吸血族にしてはいけないこと
今回短いです。たまにはいいよね。
「んぅ、うーん。……………ひっ!」
「あは、やっと起きたぁ〜」
「シルフィー、なにしてるの?」
「なにって、セラに血を貰おうと思って起きるの待ってたの」
ああ、そういえば許可を取ってから吸ってと言ったっけ。
「わかった。いい…」
待って、なにかおかしい。いつものシルフィーじゃない。
「待って、シルフィーなにかあった?様子が変だよ」
「なにもないよ〜。いつもどおり元気なシルフィーだよ」
いやいや、いつものシルフィーはこんなではない。もっと静かだ。
「よし、じゃあシルフィー一旦離れ…」
「いい?吸っていいの?行くよ!」
「待って待って、まだいいって言ってない!」
「焦らさないでよお〜」
「焦らしてないよお〜」
コンコン、コンコン。
窓の方から音が、影の遣い?
「シルフィー、窓に影の遣いがいる」
「ママのだよ」
「入れてあげようよ」
「ええ〜」
「なんで嫌がるの?嬉しいでしょ?」
「だって、血を吸うのが先だもん」
「入れてあげたら考えてあげる」
「わかった。ほら、入っておいで〜」
すごく単純で扱いやすい。
バサバサバサ。
『もしも〜し。聞こえる〜?』
メルディーさんだ。
「もしもし、はい聞こえます」
『あら、セラちゃん久しぶり。元気にしてる?』
「はい。みんな元気です」
『みんな?ああ、シルフィーとグラントね』
「2人増えまして、森霊族のリリィと精霊のリムです」
『まあ、賑やかでいいわね。今度見てみたいわ』
「帰ったら紹介します」
「ねえ、まだぁ〜?ねぇねぇ」
「ちょっと待って、話してるから」
『その声はシルフィーね。なんかキャラが変わったのかしら?』
「実は、今日の朝からこの調子で、昨日はなんともなかったのですが」
『うーん、ちょっとよくわからないわね。心当たりとかある?』
「ないです」
「食べちゃうぞ〜!」
「大人しくしてて」
『おや?どうしたメルディー。シルフィーたちと話してるのか?』
バレットさんだ。
『ええ、なんかシルフィーが狂ったみたいで』
そこまで言ってない。
「ずっと血を吸いたがってきます」
『血を?うーん。私はあれかなって思うんだけど』
『間違いなくあれだと思うよ』
「それってなんですか?」
『セラちゃん。あなた、シルフィーが血を欲しがるときに断らず吸わせてた?』
「はい」
『1週間に1回の周期で吸血衝動がくるのは知ってるわね?』
「はい」
『1週間に2回あるいは3回でもあげてた?』
「………はい」
なんとなく自分が関係してることがわかった。
『これは間違いないわね』
『ああ、あの時と一緒だ』
「なんですか?あの時って」
『ちょっと長くなるけどシルフィーに吸われないでね』
「はい」
『あれは私たちが、まだセラちゃんくらいの時……』
私とバレットはまだ結婚してなくて、でも同棲はしてた。親に認められてて、でもまだ早いと感じてて、今考えれば結婚生活と何も変わらないのだけれど。
その時私は、バレットを吸血済みよ。私が欲しいと言えばくれる。不自由なく、負担もなかった。でも、ある日それは突然きた。
私は吸血することしか考えられなくなっていた。自分でコントロールできず、その時の記憶もない。ここからはバレットが話すわ。
その時、メルディーは俺に襲いかかってきたんだ。目はとろ〜んとしてて、息も荒く、俺は命の危機を感じたね。吸われたら枯れてしまうと思ったよ。血のことしか頭にないから能力とか使われなくて、助かったよ。後で両親に聞いてみたら、血液の過剰摂取による吸血衝動サイクルの乱れ。つまり、血の与えすぎでおかしくなったってこと。
「あ、じゃあ、私はシルフィーに血を与え過ぎたんですね」
『そういうこと』
「それで、バレットさんはメルディーさんをどうやって戻したのですか?」
『方法は色々あったよ。吸血以外のことで頭をいっぱいにするとか。血を抜くとか』
「よくわからないのですが」
『そ、それはあれだ。あのー、ね』
『ちゃんと言ってあげなさい。セラちゃん恥ずかしいだろうけどよく聞いてね』
『そんなこと言うなよ。相手は女の子だぞ』
『セラちゃんは大丈夫よ。年頃だし、知識くらいあるわよ』
『なおさらダメだろ』
たぶん、人に言いたくない恥ずかしいことなんだろうな。
『あのね。あの時バレットは私を快楽で頭をいっぱいにしたのよ』
「か、快楽、ですか」
『そう快楽。よかったわ〜。バレットったら積極的でね』
『こら!それ以上言うな!セラちゃん困るだろ!』
