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浄化

お待たせしました。みなさん安心してください。書き切る前にいなくなったりしませんから。

シュラハト2分の1崩壊

「おい!降りてこい!ずっと飛ぶのは卑怯だぞ!」

『物でもぶん投げて当てればいいだろう?』

「チッ、じゃあ使えない木材をくれてやる!」

疲れているはずなのにどこに投げる力が残っているのやら。

『当たらないぞぉ』

「届くかぁ!どんだけ離れてると思ってんだ!」

『おお、こわいこわい。シュラハトを一望できるくらいの高さに届かないからって、怒るなよ』

「十分高い!普段そんな高さまで投げるか!」

パパが疲労で壊れてきてる。私も加勢した方がいいだろう。

『シルフィー、少シ話ヲ聞イテクレ』

「なに、グラント。今行くところなんだけど」

『モウ少シ待テ。リリィ達ガ戻ッテクル。シルフィーノ役目ハ、ロストヲ拘束スルコトジャ』

「だったら今出て縛った方が…」

『タイミングガ違ウ。縛ルノハ、ロストガ落チテカラジャ』


「ロスト!早く降りてこい!」

『もうちょっと〜♪』

「だああぁぁぁぁぁ!うっぜぇ!」

『飛べないなんて、かわいそうに』

「なんで森霊族に羽がないんだ」

『なんだよ、戦意喪失かよ。つまらん。………ん?』

『ロストォォォオオ!覚悟するッス!』

『おお〜!グィラムじゃないか。顔つきが変わったな』

『もう逃げたりしないッスよ。自分、強いッスから!』

『強いのか。強くなったか。この短時間で?んな訳あるかよ』

『今から証明してみせるッス!』

『やってみろ』

飛竜同士の戦いが始まった。空を飛び回り、引き裂き噛みつきブレスで距離をとって猛スピードで近づいて頭突き。一発ごとの衝撃で家屋が崩れていく。

『なんだよ。元は強かったのか。だが、まだまだ』

『経験が少ないもんで、うまくいかないッス』

『もっと戦っておくべきだったな』

『大丈夫ッス。必殺技、考えてあるッスから』

『ほう、警戒するところだが…受けてみたい!さあやれ!その必殺技とやら、見せてみろ!』

『お言葉に甘えて。いくッスよ!』

ロストの首を掴み、思い切り垂直下方に投げる。地面に落ちたロストの腹に追加で全力全速力パンチ。大きなクレーターを作り上げた。だが、それだけではロストは倒せない。

『ぐっ、どうした?それだけか?全然効かな…い』

まだ終わってはいなかった。

『なんだ、これ。…植物?』

ロストの腹を鋭い槍のような植物が貫いていた。植物はメキメキと成長している。海水を吸い上げているとは考えられない。じゃあ、なにを吸っているのか。簡単なことだ。ロストの血。その証拠に植物の一部が紅くなっている。

『これは霊樹ッス。力入らないッスよね?』

『てめぇ。強さの証明はどうした!』

『これがグィラムの力。仲間、友を頼ることによって得られる強さッス』

『こんなんが強さとは。認めねぇ』

『ロスト、もう終わりッスよ』

『まだだ、まだ力は入る!さっさと抜けて続きを…』

動かさせない。それが私の役目。今の私にできる最重要事項。1ミリだって動かさせない。

『クソ!足りねぇ。遊び足りねえよ』

「大人しく…吸われてなよ。縛っといてあげるから」

今の私は強化状態。いつもの倍の能力を発揮している。縛る力は上がっている。ただ、欠点が見つかった。ロストを縛るために地面に落ちる前に影に入ったのだが、感覚の共有が強すぎて腹を貫いた痛みを私も感じている。

『だんだんと弱ってるのはどちらもだろ?弱くなったら動いてやる』

その前に決着をつけてほしい。



そもそもなぜここに霊樹があるのか。それはグィラムの登場の少し前。

「シルフィーなの。無事でよかったの」

「リリィ!グィラムはどうしたの?」

「連れてきたの。それよりもっと大事な話があるの」

「縛るのと関係があるんだよね」

「話が早くて助かるの。リリィがここシュラハトの中央にこれ。テーレからもらった種を植えるの。そこにグィラムがロストを落とすからその時に拘束しててほしいの」

「わかった。早く行こう」


「シュラハトの中央は固められてて土がむき出しじゃないの。この種は水があると発芽しないの」

「そっか、土が濡れないからここなんだ。じゃあ、念のために、グラントお願い」

『乾カセバイインジャナ』

『手伝イマス』

「グィラムがロストに接触した、急いで」

「あとは大丈夫だから、シルフィーは縛る準備をしてるの」

「わかった。よろしくね」

そして今に至る。



ポタポタッ。

身体への負担が大きい。吐血に鼻血、でも血涙はない。過剰摂取した分がなくなって元に戻る前に大人しくなってほしいけど…。

『弱るのが早いな。これならもう少しで動けそうだ』

なんとしてでも縛り付ける。これで終わるのなら。

『我ガ友ヨ。精霊タチヨ。我ガ道ヲ示ス。新シキ霊樹ノ誕生ヲ祝福シヨウ。新シキ霊樹ニ名ヲ与エヨウ。サア集エ。贄ハアル。クレテヤル。何処ニデモ連レテ行クガイイ。精霊祭ヲ始メヨウ』

