レイン祭
どうも皆さん、イラストを上手く描けるようになりたいぬるま湯です。いつもより投稿遅くなり申し訳ありません。
セラが竜族探しに行ってる間に店長に呼び出された。
「どうしたんですか?何かあったんですか?」
「実はね、君たち3人に頼みたいことがあるんだ」
「はあ、でその頼みたいこととは?」
「明日この東の都レインでお祭りがあるのは知ってるかい?」
「そうなんですか。どおりでいつにも増して賑やかなんですね」
「でね、その祭りの中で行われる毎年恒例のイベントに参加してくれないかな?って言うのが頼みなんだけど」
「まあ、いいですけど。なんでそんなに必死なんですか?」
「いやなに、この店初めてから一度も参加したことがなかったんだよ」
「この店随分長いことやってるじゃないですか」
「そのイベントは女性限定で僕は出られないんだ」
「ああ、店長男ですからね。女性の店員さんがいたのでは?」
「出ても優勝できないと断られ続けてね」
「そんなに辛いんですか?お祭りなのに?」
「ただのイベントじゃないんだよ。上位3位に入ると賞金が出るし、内容は毎年変わるから対策できないし、絶対王者的な店もいるし」
「勝てる自信がないとやらないですよね」
「リリィは出てもいいの!」
「本当かい!?うれしいな。でも参加条件は3人以上なんだ。後で話し合って僕のとこに連絡をしてよ。手続きはこっちでするから」
「まあ、私はどっちでもいいですけど」
「良い知らせを待ってるよ」
「はい、影を送るので窓開けておいて下さい。ちなみに優勝したらいくらですか?」
「金貨50枚だ」
このとき私の中で絶対参加すると決めた。
「セラ姉遅いの」
「そろそろ日が暮れちゃうね」
帰ってくる気配がない。セラが時間を守らないのは珍しい。
「よお。セラちゃん帰って来たか?」
「常連のおじさん。まだ帰って来ない」
「無事だと思うぞ。今日の海は静かだ。それに、帰りは遅くて当然だ」
「なんでですか?」
「セラちゃんは好きなことを今楽しんでる。楽しいことしてるとな、時間の経過なんて忘れちまうんだよ。気づいたら日が暮れてるなんてよくあることさ」
「そうですけど。待つ方は心配になりますよ」
「そうだよな。お、帰って来たみたいだぞ」
おじさんに言われて顔を向けるとセラは静かに陸に上がっていた。
「あはは、遅くなっちゃった。ただいま」
「もう、遅くなったじゃないよぉ〜!心配したんだから!」
「セラ姉おかえりなの。無事でよかったの」
「心配させちゃったね。潜ってると光が来なくなるからね。いつの間にか暗くなってて、急いで帰って来たんだ」
「無事でよかった。心配させたお詫びに言うこと1つ聞いてもらうからね」
「うん。その前に報告に行かせて」
「おーい!嬢ちゃん帰ってきたぞー!」
「なに?本当か!?どんなだった?話せたのか?」
「はい。話せましたし、お土産ももらいました」
「鱗じゃないか。よくもまあこんなの貰えたな」
「売ったら高いらしいです」
「だろうな。竜族の鱗を使ったものはどれも高いからな」
「これあげます」
「は?唐突すぎて意味がわからんぞ」
「私はこれの欠片だけ持っていれば良いと言われました。旅にこの大きさは正直邪魔でしかないです」
「そうか、嬢ちゃんがいいなら貰っとくよ」
「どうぞ。好きに使って下さい。あ、そうだ。お話はできたんですけど、水中に住む者以外は聞こえないようです」
「陸の奴らとは会話できないのか」
「はい、陸の者が水に入ったとしても聞こえません。ですが、一方的に聞こえてはいるみたいです」
「そうか。今度会ったら、このことを話しておくよ」
「喜ぶと思います。では、話は以上です。今日はありがとうございました」
「こちらこそ。早く帰って寝ろよ」
報告を終え宿に戻った。
「よし、言うことを聞いてもらうよ。約束忘れてないよね」
「さっき言われたこと忘れるわけないでしょ」
「では、セラさん。突然ですが、私たちと一緒に明日のお祭りのイベントに参加してもらいます」
「え?お祭り?イベント?」
「ただのお祭りではありません。お店のプライドをかけた一大イベントなのです!」
「店長に頼まれたのね。2人が出るなら断らないわよ」
「つまり出ると?」
「うん」
「わかった。店長に報告用影の遣いを送っとくね」
ズズズ…。
影の鳥。伝書鳩的なやつ。違うところは私の声をそのまま伝えてくれるとこかな。
「では、明日に備えて今日は早く寝ましょう。おやすみ」
「なんかシルフィー、テンションおかしいわね」
「楽しそうなの。リリィも楽しみなの」
「がんばろうね」
帰ってきた遣いに起こされ、準備完了。いざ会場へ!
