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血の記憶と適合

(イアンが言っていたように、血を吸って手に入れた魔術を他人に分け与えることはできるのか、ノルン?)


 面白そうだと思ったので、すぐに調べることにする。

 その第一歩として俺は自分の中にいる魔剣ノルンに心の中で質問をした。

 俺が血を取り込んで他人の力を手に入れられるのは魔剣ノルンという存在があってこそだ。

 だからこそ、ノルンに聞くのが一番手っ取り早いだろう。


(できなくはないだろうな。その代わり、条件があるが)


 そして、そんな質問にたいして割とあっさりと答えが返ってきた。

 どうやらできるようだ。

 そんなのできるんなら早めに教えておけよと思わなくもないが、とにかく可能らしい。


(条件って? なにか用意する物とかでもあるのか)


(いいや。別に必要な物はない。ただ、血に対する適応があるかどうかと、例の炎がいるだろうな)


(血の適応ってのはあれか。血液の型とかの話か? ハンナとミーティアの時もそんなことを言っていたよな。炎ってのはなんだ?)


(あの回復の炎だ。あれがあれば、多分大丈夫だろう)


(回復の? ああ、分かった。【慈愛の炎】のことか)


 どうやら、条件というのはそれほど難しいものではないみたいだ。

 血液の型が適応するかどうか。

 そして、【慈愛の炎】が使える状況かどうかという点をノルンは気にしているらしい。


 その後、さらに詳しく話を聞いていった。

 そこで、いろいろとわかってきた。

 今まできっちりと把握できていなかったが、ノルンにできること、できないことがはっきりしてきた。


 まず、魔剣ノルンはかつて吸血種になるための儀式剣として作られたという経緯がある。

 そして、その吸血種に俺はなった。

 その時、魔剣ノルンと血の契約を行い、魔剣は俺の血液と同化した。

 つまり、現時点で魔剣は俺の血そのものであるということだ。


 そんな魔剣ノルンは血を吸うことで魔力も取り込むことができる。

 そして、さらには相手から大量の血液、それこそ全身の血をすべて取りつくすほどの量を吸い取ることで血の記憶というものを手に入れられるのだそうだ。

 これが、いわゆる魔術を手に入れる方法だ。


 以前、流星と呼ばれるヘイル・ミディアムの息子を倒した時、ヴァルキリー型になっていたノルンはそいつの血を根こそぎ奪い取った。

 その結果、【流星】という魔術とともに柔魔木の弓を使った弓術の記憶までをも手に入れたのだ。

 そのおかげで、俺はそれなりに弓が使えるようになった経験がある。


 ならば、それと同じことを他人ができないのか、つまり吸血種になれないのかというと難しいらしい。

 というのも、俺の血が魔剣ノルンと同化していることが関係していた。

 もしも、ほかの人間が同じようなことをしたいのであれば、俺の血液すべてを魔剣に変換して他者と血の契約をしないと吸血種にはなれないからだ。

 つまり、その場合、俺は全身の血を失ってしまうことになる。

 もちろん、そんなことを俺が許可するはずがない。


 なので、俺がノルンと契約している以上、俺のほかにノルンが血の契約をすることはない。

 これまでならば、それで話は終わりだった。

 が、今は【慈愛の炎】というハンナが作った魔法がある。

 どうやら、これがあるおかげで、今までできなかったことができる可能性につながるのだという。


 やり方は簡単だ。

 たとえば、【流星】という魔術を持つ血の記憶、それがすべて内包された血液を他者に送り込む。

 そのかわり、もともとそいつが持っていたそいつ自身の血液はいらない。

 むしろ邪魔になるのだそうだ。

 なので、すべての血液を入れ替える。

 普通はそんなことをすれば人は死ぬ。

 ハンナとミーティアの時でさえ、徐々に時間をかけて血を混ざり合わせただけで、一気に全部を総入れ替えしたわけではない。

 もしそんなことをすれば、拒絶反応でも起こすのだろう。


 しかし、【慈愛の炎】があれば助かるかもしれない。

 自分の血を全部抜き、他人の血を入れるという行為。

 その危険な行為であっても、【慈愛の炎】が持つ回復の力があれば助かる見込みがある。

 ちなみに、【回復】では駄目らしい。

 あれは、【慈愛の炎】よりももっと直接的な回復力があるけれど、使ったら失った自分の血も元に戻るので総入れ替えできないからだ。


 そして、血の型の適合について。

 これも、本来であればかなり条件に合うかどうかが難しいらしい。

 型が数種類しかないというならいいけれど、実際はもっと細かく分かれているのだそうで、適合するかどうかやってみなければノルンでさえも分からないことなのだろうだ。

 だけど、今は違う。

 というのも、すでに多くの人間にノルンが含まれた血液が送り込まれているからだ。


 血の楔だ。

 あれは、バルカ教会で儀式として執り行われている。

 赤黒い魔石を使って魔剣ノルンが含まれた血液を他者に送り込むことで、いろんな条件を突きつける手法だ。

 本当にごく少量の血を入れるだけなのであまり拒絶反応が見られずに、誰にでも使用可能だ。

 それをたくさんの人にやったおかげで、その人の血の型をノルンが把握することができている。


 つまり、旧来であれば魔術を使える血の記憶を持った血液を人の体に入れた場合、たいていはそいつは死んでしまっていた。

 うまく生き残っても、血の型が合わなければ適応できず、魔術も手に入らない。

 そして、失敗するとどうやらその血の記憶が損なわれてしまうのか、ふたたび血を回収しても魔術が使えるようにならない可能性が高かったらしいのだ。


 だが、今はいろんな条件がうまくかみ合い、旧来のような失敗を最小限に抑えながら他人に魔術を与えられるかもしれない、というのがノルンの意見だった。

 まあ、結局はやってみなければ分からないというところもあるようだけど。

 けれど、やってみてもいいかもしれない。

 欠点としては、すでに俺のものとなった魔力が一部無くなってしまうという点だろうか。

 ただ、それを考慮に入れても自陣営の強化につながる可能性がある。


 すぐにノルンにどの魔術がだれに適合しそうかを確認する。

 その結果、炎の矢がよく知る人物に合いそうだということが分かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ・・呪文化した方が安全じゃね?
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