9.
『おや、レイカじゃないかい。』
「フレアおばあちゃん!またお世話になります!」
『はいはい』
おお!普通だ!
「こんちは、俺の使い魔もよろしくっすわ。」
『…今レイカと話しとるんじゃ黙っとらんかクソガキ。』
俺は呪われているらしい…
「おばあちゃん!カラは私の幼馴染なの!お願いっ!」
『おやおや、もちろんじゃ。レイカの頼みなら何でも聞くぞい。』
レイカから手渡された紹介状は大切に保管されるのに対し、俺のは破かれる。
「なあ、ユウ。俺なんかしたっけ?」
「あはは…さあ?じゃ、僕はアクア師匠のとこに…」
『その必要はありませんよ。私もここにいますから。』
「師匠!」
「師匠?」
魔法の師匠ということではなさそうだが…
「アクア師匠は魔法と剣の師匠なんだ!」
「へぇ…」
身のこなしがいいおばあさんな訳ね。
『水魔法は覚えないのですか?』
「え?あぁ、また使い魔増えて水魔法覚えさせたいって思ったら来るよ。」
『使い魔?…あらあら、貴方は魔力がないのね。』
「「え!ないの?!」」
何だ言ってなかったっけ?
「嗚呼ねぇよ。じゃ、グリズリー。火魔法取得頑張れ。」
グルァ!
『でかいのが覚えるんじゃな…レイカもおいで。そこのガキは来るんじゃないぞ。』
またかよ。
『じゃあ、貴方は私のところにおいでなさい。退屈しのぎにはなるでしょう。』
アクアって名前の婆さんは唯一まともな気がする…
なんか道場みたいなでかい屋敷についた。そして一歩玄関から入り踏み出すと…
「あ、カラそこ、危な…」
カチ
がしっ!
ピコン!
回避レベルが19になりました。
「まともだと思った俺が馬鹿だった。」
『私の家はからくり屋敷。さて?生き残れるかしら?』
なにが起きたか説明しよう。
玄関入った。
スイッチ…左右から矢
受け止める。
後悔
終わり。
ユウは構造を知ってるのか全部避けてるし…
俺不利じゃねぇか。
落とし穴とかあんのかよ…
ここ家だろ?
「…」
『あらあら、もうギブアップ?』
すごく楽しそうなババア。
「めんどい」
『はい?』
突き進もう。落とし穴は跳べばいい。または壁を蹴る。三角飛びだ。
スイッチ押して、前後左右から飛んで来る矢だったりナイフは受け止めたり弾く。もちろん素手で。
スイッチ全部押して、全部発動させる。
ユウが巻き込まれてるが知ったことか。
説明なしだったことに仕返しだ。
「カラ!タンマ!タンマ!」
「うっせぇ!説明なしに知らないふりしたお前が悪い!」
『まさか全部受け止めたり、避けてるの…』
裏庭の縁側についたところで。
ピンポーンパーンポーン!
とあるプレイヤーがからくり屋敷レベル5をクリアしました。
そのプレイヤーには報酬が与えられます。
皆様もどうぞ挑戦してください。
この街のからくり屋敷をクリアされた方は他の国や街にある他のからくり屋敷への挑戦権も自動で与えられます。ぜひコンプリートを目指してください!
ピコン!
プレイヤーレベルが11になりました。
防御レベルが21になりました。
回避レベルが20になりました。
速さレベルが22になりました。
ピコン!
パッシブ危険察知を取得しました。
スキル壁走を取得しました。
ピコン!
ワールドクエスト報酬
俊敏の首飾りを贈呈されました。
おっ。面白そうなのゲット。
そして装備ゲット。
「なんかいいのゲットした。装備しよ。」
「え?なになに!何もらったの!」
「俊敏の首飾りだってよ。」
プレートに、黒い流れ星が描かれてる。結構かっこいいそんな首かざり。
「俊敏って…どれだけ早くなれば気がすむの。」
「さあ?」
『わ、私の家が攻略された?!』
「お前の師匠の家、ワールドクエストの中の1つって知ってた訳?」
「知らなかったよ!本当に!!でも僕がこの縁側にたどり着いてもクリアにならなかったよ?!」
「全部の罠動かしたか?それが条件の可能性あるぞ。」
「あ、そっか。だからか。さすがにあれは無理。3回ぐらい死んだもん。死んだら入り口じゃなかったから余計に心が折れそうだったよ。」
死んだらそこのポイントからやり直しだったな。家の中で死ぬってどういうことだろうな。
「じゃ、頑張れ。」
俺昼寝しよ。
『…』
「あ、あの師匠?」
『まあ、あの人物について置いといて先にしましょうか。』
「えと、お願いします!」
魔法取得までの作業を見るのは初めてだ。
『まずは、魔力を感じましょう。』
「はいっ!」
『貴方は前に一度覚えてるからやってみなさい。』
「はいっ!」
魔力を感じるって…魔力感知のことか?
「ーーーー……よし!魔力感知取得しました!」
一緒か。
あれ?俺もできるんじゃね?
『自分の体内の魔力を操作しましょう。』
「はいっ!」
あ、操作する魔力ねぇわ。
憧れは憧れだけか…
ないんだよな…俺には魔力が……他人にはあるのに…なんで俺だけ……ん?
他人のは魔力感知で感じられるんだよな。ウルフたちのも感じられるんだよな。
それを操作できないもんかね…
ウルフたち呼んでやって見るか。
「ウルフ、フェンリル、パンダ。ちょっと出てきてくれるか?」
ガウ?
クオン?
オン?
「(小声で話すぞ。あの婆さんとかに何か言われると面倒だし…お前らの魔力を俺が使えないか試してみていいか?)」
ガウ♪
ウルフが返事をして、他の2匹も首を縦にふる。
よし。
目を閉じて魔力を感じる。
それを操作するイメージ…
まずはウルフ。
ウルフの体内を黒い何かが動いている。
これは体を巡回してるのか?
フェンリルは白いな。
パンダは、緑…
魔法属性の色になっている感じか…
『まず魔力操作で基本的な技、ウォーター。つまり水の塊をイメージして作り出してください。』
「はいっ!」
こういうのは聞いとくだけにしておこう。
あとで誰もいない森でやるか。
ユウの手の中に水が現れる。
青い魔力の塊か。
ふぅん。
『それをもう少し大きく…そのまま…そのまま維持をしていれば…』
「っ!取れた!」
「よかったな。」
「うん!これからもよろしくお願いしますっ!師匠!」
『はいはい。』
ん。チャットが来ている。
「ユウ!レイカも終わったらしいぞ!外に試しに行こうってよ!」
「はーい!では師匠!ちょっと行ってきます!」
『はいはい、まだ遠くにはいかないのよ?』
「はいっ!」
この婆さんも贔屓ババアのようだ。
『今何を考えましたか?』
勘も鋭いようだ。
「なーんも。」
『……』
早く行こうかね。
帰るのもまたからくりはやり直しのようだ…
『ユウは帰り方は知ってるね?』
「え?あ、はい知ってますけど…」
『ユウは(・・・)通っていいからね。』
「え…あ…えと…」
からくりはやり直しのようだ。大切なことだ。二回言った。
さっき手に入れたやつ使おう。
助走をつけて…スイッチだらけの床ではなく何もない壁を走る。
『?!』
「なにそれ!!」
玄関までノーダメで帰る。
「ユウ…遅い。先行くぞー…」
「ま、待ってよ!!」
『…我々のせいで余計に化け物になっている気がする……』




