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製鉄所

「とりあえず、パッと思いつくもので言えば炎高炉を作るのがいいんじゃないかと思うけど、どうだろ、アイ?」


「問題ないのではないでしょうか。炎高炉を用いて鉄の精錬を行い、バルカ鋼を作ることができればより錬銀術の効率は上がると考えられます」


 ガリウスの言う【ラッセンの獄炎釜】の活用法。

 いまだにどういう理屈でそうなっているのかはわかっていないが、地中から流れ出てくる魔力に反応しているのか、火が消える気配は一切ない。

 その消えることのない超高温の炎を有効活用するために、この場に何を作るのがいいかと考えた時、すぐに頭に浮かんだのが炎高炉だった。


 炎鉱石を用いて作られた特殊な炉。

 魔力に反応してそれまでのどんな既存の炉よりも高い温度を出すことができるようになったその炎高炉は単純に鍛冶をするうえで助けになるはずだ。

 同じ金属が含まれた鉱石であっても、炉によって精錬の結果に違いが出る。

 現に天空王国にある炎高炉では、鉄鉱石からただの鉄ではなくバルカ鋼という変わった鋼を作れるのだ。

 バルカ鋼で作られた武器にはその表面には特殊な模様が浮き出ていて、普通の鉄剣程度であれば切り捨てることもできる。

 オリエント軍の武器をバルカ鋼で統一するだけで、かなりの戦力向上になるのは間違いない。


 が、アイは別の視点でも炎高炉を評価した。

 それは錬銀術についてだ。


 エルちゃんたちが使うことのできる錬銀術は手にした鉄を銀へと変えることができる。

 が、エルちゃんたちは一体ごとに魔力量という上限があるために、どうしても一日に鉄を銀に変えられる量というのは限りがあるのだ。

 それを解消するために繁殖やクローン技術を用いて、なんとか数を増やせないかと考えていた。


 が、銀をより多く手にするためには別の方法もあった。

 それは、鉄の純度をあげるということだ。

 錬銀術では鉄を銀に変えるが、その鉄に不純物があれば当然魔力を消費しても手に入れることのできる銀の量というのは減ってしまう。

 ならば、バルカ鋼のように不純物が少ない鋼などであればどうだろうか。

 それは、同じ魔力でより多い銀が手に入るのだ。


 つまり、鉄鉱石に錬銀術を使うよりも鉄に使うほうが、そして鉄に使うよりも鋼に使うほうがより効率がいいということになる。

 炎鉱石を用いて作られた炎高炉があれば、バルカ鋼をたくさん作ることができるようになる。

 そうすれば、より効率よく銀を手元においておけるということになる。


 今の状況なら、炎高炉一択かな。

 この【ラッセンの獄炎釜】の炎は鋼を作るのに活用しよう。

 大々的に鉄でも買い集めて大規模にやってみるのもいいかもしれない。


「それならば川の流れもそれに合わせて調節しましょう」


「川を? こことは離れたところに新しく川の付け替えをするんじゃないのか、アイ?」


「炎高炉を用いて大規模に鉄を精錬する設備を整えるのであれば、輸送効率も上げるほうがよいでしょう。鉄のような重たいものを運ぶのであれば水運を利用したほうが負担は減るかと思います。川を利用した鉄鉱石の輸送を想定して、新しい川の付け替え計画を考えるほうが良いかもしれません」


「なるほど。そういうのもありか。今までは単純に氾濫を防ぐための工事で、その後の不況で仕事を生み出す意味が追加されたけど、そこに新しい意味をさらに増やすのか。輸送網のための川、か。現実的に可能ならいいんじゃないか?」


「実現するためにはいろいろと課題もあるかと思います。その場合、鉄の購入先も水運を利用しやすい場所でなければ都合が悪いですから。ですが、川の整備はほかの面でも有効でしょう。製鉄所を作る際には水も必要になるかと思いますので」


「そうなんだ。まあ、そのへんはガリウスなんかとも協議して決めておいてよ。製鉄所ってあれでしょ? 鉄の精錬だけじゃなくて、鉄でなにかを作るのもここで最後までやっちゃうってことだよね。だったら、それに必要な設備は全部最初から計画しておいたほうがいいだろうし。今はまだ何もないだだっ広い土地だしね」


「かしこまりました。それでは、ここに製鉄所を建設することを想定した計画を検討していきます」


 消えない炎を利用して炎高炉を作る。

 それによってこれまでよりも優れた鋼を大量に作り出す。

 そのためには、こじんまりやるよりも大がかりにやってしまうことに決めた。


 まずはなんと言っても川の存在だろう。

 原料となる鉄を積んだ船がこの【ラッセンの獄炎釜】にある炎高炉近くまで運べるように新たに水路として作り上げる。

 そうして、運び込まれた鉄鉱石をバルカ鋼へと変えてから、いろんな品を作り出す。

 ただ鉄を鋼に変えるだけよりもそっちのほうがいいだろうからな。

 今のところはバルカ鋼で剣や矢でも作ってもらいたい。


 で、それらの完成した品はふたたび水運を使ってよそへと送り出される。

 それらを全て効率よく行うための施設をこの何もない空間に生み出す。


 新しい街づくりみたいなものかもしれないな。

 多分、そこまで大掛かりになることをすれば住み着く人もいるだろう。

 【毒無効化】を定期的に使わなければならないので、ちょっと住みにくいかもしれないけどね。


 こうして、【ラッセンの獄炎釜】を基点としてここには新たに街のような規模の製鉄所をつくることに決まった。

 ガリウスが張り切って陣頭指揮をとって、今までにない鉄の街を作るための動きがこの時始まったのだった。

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