シルフィーと不思議な少女
お待たせしました。
ローアさんの店にて
「おかわり!少しでも長く俺の前にいてもらうんだ!」
「させるか!こっちもおかわり!」
おかわり!おかわり!おかわりおかわりおか……。
どうしてこうなったか?簡単な話だよ。今日で2週間が経つの。だからこの街を出ていく。その前に目に焼き付けようとお客さんが必死に注文している。
「同時に言わないでくださいぃ〜。聞き取れないですよぉ〜!」
セラがあっちにこっちにザバザバと出たり潜ったり。人間族の娯楽のモグラ叩きみたい。
「はいよ。左から順に持って行ってくれ。どこだか覚えてるだろ?」
「はい、もちろんです」
厨房から料理が出てくるのが早いなぁ。早く運べていいんだけど。どうやって短時間で作ってるんだろう。
「お待たせしました。いつもありがとうございます」
「いいって気にすんなよ。こっちは好きでやってんだからさ」
サービスでもしてみよっかな。最後だし。
クルリッ☆
「おわぁぁ!なにしてんだ。見えちまうとこだったぞ!」
「いや、……でしたか?」
「すごく良かったぜ」グッ!
スカートの下が見えそうで見えないターンをしてみた。すごく喜んでる。でも、後が大変だな。やっちゃったからね。
「お前ズルいぞ。なあ、シルフィーちゃん!俺たちにもやってくれよぉ!」
「どうしよっかなぁ〜。みんなに見せるには〜ここだよね」
飛び乗ったのはセラが次に出てくる蓋の上。
クルリクルリ
そこにセラが出てくる。
「あれ?重いなあ。ちょっとどいて〜。どかないし、どうなっても知らないですよ〜!」
ザパー!クルクル
「セラちゃんの身長だけ上がった蓋の上に、回るシルフィーちゃん!すげーコラボだ!」
「そして絶対に見えないスカートの下!」
「どうですか〜。みなさん見えてます?」
「「「「超絶可愛いでーーーす!!!」」」」
もうただの飲食店じゃないよね。
「いやー。最後にやってくれたねぇ〜」
「やり過ぎたでしょうか」
「違うよ。嬉しい方のやり過ぎだよ。食料庫が空になっちまった。こんなことは初めてだ。ありがとよ」
「やるなら言っといてよね。突然のことで思考停止したわよ」
「思いつきでやったから、言えなかった」
「2人とも2週間ありがとな。今日の働きの分お金は足しとくよ」
「いいんですか?こんなにもらって」
「いいよ。その代わり、また今度来て欲しいな」
「帰って来たら、顔を出します。2週間ありがとうございました」
「ありがとう、ローアさん」
所持金、金貨10枚、銀貨25枚、銅貨20枚
「さて、そろそろ出ようか」
時刻は午前6時頃。昼間は賑わうから、静かな時間に出ようと昨日話して、今こうなった。すごく眠い。
「自分で時間言っといて、寝ないでよ?」
「だいじょお〜ぶだってぇ〜。おきてるも〜ん」
「しっかりしなさい」ビシ!
「んぐ、……痛い」
セラにヒレで叩かれたぁ〜。
「目覚めたからもういいよ。それ以上は、身体がもたない」
「それじゃあ、出発だね。水辺に着いたら下ろしてね」
街を出て、北に進む。ずーーーーーっと進む。まだまだ進んで着いたところは………。
「ここが大陸の中心なんだね」
この大陸、地図で見ると十字型になってる。その真ん中がここ。
「北は娯楽、東は雨、西は竜の巣、南は平和って書いてある」
『ニシガイチバンツライゾ』
「西は最後だね」
「北も後回しで」
「東だね。でも、行くのは明日で。もう暗くなってきたし」
「そうね」
『フム。ソレナラ、ワシガイイトコロニ、ツレテイッテアゲヨウ』
「どこどこ?」
「シルフィー、乗せて行って」
中心から歩いて10分くらい
『ミエタゾ』
「ふわぁぁ。眠い」
「ちょっと、落とさないでよ?怖いんだけど」
「うん、わかってるわかってる」
見えたのは樹齢何千年も経ってそうな巨大な木。
『コレハ、レイジュ。セイレイカイトコッチヲ、ツナイデルキダ』
「初めて見た。すごいねぇ」
『グラント………ヒサシイ』
「霊樹って喋るんだ」
『セイカクニハ、ネンワ。コトバヲトバシテイル』
「綺麗な声だね」
「セラにも聞こえるんだね」
「うん、グラントの声も少しだけ」
おそらく、霊樹がないと精霊たちはこっちで生きていけない。必要なエネルギーを霊樹が届けることでこっち側に留まっていられるんだと思う。そのエネルギーの影響でセラにも聞こえるようになってるのかな?