どこから聞こえてくるのか。その声の主はレージュ。その声と同時にロストの腹を貫いた霊樹の周りに精霊が集まってきた。正しくは霊樹から出てきている、の方が正しいのかもしれない。

『私タチノ新シイ扉。私タチノ新シイ憩イノ場』

『今日ハオ祭リネ』

『名前ハ何ガイイカシラ』

『ヤダ、ココ海ノ近クジャナイ。守ッテアゲナイト』

次々に精霊が出現して楽しそうに飛び回っている。この数の精霊を見たのは初めてだ。

『今ダケ許ソウ。皆デ祝ワネバ、種族ナド関係ナイ。精霊ハ優シイ。許シテクレルナ?』

『『『『許ス〜!』』』』

精霊全員がそう言った時、セラはとても目を輝かせ、ジーブさんは高笑った。見えるはずのない者全てが精霊を認識できるようになっていた。

『おい!どういうことだ!なんでこんなことになる!』

ロストは納得いかないようだ。さっきまで戦闘で緊張感があったのに、今はふわふわとしたお祭りのような雰囲気。

『アラアラ、楽シマナイノ?楽シメナイノ?』

『どこが楽しいんだ!』

まあ、お腹貫かれて血を吸われて、その上でお祭りされてるからね。異様な光景だと思うよ。

『楽シンダ方ガイイワヨ。最後ノ思イ出トシテネ』

『どういう……まさか、てめぇら!』

『フフフ、アナタハ贄。コレカラアッチ側ニ行クノ。ソシテ王ニ献上サレル。コノ祭リハ贄ヲ最後ニ楽シマセルモノデモアルノヨ』

『ふざけるな!俺はまだ死なない!』

『死?違ウワヨ。贄ヨ。ソレニ、アナタ既ニ死ンデイルノヨ。ココニ居ルコトノ方ガオカシイノ』

『俺は生きている!だから今こうしてここに』

『ソノ身体ハ、持チ主ガイル。正確ニハ居タ。アナタガ身体ヲ奪ッタ。モウスグ持チ主ハ消エルワヨ』

二重人格と呼ばれているのはロストが入ってからだったのか。じゃあ、最初に見たときは持ち主だったってことか。

『こいつは俺との共存に納得した!合意の上だ!』

『ソレトコレトハ訳ガ違ウ。一度死ンダ者ハ本来ココカラ切リ離サレル。デモ例外ガイル。アナタヨ』

『知るか!』

『ダカラ、チョウドイイ。アナタヲ贄ニ新シイ霊樹ノ誕生ヲ祝福スル』

『誰が、はいはいそうですか。どうぞ。なんて言うか!』

『言ワナクテモ、連レテ行ク。ソレガ役目。決マリ。ルール』

『俺を連れて行くってことは、持ち主も連れていくってことじゃねえのか?』

『ナゼ?持チ主ハマダ死ンデイナイ。私タチハアナタノ魂ヲ連レテイクノ』

『そんなこと…』

『デキル』

「さあさあ、皆さん面倒な話はその辺にして、木ノ実ありますよぉ〜」

「ヴェルノ。今までどこに」

「おやおや、そんなところで何しているのかな?早く出ておいで」

「縛ってて出られない」

「大丈夫。今なら縛ってなくても動けないから」

「そうなの?じゃあ」

ズズズズ…。

「なんだい、血だらけじゃないか。これで拭くといい」

「ありがとう」

過剰摂取の分は出てしまって縛れるかわからなかった。でも縛らなくていいかな?

「いいんだよ。ああなったらもう動かない」

「サラッと考え読まないで」

「ごめんごめん」

『木ノ実、貰ッテ行クワネ』

「どうぞ」

「ロストはどうなるの?」

「さっき言われた通りさ。向こう側に、精霊界に連れていかれる」

「死者の魂は全部向こうにいくの?」

「いや、全てではない。罰せられるべき者だけが精霊界に連れていかれる。どこぞの言葉を使うなら、そこは地獄」

「ママから聞いたことがある。舌とか抜かれるとこ」

「よく知ってるね。でも例えだから。本当かどうかはわからないよ」

「そうすると精霊の呼び方変わらない?」

『精霊ハネ、ココラヘンデノ呼ビ方ナノヨ。別ノ場所デハ、天使トカ悪魔トカ、アト死神。神ジャナイノニ。フフ』

「なんか紛らわしいね」

『ダカラ私タチハ自分ノコトヲ魂ノ番人ナンテ呼ンデタリスルノヨ』

「へえ〜。でも精霊の方がしっくりくるね」

『自由ニ呼ベバイイノヨ』

「さて、名前は決まったのかね?」

『決マラナイノヨ。ソレニ、ロストヲ連レテイクノハイイケド身体ガ持チ主ノ形ニ戻ラナクテ』

「ふむ、なるほど。あの霊樹にはまだ魂は宿っていないよね」

『エエ、コレカラネ』

「なら、持ち主の身体と繋げて霊樹を持ち主そのものにしてしまうのはどうだ?」

『出来ナクハナイケド、本人ニ確認シナイト』

「私、聞いてこようか?」

「出来るのかい?」

「影に入ると小さく聞こえてくる気がするの」

『オ願イシテイイ?』

「任せて」

お久しぶり。私だよ。ロストの鱗を貫く霊樹、恐ろしいね。貫けないものないんじゃない?確かめられないけど。それじゃ、また次回。

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