「人がいっぱい。こんなに人がいたんだね」
「お祭りなだけあって、たくさん屋台があるよ」
「美味しそうなの」
「おお、3人ともよく来てくれた。そしてありがとう」
「まだ何もしてないんですけど」
「出てくれるだけで店の宣伝になるんだ。優勝したらもっと宣伝になるけどね」
「出るからには優勝なの!」
「やる気があってよろしい!さあ、あのステージの横が受付けだ。頑張ってね!」
店長がいつになく笑顔。眩しい、眩しいよ。
「おはようございます。受付けですね。3人でシルフィーさん、セラさん、リリィさん、店名が『漁師の酒場』ですね。お待ちしておりました」
「よろしくお願いします」
「集合はこのステージに午前10時です。お店の制服を着用して来て下さい。それまでは自由に行動して構いません。もちろん来ない場合は失格ですので」
「わかりました」
午前10時。ステージにはたくさんの女性店員。そして派手な衣装の司会者。ん?ちょっと待って。どこかで見たことあるような…。
「さあ、待ちに待ったイベント『かわいい店員さん大集合!』開催です!司会はこの僕、ヴェルノです。よろしく!」
ワアアアアア!
ヴェルノだ。あのときのゲーム大好き変態男。
「今回、出場してもらった店はなななんと!30店!これは多いですね。多いだけあって、参加者もたくさん!多すぎて紹介できないのでちょいちょいやっていくよ」
「なんか気持ち悪いの」
「なんでいるのやら」
「キャラ変わってるわね」
「さっそく第1回戦いきます!お題はこちら!『借り物競争』ルールはまあ、みんな知ってるよね。紙に書いてある物を会場の人から借りて持ってくる。簡単でしょ?各チーム1人参加です」
「単純に考えてリリィだね」
「わかった行ってくるの」
「あ、言い忘れていましたが精霊の協力はこのイベント中禁止!各種族の能力の使用も禁止です!使ったら失格ですよ〜!」
先に言ってくれてよかった。
「各チーム出揃いました!それでは、始めます!3、2、1……スタート!」
「何が書いてあったんだろう」
「さあ、見てればわかるよ」
「お!最初に借り物に成功したのは『漁師の酒場』のリリィちゃん!一直線に戻って来ています!」
「早いわね」
「かわいいは正義よ。自分の者を持たせてあげたくなるんじゃない?」
「さあ、リリィちゃん紙に書いてあるのは……帽子。そしてその手に持っているのも帽子です!リリィちゃん借り物成功!1番です!『漁師の酒場』10ポイント」
「わーい!1番なの!」
「引いたカードがよかったのね」
「いいスタートができたわね。このままいきたいところね」
「そこまで!クリアできなかった下から15チームは0ポイントです。次頑張って下さい!では第2回戦…」
その後ポイントを稼いで行ったが『漁師の酒場』は4位。1位との差は20ポイント。なかなかに厳しい状況だ。
「それでは、次で最後です!みなさん諦めるのは早いですよ。最終戦はこちら!『みんな鬼!みんな餌!』えー表現はあれですが、そのーすみません。このネーミングセンスの無さは自覚しています」
これがヴェルノなのだろうか。
「ルールは簡単!各チーム全員参加の鬼ごっこです。あ、みなさん凍り鬼って知ってます?鬼に捕まったらその場で凍って一歩も動けなくなる。で、仲間にタッチしてもらったら動けるようになるってやつなんだけど」
凍り鬼の存在は知っている。ルールも知ってる。でもやったことがない。できるだろうけど。
「今回はですね。各チームになんと人魚族がいますので、回復役をしてもらいましょう」……
まったく、ヴェルノの説明が長いのでまとめよう。
・範囲はレイン全体。
・スタートは各チームの店の前から。
・制限時間1時間。
・イベントルールを破った者にはペナルティー。
・人魚族は中心から枝分かれしている水路を自由に泳ぎ、凍った仲間を回復用の玉を当てて救助する。
