21.
お待たせしました。
これからもよろしくお願いします。
「こんちはー。」
『あら、異界人は珍しいですね。いらっしゃい。お食事?待ち合わせ?』
待ち合わせとかに利用してもいいのか。
さっきとは違う人が出迎えたので、あの場にいなかった人らかもしれない。
「すみません、人探ししてて、ロッドいます?」
『あら、ロッドシェフにご用の方?名前を聞いてもよろしい?』
「カラです」
『すぐにお呼びするので中に入ってこちらの席でお待ちください。』
「はい。」
街の人たちの憩いの場的な感じかね。
ん?熱心な子供がいるな。
紙とペンを持ってカウンターから必死に中をのぞいている。
見た感じNPCだ。声をかけてみた。
「なあ、料理人になりたいのか?」
『…!うん!』
「勉強してるのか。偉いな。」
『お母さんが料理下手だから僕が美味しいもの作ってあげるの!』
お母さん涙目だな笑
「親孝行は良いことだ。料理スキル持ってるから俺も今度簡単な料理教えてやろうか?」
『本当?やったー!』
『ぺぺと知り合いになったんだね。カラ君。』
「あぁ、ロッド。ぺぺっていうのか。よろしくな。」
『よろしくねお兄ちゃん!』
『ぺぺ、そのお兄ちゃん貸してくれるか?勉強頑張れよ。』
『うん!』
ぺぺはまた厨房を頑張って見つめ出す。
『それで、何の話?』
声に出したらダメみたいだから、とりあえずは紙に書くか。
“ロッドのリアルの店の厨房バイト募集してる?”
あれはまだ現在進行形なのか確認しなくてはならない。
『へ?……!…』
“してる!!”
“応募したいんですけど。”
“まじで!!!”
“面接時間とか決めるのにやっぱ、リアルの方で連絡したほうがいいか?”
“いや、僕が担当だから全然構わないよ!何時頃来れる??”
“今日は無理そうだから明日以降なら…夕方かな〜”
“わかった!んー…なら、18時頃ならどう?”
“オケ”
“決まり!”
バイト面接明日夕方な。履歴書とか書かんとな。あとでコンビニに行くか。
「…で、話せない内容は置いといてこっちは忙しくなさそうだな。」
『あははっ、異界人はお腹空かないって聞いたしね。当たり前だよ。それに、昼は過ぎてるからね。ピークは街の人が集まるからそれなりには来るよ?』
ほへー。
「なんか手伝うことある?」
『掃除はさっきしてもらったからね…料理作ってもらうのはどうかな?さっきのは諦めざる終えなかったからね。』
『お兄ちゃんの料理?ぼく、お兄ちゃんの料理食べてみたい!』
ん。
ぺぺが話を聞いていたみたいで反応を返してきた。
「ぺぺか。いーぞ。暇だし、何食いたい?」
『んー…食べたことないやつがいい。』
「食べたことない奴なー…親子丼とかは?」
『ある!ロッド兄ちゃんが作ってくれた!』
「ロッド〜お前が作ったことあんの何ー。」
『オムライスとカレーは作ったよー。』
子供向けなのはもう作られてると…
「じゃ、ハンバーグは?」
『はんばーぐ?知らない奴だ!』
「ハンバーグにも色々種類あるけどとりあえず…普通のにするか。」
『…え?ちょっと待ってカラ君。肉ってまさかドッグじゃないよねっ?!』
「ちげぇよ、牛肉だよ。」
『……え”?』
「ナニ?」
『い、いや、この辺ではそんなの取れないはず…』
「どこから取って来たのは知らんが、使い魔が狩ってきたのが余ってんだよ。モンスターパニックあったろ、あの時近くに迷い込んだんじゃないの?」
詳しくは知らん。味の保証はするぞ。めっちゃくったしな。
材料を揃えて、作成して、トマトソースもらって、盛り付けて、完成。
『美味しそう!』
『『『『『(ジュル)』』』』』
“(ジュルリ)”
「……」
ぺぺのハンバーグに群がるシェフ、スタッフその他の客。ぺぺはハンバーグに夢中で気づいていないが、撮られる勢いなので、ちゃんと忠告を挟む。
「……はぁ、ちゃんと席つけ、お前らの分もあるから…但しお前らはおかわり無しな。ぺぺは一回分あるから食べ終わって食べれそうならいってくれ。」
『やった!』
『うおおおぉ!!』
“よっしゃぁあ!!”
