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ゆるゆるエルフ系ヴァンパイアの旅日記  作者: ぬるま湯
3人はゆるくいきたい
26/40

夜の都

やっと2つ目の都です。寄り道しすぎたなあ。

「静かだね」

「そうだね」

「だれもいないの」

風を受けて進む船で東の都を出て次の目的地、北の都・ノクスに到着したんだけど……。

『当然ダ。ココハ通称、夜の都と言ワレテイル。昼ニ活動シテイルナンテ事ハナイ』

『主ニ吸血族ノ日光ニ弱イ者、獣族ノ夜行種、他ニモイナクハナイデス。イルトシテモ、ココデノ生活ニ溶ケ込ンデイルノデショウ』

「えっと、じゃあ夜までどうすればいいの?」

「ご心配なくぅ。昼でもちゃんと案内できますよぉ」

「うわあああぁぁぁ!」

どこから出て来た!?全然気づかなかった。足音も匂いもしなかった。どういうこと?

「驚かせてしまいましたぁ。申し遅れましたぁ。(わたくし)ニュクスという者ですぅ。ノクスでは珍しい昼の案内人なのですぅ」

「男?」

「いえ、どこからどう見ても女ですよぉ」

そう言うけど、中性的な顔、胸はペタン、髪は短い、服装は男物。どう見ても男にしか見えない。

「疑ってますかぁ?仕方ないですねぇ。特別ですよぉ」

そう言うとニュクスは服を脱ぎ始めた。

「待って!ストップ、ストップ!わかったから脱ごうとしないで!」

「あなた方以外だれもいませんしぃ、別に良いかと思いましてぇ」

「そうだとしても外で脱がないでしょ!」

「どの口が言ってるのかな?」

「う、セラ、あれは昔の事だよ?」

「今でも時々や…」

「うわー!わー!きこえないー!」

「なんでニュクスは脱ぎたがるの?」

リリィ、それは聞いてはいけない気がするよ。

「なんでと言われましてもぉ。なんかぁ、興奮するじゃないですかぁ。もしかしたら誰かに見られてるんじゃないかなぁ。むしろ見せたらどうなるのかなぁ。そう考えるとぉ、なんだか身体が熱くなってくるのですよぉ」

やばい、これは露出趣味の持ち主。気づいたら全裸もあり得る、かも。

「まぁ、仕事中はぁやりませんけどぉ」

「そういう問題じゃないと思うよ」

「他にも案内人はいないのですか?」

「いますよぉ。でもぉ、他の人を案内中なのですよぉ」

「そうですか。……ねえシルフィー、用事があったよね?」

「え?ああ、うん。あったねえ」

「それじゃ、私たちはこれで。何かあったら聞きに来ますね」

「そうですかぁ。自分たちだけで歩くのも楽しみの1つですよぉ。夜はノクスの中心にいますのでぇ〜」

セラよくやった。実際に用事はあった。嘘ではない。



移動中、ママから影の遣いが来たのだ。

『そろそろ北の都に行くころだと思って、1つ伝えておきたいの』

「伝えて、おき…たいこと?」

『ええ、北の都に私の両親、つまりシルフィーの祖父母にあたる人が住んでるわ。よかったら探してみて』

「私、うぷ。おじいちゃんと、おばあちゃんの顔…覚えて、ない…んだけど」

『名前はジュラとマーレイ。祖父がジュラで祖母がマーレイよ』

「名前だけで…探せ、と?」

『着いたら向こうから寄ってくるんじゃない?孫の顔と匂いは何千キロ離れていてもわかるぞー!って言ってたし』

「怖いね、うぷ」

『シルフィー、まさか酔ってるの?』

「うん」

『船に弱いのね。乗せたことないから知らなかったわ』

「うぅ、私も…初めてだよ」

『まあ、頑張りなさい』

バサッバサッ………。



「はぁ。探したくない」

「探さなくても来ちゃうんでしょ?仕方ないわよ」

「探すとしても人がいないの」

「しょうがない。宿見つけよう」

「宿探し。手分けしましようか」

「5分後にここに集合なの」

「了解」



宿にて。

「疲れたー」

「圧倒的に宿が少ないわね」

「広すぎ、なの」

レインの2倍はあるだろう。そして宿が少ない。つまり、5分じゃ絞れなかった。宿を全て探し出し、値段を比べて、最安値かつ状態の良い宿に行くのがいつもの流れ。ニュクスに聞けば早かったのかな?