『ソノトオリ………シルフィーヨ、ワレニサワレ』
『イウトオリニスルト、ナニカオキル』
「じ、じゃあ失礼します」ペタ
『セラ………キミモダ』
「私も…ですか?えっと、失礼します」ペタ
『ウム、ソレデヨイ。汝ラニ我カラ加護ヲ与エル』
特に不思議な現象が起きたわけではない。霊樹に触れて、霊樹が何か唱えただけ………。
『霊樹ガ加護ヲ与エルナンテ、珍シインダゾ』
あれ?グラントの言葉が聞き取りやすくなってる。
「グラントの声だけ聞こえるよ。姿は見えないけど」
『二人ガ精霊ノ声ヲ聞キトリヤスクナルヨウニシタ』
「ありがとう、レージュおじいちゃん」
『オジイチャン、君タチカラミレバソウナルカ』
『霊樹ハマダ若イ方ダゾ。セメテオジチャンジャロ』
『ドッチデモイイナ』
「じゃあおじいちゃんで」
「あの、さっきから気になってるんですが、後ろに煙が見えるのはなぜでしょう」
『湯ガ出テルカラダナ。精霊界ノエネルギーヲ送ルト熱ガ発生シテナ。ソノ影響デ温泉ミタイニナッタ』
「温泉!?入ってもいいの?」
『モチロンダ』
「しばらく水浴びだけだったから、ちょうどいいね。では、早速着替えて…」
「待って行動が早いって。誰かに見られたらどうするの?」
『心配ハイラン。ココハ精霊ニ案内サレナイト来レナイ場所ジャ。覗キナンテイナイサ』
「ならいいんですけど」
「セラも早く〜。あったかいよぉ〜!」
「だから早いってぇ〜」
「ふぅ〜。ごくらくぅ〜」
「気持ちいいねぇ〜」
宿のお風呂とか比べ物にならないくらい気持ちがいい。結構広いから泳げると思う。泳がないけど。
ん〜〜〜。そろそろいいかな?
「セラ、驚かないでね?」
「何が?」
「ねえ!そこにいるんでしょ?出てきなよ。何もしないから」
ビクッ!?そろりそろり
岩陰にずっと隠れてこっち見てるんだもん。気になってしょうがないよ。
「え?誰かいたの?全然気がつかなかった」
「え、えと…あの、えっと………うぅ」
「私はシルフィー。でこっちがセラ。あなた、名前は?」
「……り、リリィ…なの。森霊族で10歳、なの」
「へえ〜。って10歳!?こんなとこで何してんの?」
「ひぃ、ご、ごめんなさい。あの、わたしは…その、捕まえ、られてて、先日…シルフィーさんたちに、助けてもらったの」
「ああ、あの時の森霊族の子かぁ。見覚えがあるわけだ」
「お家には帰らなかったの?」
『ソレニツイテハ我カラ。捕マッテ運バレテイタトコニ君タチガ来テ助ケラレタ。ソノ後リリィハ衰弱シタ状態デココマデ来タンダ。ソレカラ回復シテ今コウナッテイル。家ハ東ニアルソウダ』
コクコク
どうやらそうらしい。
「お父さんかお母さんはどこにいるの?」
「わかんないの。気が付いたら、1人だったの」
「たぶん、他の場所で売られてる可能性が高いかな」
「あの人、奴隷で指示されてやってたみたいだからね。主人が奴隷商人だろうね」
「あの、パパと…ママを、助けて欲しいの。お願いしますなの」
「うぅ、頼まれると断れない性格なんだよね。セラ、いい?」
「シルフィーがやりたいなら一緒にやるわ」
「そっか。じゃあ、助けるってことでよろしくねリリィちゃん」
「ありがとうなの!リリィって呼んで欲しいの」
「じゃあ、リリィの精霊はどこ?」
「髪の中にいるの。リム、出て来るの」
『ン?誰デス?リリィノオ友達デスカ?リムハリムッテイイマス』
「お友達だね。よろしくリム。グラントと仲良くしてね」
『グラント、久シイ名デスネ。マタ会エルトハ』
『久シイナ、元気ソウダナ』
「また知り合いなのね。どれだけ有名なの?」
『精霊デ知ラナイ方ガ珍シイ。クライデスネ』
「そうなのね」
一時的にリリィと精霊リムと一緒に行動することになった。やっぱリリィはまだ幼い。リムがいてなんとかやっている感じだろうね。
「ねえ、レージュおじいちゃん。リリィの親の場所はわからないの?」
『残念ダガソコマデハワカラヌ。ダガ、知ッテイル者ノ心当タリナラアル』
「なんでもいいから教えてよ」
『ココカラ東ニ大キナ街ガアル。ソコニ望ムモノノ場所ヲ教エル変ワッタ者ガイル。目立タヌ所ニイルガ、グラントガイレバ行ケル』
『タブン、奴ノコトジャロ?ソレ以外ハ知ランガ』
『街ノ名ハ、プレガーレ』
「そこに行けばわかるんだね?」
『ウム。リリィヲ頼ム』
「無事に再会させてあげるから、安心して」
「でも出発は明日よ。もう夜だから」
「じゃあ、ここで寝て朝に出発すればいいね」
「あの、よろしく…お願いしますなの」
「うん。友達だからね。当然だよ」
「友達、…うん!友達なの!」
「よし、今日は寝よう!このまま!」
「裸だよ!風邪ひくよ!私は大丈夫だけど」
「いってみただけだよ。そんなことしないって」
『グラント、賑ヤカデ楽シソウダナ。我モ動ケレバ共ニイタイ』
『ナカナカ、楽シイゾ。マタ連レテ来ル。楽シミニ待ッテオレ』
新キャラ登場です。女です。長いことお待たせしてすみません。まだまだ書けるので、お付き合いください。リリィの見た目について少しだけ。ちっちゃいです。シルフィーより身長低いです。ちょっとだけ。え?言わなくていい?そんなことないですよ。たぶん。




