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新たな城造り

「城っていうより大聖堂みたいな感じになりそうだな」


 グランと2人で頭を突き合わせて新たな城造りについて考えていた。

 バルカで作られている植物紙を惜しげもなく使い、ひたすら図面を描き込んでいく。

 定規やコンパスを使って、メートル法という共通の基準をもとに結構詳細な建築図を描いていった。


 ステンドグラスを用いて権力の象徴とする。

 この案は当然前世の記憶をもとにひねり出したアイデアである。

 そして、俺の貧相な脳みそではその完成予想図は城というよりも大聖堂をイメージするしかなかった。

 俺の頭の中にある記憶では奥行きのある部屋の奥面と側面に縦長の窓がありステンドグラスがはめ込まれている。

 そして、奥の一番上のあたりには雪の結晶のような、万華鏡を覗いたときに見えるようなステンドグラスもあるというもの。

 あまり色んな色が散りばめられているよりもある程度統一された色のほうがいいかもしれない。

 いろいろと考えた結果、魔力の色にあわせて青色を基本として使うことに決めた。


 俺が大雑把なイメージを伝えながら適当なイメージ図を紙に描く。

 それをもとにグランが更に詳細に壁の大きさや窓の大きさを数値とあわせて描き込んでいく。

 そうして謁見の間だけの設計図が出来上がった。


「アルス殿、このステンドグラスとやらは日光のあたる角度によって見え方が変わるのでござるか?」


「ああ、そうなるな」


「そうであるならば、建物の向きも考えて作らねばいけないのでござる」


「そう言われりゃそうだな。あとからは変えられないから今のうちからよく考えておかないと」


「それとこの城はガラスを多用する関係からどうしても防衛力が弱くなるでござるよ」


「うーん、それは仕方ないかな。どうせ、内壁の中に造るんだし、街としての防衛力は外壁に依存するだろうし」


「それはそうでござるが、万が一攻められたらというのも考えておくべきでござるよ」


「なら、隠し通路でも作っとこうか。いざというときの逃げ道を用意しとくってのはどうだろ」


「なるほど。それはいい考えでござるな」


 こんな感じであーだこーだといいながら、設計図を完成させたのだった。




※ ※ ※




 さて、設計図が完成したあとは着工となる。

 バルカニアの内壁の中にある土地に新たに城を建てるわけだ。

 一応、この世界の城としてカルロスの居城も実際に見た。

 基本的な作りは当主が住む建物であり、守りの要であり、権力の象徴でもあり、いろんな人が訪れる場所でもある。

 バルカ騎士領のトップである俺が住む居住区と城の維持管理のために雇う従業員たちのスペース、さらにステンドグラスがはめ込まれた謁見の間。

 そうして、主要メンバーと会って話し合いなどをする会談の間や応接の間なども用意する。

 要するに、俺の家であり、仕事場でもあり、シンボルマークでもあるということだ。


 すでに建材については用意してある。

 冬の間は農作業をできない期間が長かった。

 だが、城造りをするというのは決まっていたので、することがない冬にも領民たちに硬化レンガ作りを続けさせていたのだ。

 すでにそのレンガが大量に積まれている。


 設計図を手にしたグランがその硬化レンガを使って、基礎から建物を建てはじめた。

 俺はそれをみながら別の作業へと取り掛かる。

 俺が造るのはステンドグラスの部分だ。

 青色を基本としたステンドグラスを用いて雪の結晶のような形を造る。

 側面の縦長の窓部分にはモザイク状のステンドグラスを採用する。

 この部分を担当するのだが、いきなり大きいのを造るのではなく、まずは魔法でミニチュアサイズのものを作ってみることにした。


 頭の中のイメージをもとにステンドグラスがはめ込まれた状態の小さな壁を作り上げる。

 そうしてできたものを実際に光を当ててどう見えるかを確認するのだ。

 粘土細工を何度も潰しては作り直すように、試行錯誤をしながら満足する出来のミニチュアを作り出した。


「完璧だ。これなら誰もが驚くに違いない」


「アルス兄さん、すごいねそれ」


「カイルか。どうだ、変なところはないよな?」


「うん。すごいね。ちっさいのに本物の建物みたいだよ」


「そうだろ。子供のおもちゃとして売り出したら売れるかもな」


「はは。子供じゃなくて貴族様が欲しがるんじゃないかな。それで、その建物をおっきくして造るの?」


「ああ、これをグランに見本として渡してあとは実際にステンドグラスを作ってはめ込むって感じかな」


「え? 兄さんてたまに建物そのものを魔法で造ってるでしょ? なら、それも魔法で造ればいいんじゃないの?」


「ん? でも建物そのものを魔法でつくろうとしたら結構魔力を使うからな。いきなり城を造ったりはできないんだよ」


「いや、だからさ。そのステンドグラスがついた壁の面だけを魔法で造ればいいんじゃないの?」


 ……え?

 カイルのやつ、今なんつった?

 城の建物の壁だけを魔法で造るって言ったのか?


 確かに考えてみればそれも可能かもしれない。

 俺が魔法で建物を建てるとき、建物の構造を【記憶保存】していれば無駄な魔力なしで建築できる。

 だが、イメージだけでは建材のない空間すべての容量を魔力消費して建築してしまうので、あまり大きな建物が建てられない。


 しかし、それが壁だけだったらどうだろうか。

 建物自体を一度にすべて作り上げようとせずに、壁面だけを魔法で造ればそれも魔力消費を抑えることになるのか。

 いや、考えてみれば初めて魔法で建物をつくったときの隠れ家は壁を4つ、くっつけるようにして造ってたっけか。

 最近は一回の魔法で建物を作り上げることが多かったのですっかり忘れていた。


「ナイスだ、カイル。ちょっとグランと打ち合わせしてくる」


 こうして俺はグランと協議の結果、ステンドグラスのはめ込んだ壁部分だけは魔法でちゃちゃっと造ってしまうことに決めたのだった。

 魔法で造った壁にあわせてグランの指揮のもと、建材を積み上げて城全体を完成させる。

 この結果、予定よりも更に早い期間で新しい城が完成したのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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