魔法剣製作と
新しく作る製鉄所の名は、バルカ製鉄所とすることになった。
地面の深くから続く縦穴が燃え続けているラッセンの獄炎釜を覆うようにして作られた高炉がその中心だ。
地中の魔力と反応して、常に炎を噴き出しているのを利用し、高炉内を常に超高温に保つことで、いつでも鍛冶ができるようになっている。
そして、その高炉で作られた鋼を加工する場所も併設し、そこで働く者たちが休める宿舎も用意した。
いずれはここに川の水を引いて、水運で原材料の鉄鉱石などを持ち込み、運び出せるようにもするつもりだ。
そうなればバルカ製鉄所は一つの街といえるくらいに大きくなるだろう。
まあ、全体の工事が終わるのは何年も先になりそうだけど。
「それよりさ。せっかく炎鉱石を手に入れられたんだから、そっちで何か作ってよ。魔法剣とかできるでしょ?」
「炎鉱石を用いた魔法剣でござるか。ふむ。そうでござるな。拙者もそれは興味あるでござるよ。ちなみに、この炎鉱石を用いて作られた魔法剣について、アルフォンス殿はなにか知っているでござるか?」
「えっと、そうだな。俺が知っているのは九尾剣と氷炎剣かな」
「ほほう。二つもあるのでござるか。それらはどのような剣なのでござろうか」
「九尾剣のほうは、たしか炎の剣が出現する金属剣だと思う。バイト兄さんが持っていたけど、すっごく強い剣のはずだよ。氷炎剣は実際に使っているのって見たことないんだけど、かなり変わっている剣のはずだよ。氷の剣が出るって話だったから」
「炎鉱石を用いて作ったのにも関わらず、氷の剣が出るのでござるか。それは確かに不思議な話でござるな」
「でしょ? でも、それだけじゃなくてその氷は炎に変えることができるそうなんだ。アルス兄さんは川を凍らせて、その氷を全部炎に変えたことで、河川の船上での戦いで相手を全員炎上させて勝利したらしいし」
「そ、それはなんとも恐ろしい話でござるな。水の上で全員が焼け死んだのでござるか。アルフォンス殿の兄上は聖典にも出るだけあって、やることがすごいでござるな」
本当にね。
だけど、その氷炎剣ももう作れないんじゃないだろうか。
あれは、アルス兄さんとグランさんが組んで作り上げた魔法剣だそうだけど、アルス兄さんが【氷精召喚】を使えたからできたって話だったからだ。
今のアルス兄さんはもう【氷精召喚】が使えないから難しそうだな。
となると、炎鉱石から作れる魔法剣は九尾剣だけということになるのか。
「では、九尾剣を作ってみるでござるか?」
「そうだな。じゃあ、お願いしようかな。ある程度は炎鉱石が確保できているから、何本か九尾剣を作っておいて。あとは、ガリウスになにか案があるなら、いろいろ試作してみてもいいよ」
「本当でござるか、アルフォンス殿? この炎鉱石を拙者が自由に扱ってもいいということでござるか。男に二言はないでござるよ。今の言葉、拙者はしかと聞き届けたでござるからな」
「お、おう。別にいいよ。ただ、使ってもいい炎鉱石の量は決めておこうか。その範囲内ならかまわない。あとは、アイにも話を聞いてもいいかもね」
「うむ。そうするでござるよ。アイ殿に仲介を頼めば、天空に住まう賢人たちの意見も聞けるかもしれないでござる。面白いものができないかどうか、今からわくわくして拙者、寝られないかもしれないでござるよ」
「楽しそうでなによりだよ。ま、無理だけはしないようにね。あと、九尾剣のほうを先に頼むよ」
九尾剣は金属の剣でありながらも、魔力を込めると炎が剣の形で飛び出す魔法剣だ。
これはバイト兄が熱く語っていたが、相手にすると厄介な武器だという。
というのも、炎の形をした剣というのは体を焼き尽くす威力があるにもかかわらず、物理的な防御をしにくいものだからだ。
ただの剣と剣であれば、剣同士を打ち合うことで相手の攻撃を防ぐこともできる。
が、こちらが普通の金属剣で向こうが炎の剣だった場合、炎の剣に金属剣を当てたところで相手の攻撃を防御できないのだ。
そのまま空気を切るように炎の剣を金属剣が通り過ぎて、自分の体に炎が到達してしまう。
これは炎の剣の攻撃範囲が長いことも関係している。
つまり、九尾剣での攻撃は非常に防ぎにくいという特性がある。
バイト兄なんかは、ヴァルキリーに騎乗しながらブンブンと九尾剣を振り回したりして戦場で戦果を上げたらしい。
この戦法が通じにくい相手というのは、魔力量の高い相手だろうか。
炎の剣をその身に受けても火傷ひとつ負わないというほどの防御力を発揮できる高魔力量の人には有利を取りにくい。
まあ、逆に言えばそういう相手でもなければ九尾剣は無双できる力を持った魔法剣であるということになるだろう。
とりあえず、数本作ってもらおうか。
で、それをオリエント軍の指揮官格の連中に渡してみよう。
戦力向上間違いなしだろう。
こうして、作られ始めたバルカ製鉄所では、まず最初に九尾剣が製造されることとなった。
もちろん、完成した九尾剣は俺も一本持つことにしたのだった。
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