『ここか?ここがいいのか?とか言ってきゃあー!』
私はいったい何を聞かされているのやら。
『まあ、こういうやり方もあるよってこと』
『もう1つの血を抜くのは少しつらい思いをするかもしれない』
「やっぱりですか」
『快楽の方は症状が出たら与えてを繰り返して1週間ごとに吸わせて元に戻すのよ』
『血を抜くのは、手首などを切ってある程度血を流させるんだ。正直これが1番早い。終わったら吸血衝動サイクルを元に戻すだけだから』
「どっちもつらい気がします」
『まあ、頑張って』
『対策しないまま吸われると悪化するからね』
「わかりました。なんとかしてみます」
『ねえバレットぉ。私も血が欲しいなぁ〜』
『今日はダメだ。あと2日後だろ』
『ええ〜。待てないわよぉ〜。あの時みたいにする?』
『思い出したからってからかうな!』
『きゃっ!押し倒さなくてもいいじゃない。優しくして』
『変なこと言うな!向こうは見えないんだぞ!』
『あぁん。そこは……だめぇ』
『何もしてないだろ』
『見えてないからって、そんな……激しいわ〜!』
『わああ!やめろ!わかったからやめろー!』
………。
なんだったんだ。なんか、そのうちシルフィーの弟、妹が出来てそうで怖い。ていうか、メルディーさん記憶あるよね。って今はそんなこと考えてる場合ではなくて。
「むうぅ〜。セラの意地悪」
「もう、こうなったのも私の責任よね。でも、快楽って……」
「なんだか賑やかだったの。おはようなの」
「おはようリリィ。ちょっとシルフィーおかしくなってるから」
「え?戻るの?大丈夫なの?」
「たぶん。解決方はあるけど」
「どうすればいいの?」
「か、快楽を与える……とか」
「快楽?」
『気持チヨクサセレバ良イノデス』
「リリィ知ってるの。こうやってやるの」
「え、ちょなにやって…」
「ん?リリィどうした、んひゃあ!」
リリィがシルフィーを押し倒して身体のいろんな場所を舐める。
ペロッ。
「ひゃう」
ペロペロ。
「あはは、はは、くすぐったい。あはははは」
「こことかもいいの」
「ひぃ、そこはだめ。だめぇー!」
シルフィーの胸を舐め回し、再起不能にさせた。どこで覚えたのかは聞かないでおく。
「これでいいの?あっけないの」
「たぶん。次に起きて変わらなかったら最終手段で」
あれから何回も同じことを繰り返した。リリィと私で交代したり一緒にやったり。恥ずかしかった。でもリリィだけが相手してる時、自分でもよくわからないモヤモヤしたものを感じた。なんだったのだろうか。
「うぅ、うー。血、血が足りない。セラ、血を吸わせて」
悪化してる気がする。もう血を抜くしかないみたい。嫌だな。大好きなシルフィーを傷つけるなんて。見るのも嫌だし、するのも嫌。でも、助けるためなら。
「シルフィー、ごめん」スパッ……。
ポタッポタッ。
シルフィーの手首を切った。切ってしまった。血がドクドク流れ出る。
「痛い!痛い痛い痛いイタイイタイいたい!」
「我慢して!あなたの為なの!」
「私の為ならなんで痛くするの!吸わせてくれればいいじゃない!」
「それがよくないの!」
「痛いのはイヤ!イヤァァァ!」
「私だって嫌だよ!痛がるシルフィーを見て、私がなんにも感じないと思う?つらいよ。胸が苦しい!見たくもないし、したくもない!でも、………これしかないの」
涙を流し、じっと見つめるシルフィー。私も見つめる。
「ごめんね、シルフィー。私がしっかりしていれば、こんなことしなくて済んだのに」
「う、うぅ。セラに怒鳴られたの…初めてだよ。そんな顔を見るのも初めて」
「見せたことないもん」
「そんなに必死になられると、応えるしかないよね」
「うん。頑張って。ずっと側にいるから」
それからしばらく血を抜くと勝手に傷口は塞がった。
これも吸血族の能力なのだろうか。
違った。
後でメルディーさんに話を聞くと、メルディーさんとシルフィーが特別なのだそうで。メルディーさんは吸血族の中で特異体と呼ばれている。その原因が、異常な自己再生能力。と言っても切断したものが元に戻るのではなく、傷口が勝手に塞がる程度。これが血液過剰摂取状態になると、切断しても元に戻るらしい。
これでまた1つ知識が増えた。あんなことは絶対に起こさない。
やあ、わたしだよ。ぬるま湯が悩んでるよ。このあとどうやって話を進めるか。ネタ切れに近い状態らしいよ。まあ、なんやかんやで続けるやつだから、気長にまってあげて。それじゃ、また次回。