元気だことで。
ただのハンバーグだろ。
他のソース作ってみるか。暇だし。
デミグラスとチーズソース、おろしソース、煮込みハンバーグの試作を作ってみた。肉が確保できたら使ってみよ。
その料理中をじっと見つめる飢えた男達数十匹。
何もみてないふりしてしまう俺。
さて、次は何しにどこに行こうかね。
ぺぺにお礼を言われた後、またなと挨拶して、その場を足早に逃げようとする。
ガシ…
『逃がさないよ?』
“それを味見してぇな”
「…だから肉ないんだって」
『市場で買ってくればある。高いけどな。』
買いに行く準備をシェフ達がし始めるのが視線の端で見えてしまう。
このままでは永遠に作らされる。
もう焼肉パーティのせいで当分そういうのは遠慮願いたい…仕方ねぇ、戦うか。
「…作らせたいなら、俺に喧嘩で勝ってみろ。」
『ほう?いい度胸だ』
『この人数で勝てると思うなよ!』
『抑えつけろ!!!』
さて1発殴って終わらせるか。
誰を生贄にするかね。
ガタイのいい男が俺に向かって押さえつけるように素手で襲いかかってくる。
こいつにしよう。
回し蹴りで真正面の入り口に吹き飛ぶように蹴る!
『ぐぼおぅ?!』
ドガン!
綺麗に一直線に外に吹き飛ばされるおっさん。
『『え?』』
“え?”
それをみて唖然となる他の客等。
手を軽く振り握り直して次の目標に目を向ける。
「さて?次は誰だ?」
『俺ちょっと用事思い出した。』
“仕事いかねぇと。”
吹き飛ばしたおっさんにポーション使って、引きずって椅子に寝かせて…
「さて、どこ行くかね。」
ロッドに後を託して、店を出る。
そういえば伝説録てのが登録されたんだっけか。確認に行ってみるか。
教会とやらについた。
プレイヤーが数人出たり入ったりしてるとこ見ると確認してるやつもいるみたいだ。
俺も紛れてはいる。
協会なんて滅多に行かないが、白を基調とした綺麗な建物だ。
女神像とかも綺麗だな。
そんなことは置いといて、本はっと。
『あ!兄ちゃんだ。』
「ん?おう、ぺぺか。なんでここにいんの?」
『僕ここに住んでるの!』
「…?親は?」
『あそこ!』
指差す先にいるのは修道服を着た女性。
ああ、そういうこと。
教会が家なのか。
孤児院設定かと思ったわ。
「あ、そだ。なんかさ、伝説の絵本とかない?」
『あるよ!新しいのが入ったの!これだよ!』
渡されたのは『異界人の祈り』
パラパラと読んで見る。
この世界にはとある異世界と繋がる見えないゲートがありました。
そのゲートからは多くの人が現れました。
その多くの人の中の1人が不思議な不思議な体験をした物語。
そのとある異界人は魔物を傷つけるのが嫌だという変わった異界人でした。
ここまで読んだであろう近くのプレイヤーが
「ヘタレがたまたま作った伝説かよ。もういいわ。」
そんなことを言いながら本をしまいに行った。
…まあそうだろうな。
そんな感想は無視して読み進める。
その異界人にも友人はいました。
ですがその友人は簡単に魔物を倒していきます。
その異界人は人それぞれだといって友人が戦っている間その異界人は薬草を取っていました。
不殺の異界人に友人から強引な誘いがありました。
その土地に住む強い魔物を倒す手伝いをしてほしいと。
その異界人は断りました。
何度も何度も強引の誘いがあり…異界人はやむおえず手伝うことになってしまいました。
そしてその異界人はついに、この世界に来て初めて魔物を殺しました。
その異界人はその魔物が苦しまないようにと…1撃で仕留めました。
