竜族人型のトップ
遅れました。年越しちゃいました。これからもよろしくお願いします。
対戦開始からどれほどの時間が経ったのだろう。最初は1人ずつ相手にしていた。それが……。
「俺も混ぜろー!」
「飛び入りでよろしくぅ〜!」
「楽しそう、だな」
観戦していた客が次々と乱入して来ている。こうなったのは私の一言が原因だった。
開始5人目くらいだったか。相手は攻撃3回ほどでみんなダウン。この調子だと飽きるなぁ〜つまらないなぁ〜と考えて、ついポロッと出てしまった言葉。
「もっと多くてもいいのに」
誰かに聞こえさせたかった訳ではない。ただの独り言。小さな声で呟いたはずなのに、会場の全員の耳に届いていた。その瞬間、1人の男が大声で叫んだ。
「今から俺も参戦する!面白くしてやるよ!」
手には対戦申し込み用バッチ。男は大きく振りかぶり全力投球。地面が抉れた。ここから連鎖が始まった。俺も俺もと増えていき現在に至る。
会場にいた客の半分、いや3分の2が敵になった。まさかこんなことになるとは。上空からの攻撃、避けた先にいる敵。まるで全員の考えがわかって動いているような連携。ん?連携?明らかにおかしい。この大人数、初対面の者が必ずいる。そんな者同士が連携なんて可能だろうか。出来るとすれば、誰かが指示を出していると考えるのが自然だ。なら、やる事は1つ。指揮者を潰す!
「能力使っていい?」
「あ?能力?まあ、さすがにこの人数を相手に能力を縛ってちゃ辛いよな。いいぜ!」
「なんかむかつく言い方だけど、まあいいや。ありがとう!それじゃ、使うよ!」
あっさりと許可された。これで半分はすぐに減る。
ズズズズ……。
「な、あんた吸血族だったのかよ!」
「そうだよ。気付かなかったの?とっくに見破られてるかと思ってたよ」
わざと口を大きく開けてニッと笑う。牙を見せつける。これが証拠だと。
「すげー。本当だ!そうするとその力はどこで鍛えたんだ?」
「私、森霊族と吸血族のハーフだから」
「「「「「えぇ〜!」」」」」
この叫び声が今日一番の盛り上がりだった。
「シルフィー大丈夫かな」
「大丈夫だよ。あの子頑丈でしょう?それに、そんなに不安がっていると、子供たちにも伝わっちゃうよ」
「そうですね。気を付けます」
「それにしても、水の中で鬼ごっこかぁ。セラちゃんにしか出来ない遊び方だね」
「子供たちのリクエストを聞いただけですよ」
「僕はゲームしかできないからね」
「しないの間違えです」
「なかなかわかってるねぇ」
やっと終わりが見えてきた。残り3人。一番気になるのは、今まで何もして来なかった男。戦闘には参加せずにずっと私を観察していた男。輝きを失った目をしている。
「せい!」
「ぐはぁ!!」
残り2人。やはり動かない。こっちから仕掛けたらどうなるのだろう。
「くらえぇぇぇ!」
力の入っていないパンチが飛んでくる。これに当たってどうしろというのか。
「もっと腰を落として、上半身の回転を利用して打たないとダメだ、よ!」
「おぐ、ぅあぁぁぁあ!」
あ〜ぁ、やり過ぎちゃった。壁にめり込んでる。大丈夫、だよね?さて、最後の1人。
「来ないの?」
「…………」
「こっちから行くよ!」
一気に間合いを詰めて一撃!ほとんどの竜族はこれで終わりだった。
「…………!」
謎の浮遊感。男が視界から消える。
「いたた。やっぱり強いんだね」
「…………?」
「なんか喋ってよ」
「……………」
何を考えているのかわからない。さっきのは受け流されただけ。衝撃、威力を身体に通すことなく他方へ逃がす。私とは相性が悪いかも。
「…………り」
「ん?なに?」
「お…わ……り」
終わり?
「ヤバイ!」
男が吸い込みを始める。空気が薄くなる感覚。竜族特有のブレス。効果、種類は個々によって違う。
「ガアァァァァ!」
吐いたものは巨大な火の玉。口から出たんだよね!?そうだよね?
「ちょ、ちょっと!」ドカーーーン!
「…………フフ」
「なぁ〜に笑ってんのかな?」
「………!……………よけ、た」
「当たり前だよ!死んじゃうかも知んないでしょ!」
危なかったぁ〜。近くに影があってよかったよ。あの火の玉は地面をごっそり削って爆発した。会場の係の人が片付けていなければ何人か死んだだろう。
「粒子……焼けない?」
「え?粒子?なんのこと?」
「吸血族、小さく…分裂、する。……粒子化」
「もしかして霧化のこと?」
「…………正式には、粒子化」
へえ〜。そんなこと誰も教えてくれなかったなぁ。そんなことより、まずは動きを止めよう。これ以上動いてもらっては困る。
ズズズズズ……。
「…………無駄」
な!?止められない?いったいなにを?
「影、形……作らない。吸血族……縛れない」
自分を火の玉で囲んでいる!
「俺、熱いの…平気」
鱗か。それにしても経験が豊富なようだ。過去に誰かと戦ったのだろう。火の玉が消えるまで待つか。
「攻撃…しない?なら、待つ」
「ねえ、シルフィーなにもしないの」
『出来ナイ、ガ正シソウデス』
『吸血族ニ対シテアノヨウナ対処ガ出来ルノカ。竜族ガ恐レラレルダケアルノォ』
「なんだ?ビビってるんじゃないか?まあ、無理もないか」
「おじさん誰なの?」
「俺か?俺はバレットだ。よろしくな」
「リリィなの」
『ドウシタンジャ?コンナトコロデ』
「ちと仕事でな。久しぶりに賑わってたから見に来たんだよ。そしたらシルフィーが出てるじゃないか」
『バレット、ナンデモ引キ受ケルコトハ無イト思ウガ』
「世界で俺だけを頼ってくれてるのに断るなんてできるかよ」
『バレットラシイノオ』
パアン!
一斉に弾ける音。同時に影が出来る。今しかない!
「………ほう。珍しい」
これは防げないはず。
ブチッ。
「………とれた。フフフ、痛みだ。痛み、久しぶりだぁ」
腕を捥いだ。だが、様子がおかしい。喋り方が変わったような。
「アハハ、ははは。生きてる!俺は生きてる!血も出る!腕は………まあ、いいだろ。ハハ、ありがとう。出て来なよ」
ズォォ!ドサッ。
強制的に影から出された!?意味がわからない。こんなこと可能なのか?こんな奴に勝てるのか?否、今の私では無理だ。なにも出来ずに終わる。それどころか死ぬ。殺される。だって、目が、オーラが殺気を放っているから。口は笑っている。身体は脱力状態。腕は、戻ってる!?付けたのか?完全に元通り、機能してる。
私は化け物という者に遭遇してしまったのだろう。
「そういえば、名前がまだ…だったね。俺はロスト。どうせ、ここだけしか呼ばないから後はいいよね。ダルいし。えっとぉ〜、一応…竜族人型最強やってます。ドラゴン型以上の強さって言われたことあるよ」
ああ、やっぱり。
「まあ、実際やったら俺のが上だったんだけど。アハハハハハハハ!」
や!私だ。年末年始は忙しいよね。私も掃除して、蕎麦食べて、餅ついて食べて、寝てと疲れたよ。と言うわけでまた次回!




