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瞳に映るもの
第2章
彼が僕に教えてくれたことには沢山の不可解なことがあったんだ。あの日、僕は彼の家まで行って二人で話をしていた。しばらくしてペットの猫がやってきて僕たちの食べていた和菓子を食べたとき、ちょっとイラっと来たんだけど、僕が食べるよりもはるかに美味しそうにその和菓子を食べるもんだから許してやったんだ。僕には和菓子を食べることよりも自分を楽しませることがいくらでもあるのに、まるで猫にはその和菓子が自分の人生の中で求めてきたゴールのようだったから。
僕が猫を凝視していると彼は言ったんだ。
君の信じているその猫は、僕は信じていないものなのかもしれないよ。
僕が死者の霊を信じて見て聞いて感じていることを君が疑って嘲笑って幸せに生きているようにね。
当時、僕にはその意味がわからなかったし、その不気味さも彼ならではのものだと思い全く気にしていなかった。
けれどそれは真実に近づくことが許された彼の苦しみが生み出した最後の言葉だったのかもしれない。
弟よ、瞳に映るその世界は僕のそれにはないものであり、僕を惹きつける唯一つのものとなり得たんだ。すまない。