その魔物は大きな犬の魔物でした。数々の異界人が何度も倒しにかかってもなかなか倒せなかった屈強な魔物。
その魔物を不殺の異界人は苦しまないようにという意味を込め1撃で仕留めました。
不殺の異界人の友人は喜び他の異界人に知らせに走り去りました。
不殺の異界人はその場に残り、何を思ったか穴を手で掘り始めました。
その穴はデカワンぐらいの大きさの穴…
その中にせっかく手に入れた素材を全て埋めてしまいました。
そして土の上に十字を書きその異界人は祈りました。
“殺してしまってすまない…我々の目的のための犠牲にしてしまってすまない。”
手を合わせ、目を瞑り、小さな声で呟きます。
こうしてその異界人は魔物のお墓を作ったのでした。
しかし、異界人の作り上げたお墓は元の何もない土へと変わりはててしまいます。
ある日の夕方。
異界人はまたそのお墓があった場所に来ました。
異界人はお墓がなくなってしまっていても、場所は明確に覚えているようにまた同じ場所に膝をつき祈ります。
そして、そこで奇跡が起こりました。
あの異界人が倒した魔物が祈っていた場所に現れたのです。
その姿は光に包まれ、実体はなく、透けている…まるで幻。
大きな犬の魔物は二度吠えて、異界人と見つめ合いました。
しばらくして、魔物は空高くに駆け上がり天上へと消えていきました。
魔物は何を伝えたかったのでしょうか。
異界人は何を感じたのでしょうか。
それは…彼らのみが知ることでしょう。
これからも不殺の異界人は魔物達を殺してしまうことがあるかもしれないその度に、不殺の異界人はお墓を作り、祈るのでしょう。
“全ての魂に安寧を”と…
終わり
ちゃんと話しになってるわ。
てか、友人すごいひどい扱いだな。強引の誘いね。確かにそうだったが…。
最後に殺すと覚悟したのは俺だし殺したのは俺だ。
俺の批判もう少し入れてもいいのに。
『僕この本大好きなの!』
「お?そうなのか?どこらへんが?」
『魔物って悪い奴らばっかりだと思ってたけど、もしかしたら魔物にも心があるのかもしれないって思ったんだ!』
「嗚呼、魔物にも心はあると思うぞ。」
『本当?お兄ちゃんはどうしてそう思うの?』
「魔物に心があるから、俺たちのような異界人の使い魔になりたいって伝えてくるんじゃないかって思ってるからだ。」
『…!お兄ちゃんって使い魔がいるの??』
「おう、いっぱいいるぞ。」
『会いたい!』
さすがにこの中だとサバトラとグリズリーは無理だな。
「んじゃ、ウルフ、パンダ、フェンリル、グリフォン出て来て挨拶。」
『うわぁ!』
オォーン
クルルゥ♪
ウルフたちって成長してるから小さい子供の二倍の大きさあるよな…大人1人は背中に乗れそうだわ。
グリフォンは肩に、その他はぺぺとじゃれ始めた。
その様子に教会の外を通った子供達がそわそわとのぞいて来た。
「……ぺぺ、入り口にいるのも仲間に入れてやってもいいか。」
『え?…わぁ!うん!!』
「ウルフ達、外で遊んでやれ。」
オン!
俺は入り口にあぐらをかいて楽しそうに遊ぶ光景を見て休憩。
『あの。』
「ん?なんですか?」
この人は確か、ぺぺのお母さんか。
「…?」
『少しいいかしら』
「え?…えぇ、構いませんよ。」
『ありがとう。…少しお話ししたいのでこちらにお願いします。』
「あいよ。」
ぺぺ無しで話したい内容?
少し離れたところでぺぺのお母さんが話を切り出して来た。
『あの!お願いがあるんですっ!』
「はい、なんすか。」
『ぺぺから料理が上手いと聞きました。』
お、料理クエスト?