・回復は人魚族しかできないので、仲間同士での回復はできない。
・1人捕まえるごとに5ポイントがもらえる。凍った相手を連続して触ってもポイントは入らない。
「中継は精霊さんたちに協力してもらいまして、こちらの壁に映してもらってます。凍らせるのも精霊さんたちです。ありがとうございます!あとで木ノ実食べ放題やります」
ちなみにヴェルノの声を大きくしてるのも精霊である。
「各チーム準備ができたようです。それでは始めましょう。制限時間は1時間。捕まえて捕まって助けられて、もう好きにやっちゃって下さい!『みんな鬼!みんな餌!』開始です!」
「さて、作戦通り固まって動くよ」
「散らばるとセラ姉が大変なの」
「私は問題なかったんだけど」
「1時間持たないでしょ」
チームによっては散らばって行動するだろう。捕まらなければいいのだから。
『おおーと、現在1位の『冥土の土産』早くも1チーム全滅させました!』
「名前のとおり容赦ないね」
「名前関係ないと思う」
「とにかく動くの」
「捕まえないと差が開いちゃう」
『各チーム、大奮闘です!回復が間に合わないチームも出て来ているようです!これは頭脳戦でもありますから、考えなしで動くと餌のままです!』
まったくその通りだ。単独行動なんて無茶だ。それをやっているのが『冥土の土産』。捕まったと言う実況が聞こえない。
「リリィ!そっち行った!」
「任せるの!」
「きゃあ!」
『勢いが止まらない『漁師の酒場』!現在2位です』
「2人の連携ってすごいわね」
「でも、このままだと1位には届かなそう」
「捕まえるしかないの」
「気配がまったくないんだよね」
『おおっと、ここで『冥土の土産』の1人がペナルティーです!内容は1分間その場から動けません。凍った状態ではありませんよ』
「ここでミス?」
「いや、違う。わざと動けなくなって、敵を誘う罠」
「でも上手くいけば『冥土の土産』を全滅させられるの」
「仲間の周りで隠れてるはずだから、慎重にいくよ」
「さて、シルフィーたちはどう動くかな?これは僕からのプレゼント。上手く使ってくれよ」
『ナア、ワシラ今回出番ナイノカ?』
『ナイデスネ。シカシ、裏デ大事ナ役ヲシテイルノデ実際出番アリトモ言エマス』
『マア、木ノ実食ベ放題ガアルカライイガ』
『相変ワラズ木ノ実ガ好キナノデスネ』
『ソレシカ食ベラレンカラナ』
予想通り、釣られて来たチームを『冥土の土産』が捕まえていく。時間はあと5分。このままだと逆転できなくなる。
「次に奴らの内1人が捕まえたら行くよ」
「了解なの」
私はリリィを投げる体勢になる。
「来たの」
目標が捕まえようと手を伸ばす瞬間、私は全力でリリィを投げた。音を出さずに。
「ぐはぁ、どこから…」
1人捕まえた。リリィはカウンターされていないので無事。
「リリィそのまま暴れていいよ!」
「わかったの!」
リリィが普通では見えない速さで捕まえて行く。これで全チームの注意がリリィにいく。
『リリィちゃんが動いたぁ!1人、また1人と捕まえていく!現在みなさんにもわかるように少しゆっくり動かしています』
まあ、そうなるよね。建物の壁を蹴ったり、後ろから抱きついたり、速くて激しいから追いつかないよ。そろそろ動くかな。退路は大体わかる。地下水路を使っているはずだ。
「ここはやばい。退却!逃げるんだ!」
「逃がさないの」
「ひぃ!」
『リリィちゃん暴走状態です。3チームを全滅させました!』
「はあはあ、ここはわからないはず」
「そうね。レインの範囲内は地下水路も含まれている」
「でも、みんなはそこに気づかず表だけを走り回る」
「そう、それで私たちは……って、誰!?」
「いやいや、誰って私ですよ。ほら、この制服でわかるでしょ?」
「暗くてわからないのよ!」
「わかりました。私は『漁師の酒場』のシルフィーです。さあ、私の餌になって下さい」
