2人はお金を稼ぎたい
「起きて、起きてシルフィー。朝だよ」
「んぅ?んん〜、ふわぁ〜。おはよぉ〜」
「おはよう。シルフィーって朝弱いんだね」
「朝は苦手でねぇ〜、あと5分いい?」
「ダメよ。顔洗って、朝食食べにいくよ」
「いいじゃんちょっとくらい」
「ヒレでビンタしてあげよっか?目がさめるよ」
「痛そうだから遠慮しとく」
そんなのされたら、首が折れる。下手したら吹っ飛んでいっちゃう。恐ろしいね。
『シルフィー、ハラガヘッタ。キノミ。』
「食堂でね」
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「はい、おかげさまで」
「気持ち良かった。ふかふかだったよぉ〜」
「それはなによりです。朝食の用意はできています。今持ってきますね」
「ありがとうございます」
『キノミ。キノミヲクレ〜』
「はいはい、ちょっと待って」
2つくらいでいいかな?近いうちに取りに行かないとなぁ。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
「やっぱりすごい料理だよね。宿とは思えないよ」
「うん。美味しい」
『ムム?ナンダ、シセンヲカンジル』
「うそでしょ?見たところ森霊族はいないけど」
『キノセイ…カナ?』
「で?これからどうするの?」
「お金を稼ぎます!」
「手持ちのお金だと少し不安だよね。雇ってくれる店を探しに行かないとね」
「というわけで、街をぶらぶらしながら探そう」
「水路がなさそうだから、肩に乗せてね」
「影に入れば?」
「シルフィーは吸血族だとバレたらまずいでしょ?昔からずっと吸血族は避けられる傾向があるのよ」
「最近はないけど」
「中にはいるのよ。少数だけどね」
「わかった」
「それじゃあ、いこー!」
宿を出てしばらく歩いた。
「やっぱり、飲食店が無難だよね。人魚族も雇ってくれる店を探そうよ」
「それはセラに任せる。セラのが目線高いから」
「シルフィーはなにするの?」
「気ままに歩く」
「シルフィーらしいね」
セラを肩に乗せて歩くのも慣れたね。全然疲れない。
「だれかー!ひったくりだー!捕まえてくれー!」
男の人の声。ひったくりかぁ。
「セラ見える?」
「うん。私たちと反対側に走ってる」
「そう。お願いできる?」
「捕まえるんでしょ?悪い人は許せないからね。協力するよ」
「ありがと。じゃあ、ヒレで飛ばしてくれる?」
「シルフィーを?わかった。じゃ、乗って」
ヒレの上にしゃがむ状態で待機。すると、すぐにセラが左手を軸に回るように助走をつける。
「いくよ!そ〜ッれ!」バシュン!
弾くと同時に跳躍。うまくいった。あとは追いつくだけ。おお〜見えた。影はこっちにあるから、縛れるね。
「どうしようかな。頭から影に入ってもいいんだけど、バレるのは避けたいし…」
くるり、っと足からいけるようにして。そろそろ着くね。
「よいしょ」
「うぐ、なんだ、これ。身体が動かない」
周りから見れば飛んできた少女が動きを止めた、という風に見えてるはず。実際足がちょっと影に入って縛ってる。
「ひったくりさん、確保だよ」
「くそ!なんでこうなるんだ!」
「大人しくするの!」
「いだだだだ、わかったから、いででで」
ちょっとしか力入れてないんだけど。
「あの、ありがとうございます」
「いえいえ、捕まえてと聞こえたので」
「あの、もし良かったらうちに来ませんか?」
「うちって?」
「近くに私の店があるんです。そこでお礼をと思いまして」
「そうですか。いいですよ」
ひったくりを兵隊さんに渡して、私とセラは案内された店にいます。
「セラ、手大丈夫だった?」
「うん、なんともなかったよ。そっちはあっさり捕まえちゃったみたいだけど」
「強くなかったからね」
「捕まえてくれてありがとうね」
「どういたしまして」
「お礼をと思ったんだけどねぇ。なにかできないかな?」
「だったら、ここの店で雇ってください。2週間」
「雇う?それだけ?」
「私たち稼ぐ場所を探してて、見たところ人魚族も入れる店ですよね?」
「そうだよ。うちは種族とか関係なく楽しめる店なんだ」
「他も見て回っていたんですけど、人魚族も雇ってくれる店がなかなか見つからなくて…。」
「そうだったのか。いいよ、こんな店でいいならね」
「ありがとうございます。シルフィーも、ほら」
「ありがとうございます」
「今日は休みだから、流れだけ説明しておくよ」
「よろしくお願いします」
「お願いします」
席に案内。注文を聞き、厨房に伝える。料理を運び、食べ終わっていたら片付ける。会計は近くにいる人がやる。
ざっくりとだけど、やることはこんな感じ。店の営業時間は午前10時から午後4時、休憩挟んで午後11時までとなっている。ちなみに店長の名前はローアさん。
「明日からよろしくね。わからないことがあったら、いつでも聞いてくれ」
「はい!よろしくお願いします」
「よろしくです」
その夜、宿にて
「見つかって良かったね」
「ローアさん優しかったし、お仕事も簡単そうだから心配はないね」
「そうだ、仕事の分担決めちゃおうよ」
「私はできることが、少ないから、優先させて欲しいな」
「いいよ。セラができないことを、私がやればいいんでしょ?」
「うん。料理と食器運びと席案内かな。動ける範囲が決まってるから」
ローアさんの店は、床下に水槽が埋め込まれていて、人魚族も働けるようになってる。テーブルごとの床に穴が開いていて、蓋が被せてある。蓋の裏に番号が書いてあるから、迷うことはないみたい。
「セラは会計と注文聞きだね」
「そうなるわね。ごめんね、面倒な方頼んじゃって」
「別にいいよ。気にしないで」
「ありがと。明日は忙しくなりそうだから、早めに寝ましょうよ」
「そうだね。初日に遅刻はありえないからね」
「じゃ、おやすみなさい」
「おやすみぃ〜。」
シルフィーを飛ばした後のセラの1人でポツンと待っている姿を想像していました。かわいいです。