「まあ、一人暮らし歴長いんで。料理はある程度身についているんです。」
『そこでお願いがあるのです。実は領主様に借金していまして、お金の代わりに料理を作れと言われています。ですが、私は料理が下手で…そこで、貴方に料理を代わりに作ってもらいたいのです!』
借金か…やったのがどっちかによる…いや、どちら共という線も…
「その借金とやらは誰が?」
『…失踪した夫です。』
ふむふむ、この人ではないと。
『領主様はゆっくりでいいと言われてはいるのですが甘えてばかりではいけないと思うのです。』
悪徳な感じではないのかね?
『そこで、代理を立ててでもいいから料理を納品しろと言われまして…』
「それは一回でいいんですか?」
『はい、料理に満足できればお金チャラだと!これからは私が働きに出てあの子と教会を守るのです!』
一回で全額チャラ。なんとも優しい領主だことで…裏がありそうだが…会って見ないとわからんな。
「まあ、構いませんよ。何かテーマがあるとかありますか?肉を使ったとか、魚とか。」
『はい…魚を使ったものをと。ですが市場で魚はかなり高く…』
それなら外で取れば問題ない。グリズリーとグリフォンと一緒にとりまくるか。
「魚のツテはあるので大丈夫です。他には何か希望とか言ってましたか?」
『えっと…辛いものは苦手だと言ってました。』
「好みは俺知らないんで…何か他に分かれば教えてもらえますか?」
『はい!えと…』
辛いもの…×
甘いもの…○
酸っぱいものは…?
苦いもの…×
ふむ。甘酢の白身魚揚げとかどうかね。
あとは……それに合う副菜とか…
「これって期日とかあるんすか?」
『一週間以内と言われてまして…その期日が明後日なの。頼めるかしら。』
「ええ、いーですよ。暇なので。魚獲りして来ますね。」
『よろしくお願いします。』
料理クエか、しかも領主って。
グリフォンの腕前とか知っときたいし、早く行くかね。
外に向かい、ウルフたちを呼び寄せる。
「そろそろ出発するぞー。」
ガウッ♪
オン♪
クオン♪
クルルゥ♪
ブルル♪
全員が機嫌よく返事を返してきて、俺の影に入る。
「ちょっと待ったー!」
ぺぺのお母さんが離れた後で誰かに捕まった。
「ん?誰?」
「私、ナルカミと言うものよ!情報屋をやったらギルドのマスターをしてるわ!」
「はぁ、で?」
「是非とも力になりたいのよ!」
急になんだこの人…別に困ってねーから断ったら、さっきのクエストはどんな内容だったかだけでもと迫ってくる。
「料理クエだよ。魚料理作ってくれって言われたの」
「魚のツテはあるの?安く買えるようにしてあげましょうか?」
この人しつこいな…何クエか教えたのに消えねぇし。
「獲りに行くからいいんだよ。」
「魚?どこで獲るのよ。」
「川があるからそこ。」
「…(いやいやいや、何言ってるの?川にいても捕まえられるわけないでしょ。釣りスキル取ろうとしたプレイヤーがどんなにやっても取れなかったのよ?)なんと言われようとついて行くから気にしないで。」
変な連れができたな。
まあいいか。
グリズリーかサバトラに乗って行こうと思ったけど徒歩で行くか。
ナルカミは無言でついてくる訳ではなく終始質問ばかりだ。
うっさい。
「ねぇねぇっ」
段々とイラついてくる。しつこい男はモテないと聞くがあれは女に当てはまるな…
若干ミライのテンションと被っているところが余計に気になる。
「ねぇってば!」
「暗殺対象になに絡んでるんだい?ナルカミ」
本人が来た。うざいのが2人…
「あら、ミライ私はちゃんとした理由があってくっついているのよ!」
「へぇ、ナニ?その理由」
「カラ君の情報は高く売れるから問い詰めているのよっ!」
「彼の情報ですか?興味あるナァ?」
「なんだ、お前ら俺の情報知りたい訳?」
「そうよ!」
「俺のこと知りたいならさっきの教会のところに一つあったのに。」
「「え?」」
「最初の伝説録は俺の体験したことだぞ。」
2人が固まる。俺はそのまま放置して森に逃げる。