「夜まで暇だね」

「疲れたから私は寝るわ」

「リリィはお風呂行くの」

「一緒に入ろうよ」

「シルフィーも入るの?」

「他にやる事ないし」

まだまだ日は暮れないし、探しても起きてるかわからないし。こんなに暇なのは初めてだ。



お風呂から上がって、そのまま夜まで寝ていた。ノクスの人々はこれからが活動時間。静かだった都が突然賑やかになったのだ。

「昼と夜で大きく違うね」

「月の光だけでよく活動できるわね」

『ココニ住ム者達ハ暗闇デモ昼間ノヨウニ見エテイル。シルフィーノヨウニナ』

「リリィは見えてるの?」

「気配なら感じるの。避けるくらいはできるの」

「リリィって、なんかすごいよね」

「見えてるわけじゃないんだよね」

「行動は難しくなるね」

「そんなことないと思いますよぉ〜」

「きゃあ!ニュクスさん!?驚かさないでください!」

窓から顔を出してきたニュクス。本当に気配がない。

「失礼しましたぁ」

「何しにきたの?よくここだってわかったね」

「皆さんの案内をと思いましてぇ。ちなみに勘ですぅ」

「で?行動が難しくないとは?」

「はいぃ。ノクスの水路には夜間に光る石が沈んでいますぅ。そしてぇ、こちらに光る石を用意しましたぁ」

「おお〜。そんなに眩しくない」

ピカー!ってならないみたい。ぼや〜って感じ。

「住民のことを考慮した結果ですぅ」

「これ後で返すね」

「いえいえ、差し上げますぅ。この石ぃ、実は地竜からもらっているものでしてぇ。いっぱいあるのですよぉ」

「地竜が近くにいるの?」

「はいぃ。ここから南に行くといますぅ」

「へぇー。今度探してみよう」

「ではぁ、(わたくし)はこれでぇ」

「ありがとね」

窓から帰っていった。ここ確か3階だったような。まあいいか。

「行こうか」

「うん」

「ノクス探索なの!」



「娯楽施設が多いね」

「酒場もいっぱい」

「露出度の高いお姉さんもいっぱいなの」

「そこは見なくてもいいと思うよ」

確かにどこ見てもいるけど。

「ねえ、シルフィー。あそこ」

「ん?なになに?あ」

セラの指差す方向に目を向けると、見覚えのある看板が見えた。

「なんでここにもいるんだろう」

「分身してるんじゃない?」

と話しながら前を通り過ぎ……。

バタン!

「どこだ!どこにいる!」

中から1人の男性が出てきた。

「おい!本当に店の前にいるんだよな?」

「もちろん。僕は嘘をつかない。3人組で歩いてるよ」

「ちょっと、いきなり飛び出さなくてもいいでしょう」

「なに言ってんだ!行っちまったらどうすんだ!」

「知るかい。だいたいあんたは顔と匂いは覚えてんじゃないのかい?」

「バカ、昔の顔と今の顔は全然違うだろ!きっとえらい美人になってるに違いねえ」

なんだろう。会話の内容がママの話で聞いたのと似てる部分がある。

「匂いは変わらないのかい?」

「匂いは変わらないとは限ら、………」

「どうしたんだい。急に黙って」

「静かに!今、俺の鼻にスッときた。間違いねえ。あっちだ!」

「ちょい待ちなったら。あーもう面倒だねぇ」

こっちに来る。よく見ると獣族じゃない。なんで嗅覚が発達してるんだろう。いやいや、そうじゃなくて。

「ねえ、私思うんだけどさ。あの人…」

「奇遇だね。私もだよ」

「リリィもそう思うの」

男性は私たちの目の前で止まり、ガシッと私の肩を掴んだ。

「おまえだ!」

「誰ですか?人違いではないですか?」

「いいや、俺の鼻に狂いわねえ。そしてこの目も狂ってねえ」

「いやいや、私顔見せてないですし」

「いーや、俺は正しい!」

「なんで自信満々なんですか!」

「そこまでにしな!」ガン!

