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地質調査

「結局、今のところラッセンの一番の活用法っていうと、地質調査になるのかな?」


「そうなるかと思います。ラッセン様はアルス・バルカ様よりも地中における魔術発動の魔力効率が上回っていました。が、穴を掘るなどの作業は人の手が足りているのであれば人力でもできます。それよりは、魔力を使って地中にある土の性質や鉱脈などを探すほうが現状では活用法として優れているかもしれません」


 ひとまず、ラッセンを部屋に案内し体を休ませる。

 その間に、俺はラッセンの力についてアイと話し合った。

 アイが行った様々な検証という名の実験でわかったことはいくつかある。

 その中で、今すぐに活用するのであれば鉱脈探しが一番いいのではないかという話になった。


 土建屋や穴掘り師などと呼ばれたラッセンは魔力を使ってさまざまなことができた。

 が、これまでにそれほどその力を認められていなかったのは、やはり魔力量に限りがあったからだろう。

 穴を掘るのも別にラッセンでなくてもできることだ。

 人の手と道具さえあればいい。

 あくまでも、建物を建てる時の工事期間の短縮程度に、いればいいけど、いなければ工事ができないわけでもないという扱いだったらしい。

 個人として仕事の速い職人みたいな感じで名が売れていたのかもしれない。


 だが、そんなラッセンの本当のすごさは地質調査にあるだろうというのがアイの見立てだった。

 アイは四枚羽を使って上空から見下ろした地形をほぼ把握できている。

 が、そんなアイをして知ることができない情報があった。

 それは、地中と水中だ。

 四枚羽は空を自由に行動することができるが、さすがにそこまでは調べられないからだ。


 そんな地面の中の情報をラッセンの魔力ならば簡単に調べることができる。

 地面に魔力を流し込むことで、地中の状態を把握する。

 アルス兄さんよりも効率がいいというだけあって、結構深くまでラッセンの既存の魔力量でも調べることができるらしい。

 今までは地中の水脈や岩盤を探すことが多かったらしい。

 それらはつまりは、井戸掘りのためのものだった。

 井戸を正確に掘ることができたのも、穴掘り師という異名を得た理由の一つなんだとか。


「銀鉱脈でも探させるかな。いや、別に鉄鉱脈とかでもいいけど」


「そうですね。ですが、ラッセン様には魔術の呪文化の方法をお教えしてもよいかもしれません。【地質調査】と名付けた魔法であれば、仮にオリエント国外に流出しても、ただちに影響はないと考えられます」


「ああ、なるほど。それはいいかもね。ラッセンの一番の活用法ってあいつ自身に魔術を使わせるよりも、魔法を作らせたほうがいいってのは確実だし。広まっても直接的な損害が出にくい魔法を作らせて、その間にあいつが裏切ったりしないかどうかを見極めるってのはありかもしれないな」


 アイの提案にうなずく。

 いきなり、地中に通路を作るような魔法を作らせるわけにもいかないだろう。

 それよりは、こちらも役立ち、損の少ない魔法ができたほうが助かる。

 それに、うまく銀鉱山が見つかればありがたいのは事実だ。


 銀の保有量によってエンを作る量を規定した以上、どうしたって銀は必要になる。

 そのために、今はエルちゃんたちを繁殖できないかの検証も続けていた。

 が、そもそもの話として錬銀術を使える白犬人という存在そのものが隠すべき情報でもある。

 今後、繁殖がうまくいったとして数が増えた場合、銀の保有量が加速度的に増えるのは間違いないが、ではそれはどこから手に入れているのかと突っ込まれることにもなるだろう。


 そうなった場合のことを考えて、いずれは銀山のひとつでもあったほうが助かるのは確かだ。

 実際にはそれがどれほど埋蔵量の少ない鉱脈だったとしても、そこで銀を手に入れていると言えればいいわけだからな。

 できれば、銀鉱脈が最低一つに、あとは鉄の鉱脈も見つかればいいか。

 鉄はそこまでしなくてもそれなりに見つかりそうだけど。


「でも、そうなるとどうしようか? ラッセンには魔法のための呪文化作業を優先させるべきか、銀鉱脈探しに新バルカ街の外に出てもらうことを優先すべきかってことになるけど」


「そうですね。ひとまずは呪文化をお願いしましょう。鉱脈探しはほかの人の情報を集めてからでも遅くはないと思います。山師など、普段人がいかない場所に赴く機会の多い者に鉱脈がありそうな場所を探してもらい、おおよその情報が集まれば実際にラッセン様を現場に連れていって【地質調査】をすればよいかと」


「そうだね。それでいいと思う。うまく呪文化ができれば、アイが教えている孤児の中から選んだ者へラッセンから名付けをさせればいいか。現場にはそいつらが行けばいいだろ」


 その場合は、俺がラッセンにたいして名付けしよう。

 で、ラッセンが孤児の一人に名付けをして、そいつの【命名】の管理をすれば、無秩序に【地質調査】が広まる可能性も減らせるに違いない。

 アイとの会話でそう結論付けた俺は、ひとまずラッセンに地中の状態を調べる魔法を作るように、呪文化の方法を教えることにしたのだった。

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[気になる点] 敵対的なネズミの群れから抜け出したラッセン、飛び込んだ先は友好的な虎の口でした!ラッセンの運命やいかに!
[良い点] 頑張れラッセン 明日は、明るい
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