グルーガリア軍の編成
攻めてくるグルーガリア軍を迎えうつために用意した砦。
といっても、なにもないところに新しく砦を作ったわけではない。
今までにもあった砦を魔法を使って強化しただけだ。
それまでは国境沿いに配置し、人の流れや商品などの確認などの関所的な意味合いもあったところを【壁建築】などを使って守りを固めた。
そこへ、グルーガリア国が攻めてきた。
かつて、オリエント軍がグルーガリア国に向かって行ったときにはグルー川という水の流れを利用して船で向かって移動した。
ただ、川の流れをさかのぼって攻めてくるのは難しいのだろう。
グルーガリア軍は陸路を使って移動してきている。
川はまっすぐに流れているわけでもないので、どうしても移動時間がかかる。
そのために、攻められる前にある程度の相手の戦力が分かっている。
「数は四千ほど、か。結構出してきたね」
「そうですね、団長。ここいらの国が持つ戦力って、だいたい五千くらいなんで、わりと力を入れてやってきた感じですね」
グルーガリア軍の数を確認し、隣でウォルターがそう言っているのを聞いていた。
ウォルターの言うとおり、小国家群では都市国家みたいなところが多い。
なので、一国で戦力が一万を越えるようなところはほとんどないだろう。
五千人規模があれば十分すぎるほどで、もう少し少ないところもある。
そんななかで、四千もの数を動員して攻めてきたグルーガリア軍というのは、かなりやる気満々のはずだ。
「あれって、全員が弓兵ってことでいいのか?」
「グルーガリアは全員弓がうまいですよ。けど、それは別に剣が弱いってわけじゃないです。俺は以前一度、グルーガリアでも傭兵として仕事したことがあるんですけど、剣や盾の扱いもうまかったですから」
「そういや、ウォルターは傭兵であちこち行っていたんだよな。向こうの連中は割となんでもできるってことか」
「そうですね。まあ、それでも主力が弓であることは間違いないです。弓を最大限活用するために、弓兵を守る守備隊が必要って感じですね。傭兵はそういう盾役に使われることが多くて大変でした」
どうやら、グルーガリア軍に傭兵として参加すると体を張って弓兵を守る必要があるようだ。
たしかに、いくら弓の名手でも矢を射るときはどうしても無防備な体をさらすことになるからな。
それを守るためにはそういう盾役も必要なんだろう。
ただ、傭兵側から見るとその仕事を良しとするかは人によるらしい。
弓兵が強いグルーガリア軍であれば、相手が接近する前にその弓の腕で相手を射抜くことができるため、遠距離戦で勝利する可能性もある。
そうなれば、雇われた傭兵は盾を持って立っているだけで仕事が完了するというわけだ。
万一に備えているだけでお金が入るおいしい仕事ということになる。
が、もしも接近されて攻め込まれてしまうと大変だ。
後ろに弓兵がいるためになにがなんでも相手を押しとどめなければならない。
絶対に退くなと言われて相手を受け止めるのは、死を強く意識することとなる。
しかも、そんな激戦に放り込まれても相手にするのは前線の兵であって、名の通る武将などではない。
つまりは、頑張っても傭兵として評価されづらいのだそうだ。
なので、傭兵として名を売って、どこかの国で出世したいと考えている者はグルーガリア以外に流れることも多い。
ウォルターもその口だったようだ。
弓兵が主力であるということで、グルーガリア軍にも重宝されることはないということで、ほかに働き場所をもとめて点々としていたようだ。
そして、その際にバルカ傭兵団の活躍の話を聞いて、うちにやってきたということになるらしい。
「ま、なんにしても相手は盾と剣で守りを固めて、その後ろから弓で攻撃するってのが主な戦い方ってことになるのか」
「グルーガリア軍なら間違いなくそうすると思います。単純でわかりやすいですけど、効果はあります。相手よりも遠距離で優秀な攻撃を持つってだけで、戦場では有利ですからね。一撃必殺の突破力とかはないけど、どんな戦場でも通用する軍って感じです」
「なるほど。実際に雇われた経験のあるウォルターがそう言うなら間違いないだろうな」
ウォルターの話を聞いて、改めてグルーガリア軍は強いのだろうなと感じた。
なんと言っても、役割が徹底されているというのが大きい。
主力は弓で、それを守る盾がいる。
かといって、その役割をしているのが全員が傭兵というわけではないので、簡単には崩れない。
ただの武器を持った連中が四千人集まっているだけでも十分な戦力だろうけれど、それが明確な役割で機能した集団というのは強い。
さすが、争いの絶えない小国家群で柔魔木という貴重な木材を守りながら国を維持し続けてきただけあるというところだろうか。
そんなグルーガリア軍がこちらの視界に入るところまでやってきた。
砦に入ったオリエント軍と、そこに攻め入るグルーガリア軍。
こうして、国境沿いでの戦いが始まったのだった。
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