつて大地の精霊が宿りし偉大なる石があったところだな。やはり、この修験場に魔力がきていたということか」


「へえ。そうなんだ。っていうか、アトモスフィアはもうないけど、今も魔力が流れてきているのですか、ラッセン殿?」


「はい。ただ、昔はもっと流れる魔力の量が多かったのではないかと思います。地表に近い場所でも魔力が流れていたのかも。けれど、今はかなり深いところにだけ魔力を感じています」


「ほうほう。で、肝心のお宝はありそうですか?」


「……ええ。魔石のような気配を感じています。おそらくこれが精霊石でしょう。見つけましたよ、バルカ殿」


 やったぜ。

 到着早々、イアンとラッセンが大きな働きをしてくれた。

 俺たちはひとまず、体を休める天幕などを張り、次の日から採掘を始めることにしたのだった。

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