破壊
こんなに間隔を空けてしまいすみません。
『リリィ、ドコニ行クノデスカ?』
「グィラムを呼びに行くの」
あれだけわかりやすく狂暴化してるんだからわかるはずなのに、どうして加勢に来ないの?
「あの臆病飛竜がぁー!」
シュラハトを出て随分走っているのに、全然見つからない。気配すら感じない。どこまで逃げたの?自由に飛べるからどっちに行ったかもわからないの。
『オ困リノヨウダナ』
「この声…、レージュなの?」
『ソウダ。ドウシタノダ?』
「腰抜け飛竜を探してるの。場所知ってるの?」
『奴ナラ北ニ向カッタ。地竜ノ元ニ』
「なんでテーレが出てくるの?」
『知ランノカ。奴ト地竜ハ幼馴染ミトイウ関係ダ』
「知らなかったの。じゃあ、そこに行けばいる?」
『イル』
「わかった、行ってみるの。ありがとうなの」
『うう〜。どうしよう。ロストが出てきちゃったッス。あそこにいたら、殺される』
『なんや、腰抜けが。昔から直らんのな。いつまで逃げ回るつもりなん?まったく、美女美少女には強気なのに、格上には弱気って、かっこ悪いわ』
『グサグサ刺さるッス。事実だから仕方ないッスけど』
『なあ、あんた変わる気あるん?つい先日までは、変わるんだ!って気合い入れたやろ』
『それは、その…タイミングが悪かったと言うか、何と言うか。結局、変わらないッスよ。肝心な時に逃げ出しちゃうんスから』
『ふん。そうかい。あては、あんたが変わろうと変わらまいと気にせんよ。でも、チャンスならまだあるんやないの?』
『え?』
『ほれ、見てみ。あんたに客や』
「見つけた!お〜い!グィラム!」
『リ、リリィさん!?ここまで走ってきたんスか!?』
「当たり前なの!なに勝手に逃げてるの!戻るの!」
『戻ったところで、なにも変わらないッス。役立たずッスから』
なにを言ってるんだグィラムは。腰抜けにも程がある。
「自分より強いから、負けがわかってるから、逃げたの?」
『殺されるッス。死んだら、もう終わりッス』
「じゃあ、シルフィーたちは負けるっていうの?」
『あのロストッスよ。勝てるわけがないッス』
「シュラハトがどうなってもいいの?」
『また、作ればいいッス』
こいつ、腰抜けで臆病で、強さの階級で言うと雑魚に当たる存在だ。
「もう、いいの」
『何を言っても戻らないッス』
「でも、これだけは言っておくの」
腹が立つ。今すぐ、殴ってやりたかった。だから…。
ゴスッ………ズウゥゥ…ン。
全力で殴った。
『痛いッス!何するッスか!!』
「リリィに殴り飛ばされて、何も感じないなら本当に雑魚なの。なにが飛竜なの!全然怖くないの!ただでかいだけの弱虫なの!」
『種族が違うッスからそんな怪力、竜族にはないッス!』
「種族なんて関係ないの!元々持ってるものが違うとしても、近づくことはできるの。シルフィーの力は、たぶん努力によって培ったものなの。種族的にはほぼ吸血族なの。でも、森霊族に近い力を持ってるの」
『確かにシルフィーさんはすごいッス。でも、努力して獲得できるとしても、時間が足りないッス。もう遅いんスよ!』
「言い訳ばかり言って逃げてんじゃねー!なの!男なら黙って弱い自分でもなにができるか考えて立派にやり遂げろって言ってんの!シルフィーの方がずっとかっこいいの!」
ハアハア、…ハア、ハア。
結局全部言ってしまったの。言うつもりじゃなかったのに。
『終わった?そろそろあては寝たいんやけど』
「終わったの。あとはグィラムの自由なの。迷惑かけてごめんなさいなの」
『あては構わんよ。起こしてきたのはグィラムやし』
「リリィは戻るの。テーレはシュラハトのこといいの?」
『身内がいるでも、あてが住んでるでもないからな。気にせんよ。ああー、ちょい待ち。これ持ってくとええよ』
テーレから植物の種を受け取った。
「なんなの?」
『それは植えるとすぐに成長する植物の種。植えるだけや、水かけたらあかんよ。そいつをロストの下に植えてみ、おもろいで』
「ありがとうなの!」
『気いつけてな』
『で?あんたはどうするん?このままここにおる?それともリリィと一緒に戻るか?』
『うぅ、…なにも、感じないわけ……ないじゃないッスか。自分はどうすれば』
『はぁ、面倒な男だねぇ、だから子孫も残せないのさ』
『うるさいッス』
シュラハト被害状況4分の1崩壊。火事も起きている。
2人は移動しながら闘い、気付けば海が見える場所に来ていた。パパもロストも疲れている様子はない。ロストとやり合えるパパもすごいが、その速さについて行けるロストを見て、よく見失わないなと思った。
ポツ……ポツ、ポツポツポツポツポツ。ザァー…。
雨?晴れているのに?
「うおぉぉぉぉ!」
ロストに向かって空から降ってくる、1人の……人魚族。どこかで聞いたことのある声で、手に持った槍を前方に突き出して。そして…。
ガキーン!
槍は折れた。やはりただの槍ではロストの鱗は貫けない。バランスを崩して落ちた男は、その重さかはわからないが、落下地点にあった家を1つ壊してしまった。
『ああん?誰だよ、今いいところなんだぞ』
「ガハハハ!やってしまった、まあいいか。よおし!俺も混ぜてくれ!バレットだけに楽しませていられるか!」
「楽しんでない!可愛い娘への侮辱を取り下げてもらっているところだ」
「まあ、なんでもいいじゃないか!結局、戦闘してることには変わらないんだからよ」
落ちて来たのはセラの父親、ジーブさんだった。
ところでセラはどこに行ったのだろうか。無事だと良いのだが。
『ジーブか。懐かしい、いいぞいいぞ。共に楽しもうではないか!』
「ところでお前、セラちゃんはどうした?」
「もうすぐ来る」
「は?」
そう言われて私とパパは空を見上げた。耳を澄ませば…。
「きゃあ〜〜〜!」
という悲鳴。この声はセラだ。よかった無事だった。
「助けて〜!シルフィー!!」
おっと、受け止めなくては。たぶん、この辺。
「いやぁぁぁああ!」
よかった、場所は合ってた。だけど、これは…まずい。
ドターン!
受け止めたものの、バランスを崩して倒れてしまった。
「うう〜」
「いたたた。は!?だ、大丈夫?シルフィー!」
「だい、じょーぶ」
「ごめんね。お父さんみたいにいけるかなって思ったんだけど、ダメだった」
『なんだ、また増えるかと期待したが、ただの娘ではないか。それにそんなに強くもない。話にならん』
「おいおい、セラが可愛いくねぇって言ったのか?」
『言ってないぞ。どうやったらそう聞き間違えるんだ』
「なに?セラが可愛いだと?くださいだと?お前にはやらん!!」
『どうしてそうなるんだ!まあいい。やろうか!』
変な感じで再開してしまった。父親とは皆こんな感じなのだろうか。
やあ、私だよ。皆元気かな?最近気温の変化が激しくて体調を崩しやすいから気をつけてね。さて、久しぶりに出てきた父親の2人。親バカだね。ジーブに関しては筋肉だから色々ネジが外れてるけど。ちなみにジーブの陸での戦い方は片手で足の役割を果たし、片手で槍を持ち、ヒレで打つ。以上!シンプルでいいね。それではまた次回。