「誰がなるか。2対1だぞ。勝てるわけ…」
「おや〜?動きが遅いですよ?」
「な、いつの間に」
「べらべらお喋りが過ぎるのでは?さっさと捕まえればいいものを」
「ち、だったらここから…開かない!?」
「リリィが意味もなく暴れているとでも?残念、出口を塞いでもらいました」
「負けよ。さ、早く捕まえなさい」
「つまらないですね。もっと抵抗すると思ったのに」
ゆっくり近づいていく。
「あなたたちの身体能力に勝てるわけないわ」
「そうですか。では…」
「隙だらけよ!」
「どこがですか?」
伸ばしてきた手をするりと回避する。
不意を突こうとしたのだろうが演技が下手すぎる。
「なんなのよ!今年も勝てると思ったのにぃ!」パキパキッ。
「油断し過ぎですよ」
『おや?終了直前に地下から何か出て来ましたねぇ。……なんと!地下から凍った『冥土の土産』の2人が出て来ました。そして、もう1人『漁師の酒場』のシルフィーちゃんです!地下で捕まえたと言うのでしょうかぁ!これで『漁師の酒場』チームに10ポイント!よって1位と2位が入れ替わります!優勝は初出場の『漁師の酒場』チームぅぅぅ!!』
ワアアアァァァァァ!!!
「結局私いらなかったんじゃない?」
「いやいや、セラが地下水路にいなかったらあんなに余裕持てなかったよ」
「あのときのシルフィーちょっと怖かったわよ」
「そう?恐怖を与える演技だから嬉しい。けどなんか複雑な気分だったり」
「リリィも頑張ったの」
「リリィもありがとね。楽しかった?」
「あんなに沢山の人と鬼ごっこしたの初めてなの。すっごく楽しかったの!」
「よかった。楽しいが1番。他のチームは楽しめてなさそうだったけど」
「さあ、みなさんお疲れ様でした!上位3チームには賞金が与えられます。どうぞ」
3位は金貨5枚。2位は金貨10枚。1位は…なんと金貨50枚。知ってたけど。
「なかなかの金額でしょう?4位以下のチームには参加賞がございますので、終わったら配布します。では、これにて『かわいい店員さん大集合!』終了です!」
リリィは疲れて私の背中で寝ている。
「いやー3人ともよくやってくれた!ありがとう。ありがとう!」
「疲れました。ほら、賞金ですよ」
「おお、ありがたい。金貨40枚は君たちのだ」
「ええ!?そんなにいりません!」
「そ、そうですよ!これはお店に使って下さい」
「そうか?なら金貨30枚はもらってくれ」
「それでも、ちょっと」
「いいから。1人金貨10枚、3人で30枚ぜひ受け取ってくれ」
「うぅ〜、わかりました」
「ありがとうございます」
「残りの1週間もよろしくね」
「はい」
「よろしくお願いします」
お祭り終了後
「ヴェルノ!なんでここにいるの?」
「おや?」
「おや?じゃないよ」
「お祭り、イベント、ゲームが起きそうじゃないか。ゲームあるとこにヴェルノあり、ヴェルノいるとこにゲームありだよ」
「うん、言いたいことはなんとなく伝わった」
「でも、なんで司会なんてやってるのよ」
「ん?ああ、あれは毎年僕が担当しているからね。ゲーム内容も僕が決めている」
「だからあんないやらしいルールなんだね」
「やっぱり変態だったのね」
「変態とは失礼な!まあいい、僕はこれから精霊たちに食べ放題を奢らなくちゃいけなくてね。そろそろ行くよ」
「うん、久しぶりに楽しかったよ」
「僕もいいものを見せてもらった。次も期待してるよ」
その日の夜、グラントとリムは幸せそうな顔をして帰って来た。
やあ、私だよ。レイン祭どうだったかな?『かわいい店員さん大集合!』はレインのメインイベントで北、西、南からも見にくる人がいるんだ。こんなことするのレインくらいだからね。実は今回私もレイン祭にいたんだよ?わからなかったでしょ?だって書かれてないもん。シルフィーちゃんたちとすれ違ったよ。かわいいね。おっと長くなってしまった。それでは、また次回。