男性の後ろから、追いついた女性が踵落としを頭に直撃させた。

「ってーな!なにすんだ!」

「いきなり女性に迫るなんて気持ち悪いんだよ!ごめんね、うちの夫が迷惑かけて」

「いえ、大丈夫です。それより、頭大丈夫ですか?」

「心配ないよ。こいつの回復力は異常なんだ」

うん、絶対あれだ。ママの言ってた人だ。

「俺は一刻も早く孫に会いたいんだよ!」

「会う前に昇天させてあげようか?」

「あのー。そのお孫さんって」

「ああ、俺の可愛い可愛い孫のことか?名前はな、シルフィーってんだ」

「娘からそろそろ着くと連絡があってね」

やっぱり。祖父母だ。見た目が若いんだけど。30代くらいにしか見えない。しわが少ないし、衰えてないんじゃない?

「そのシルフィーは私です。ううん、私だよ。おじいちゃん、おばあちゃん」

「ほらな、俺が正しかっただろ、ってえぇぇぇ!?」

「なんであんたが驚いてんだい。見りゃわかるだろ」

「だって、想像より美人で。うぅ、もう可愛いじゃねえ。美しい!」

「だから気持ち悪いって言ってんだよ!」バシ!

「痛い!なにもビンタしなくても」

話が進まない。

「話したいことがたくさんあるんだ。うちに案内するよ」

「わかった」

「2人も招待するよ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございますなの」



「というわけで、ママもパパも元気だよ」

「そうかい。元気にやってんのね」

「あいつらしいな」

「ねえ、おじいちゃんたちは何歳なの?」

「お?それを聞くか。当ててみな」

「う〜んとねぇ。70!」

「ブッブー。全然違うぞ」

「当たるわけないじゃない。ただでさえ見た目と年齢が違いすぎるってのに」

「いいじゃん。こういうの定番だろ?」

「女子ならね」

「わー!わかったわかった!わかったから殴らないでくれ」

「で何歳なの?」

「121歳」

「ええー!」

「あたしはこいつより年下だよ」

「ああずるいぞ!」

「ああん?」

「いえなんでもないです」


と終始このテンションで会話が続いた。

「しかし、あれだな。俺らの血からよくもまあこんな美人が生まれたもんだ」

「なんだい?あたしに対する皮肉かい?」

「違う!喜びのあまりつい出ちまったやつだ」

「内容否定にはなってないね。やっぱり皮肉かい」

「いやー!ギブギブ!折れちゃうから!それ以上は逝っちゃうから!」

「腕の1本くらい大したことないさ」ボキ!

「ぎゃあああぁぁ!」

「さて、こいつが芸を披露してる間に続けるか」

「なにを?」

「これからのことさ」

「これから?私はまだ旅するよ」

「旅を終えた後だよ。どうだい?家族で一緒に暮らさないかい?」

「それって」

「あたしたちがメルディーの方に行っても、メルディーがあたしたちの方に来ても、どちらでもいい。ただ一緒に暮らさないかって言ってるのさ」

「でも、ママは色々あってあの場所に行ったんじゃ」

「はあ、なんだい。あいつ正確に話してないのかい。情けない。そうだね、昔話でもしようか。メルディーが離れて暮らす理由も含めてね」

やあやあ、元気だった?私だよ。やっとノクスに着いたね。ざっくりとノクスについて話そうか。ノクスは娯楽で成り立っている都なんだ。そこらへんで賭けが行われるし、ヴェルノが好きなゲームが毎日行われている。世界では色んな呼び方があるんだよ。お金の都、娯楽天国、ノクスの特徴そのまま言ってるだけなんだけどね。そうそう、吸血族が血を賭けてたのには驚いたよ。おっと、そろそろ時間だね。それじゃあ、また次回。

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