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学問の神様  作者: たままゆ
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僕の弟は優れた知性と優れた行動力を持ち合わせており、兄という立場上、弟にあらゆる挑戦を挑むことは不可能だった。いつだって弟の活躍を陰ながら支える兄を演じ続ける必要があったのだ。

弟が言うことには、兄は物事を複雑に考えすぎているようでそれ故に本当の自分を見失っているらしい。


ある日、僕たち兄弟は父の誘いで父の会社の同僚の家族で行われるバーベキューに参加した。父の同僚の家族を含めて年上の人たちは酒を飲んでおり、雰囲気もそれとなく和やかになってきていた。その時、父の同僚の1人が僕たち兄弟を含め未来を担う子ども達に向けて一言言い放った。

「君らは僕たちが普段どんなことをしているか知らないでしょう。毎日毎日父親母親がどのようなことを考えているか知らないでしょう。このような機会に父親と母親に聞きたいことを聞いてみるのはどうでしょうか?」

場の緊張感が少しだけ増したのを肌で感じた。

それぞれの家庭ごとに集まって、年の若い子供達は親と楽しそうに会話しており、年頃の子供達はとても恥ずかしそうに話していたり、中にはスマホをいじってまるで今何も聞いていなかったようなふりをしていた。僕も聞いていなかったことにしたかったけど親に聞きたいことはあったし、自分が聞かなくてもそれを知ることができるのは分かっていた。

「ねぇお母さん、お母さんはなぜ結婚したの?お母さんほど綺麗なら沢山の男の人が言い寄って来てもおかしくないよね?」

「ねぇお父さん、なんで仕事してるの?毎日楽しくなさそうだけどそれって家族を愛しているから?そのために自分を犠牲にしているの?」

弟は単純だった。夫婦の仲が良くないのがわかっていて、これらの質問をする事で父親、母親に再び問題について考える機会を与えるつもりは無かっただろう。ただただ気になっていたのだろう。


あらゆる質問に本心から答えることが自分たちの何かを壊すから僕たちはきっと嘘をつき、笑顔をつくる。それでも幸せになれるなら僕はそれでよかったし、現に自分を不幸だと感じてはいなかった。


でも、弟はそれを許さなかった。

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