17.
「みんな仲良く1位だったなぁ。」
「最後が1番面白かった!!」
「ですねっ!みんな、カラに抱きついたんだもん。本当にカラのこと大好きだねー。」
そう、レイカの言う通り、最後門の前で止まらず全員が俺に突っ込んできた。
ウルフ、フェンリル、パンダも、もう大型犬並みの大きさだから全員が俺に突っ込んできたら流石に俺も倒れる以外の選択肢はない。
甘いものがご褒美だと言ったのに、こいつらは撫でてもらうことしか考えていなかったようで全員が俺にすり寄ってきたのだ。
全員の速さのレベルが上がった知らせが流れる中、最後に俺の防御レベルが上がったことの知らせ。なんでや。
「はいはい、みんなに美味いもの作ってやるからな。」
全員が機嫌よく俺の上から降りる。
「「…」」
モッフンとエルフィアが俺をじっと見つめる。
「いや、お前らになぜ作らないといけない…」
「先輩だろ!」
「甘いものをお恵みください。」
「空腹システムまだないし、余計腹減らね?」
ここ学校だしな。飯テロに聞こえるだろうに。
「それでもゲームの中での食事は味わっとくべきだ!」
「俺はただ甘いものが食いたい。」
モッフンは甘い物に貪欲のようだ。
まあ、特に独占してるわけでもないしいいか。作るのフルーツクッキーだし。
厨房借りにいこ。
「なんで、ここに来るんだ?」
「え?厨房借りに来ただけですよ?」
「え?」
「え?」
…よくわからんな。
とりあえず中入ろ。
俺のいるところはロッドの店。つまり、外見高級レストランな建物。だからだろうか?全員緊張している。
「ロッドー!厨房ーかーしーてー!」
雰囲気ぶち壊しの声で叫ぶ。
「異界人のお客は珍しいですね。ロッドシェフのお知り合いでしょうか?」
「そーそー。いる?」
「少々お待ちください。」
それにしても洒落てるな。金持ちが来そうだ。
『おい!汚らしい冒険者!そこをどけ!わしの行く先を邪魔するな!』
そうそう、こんな感じ。
道を妨げてるの事実だし、変な揉め事は避ける。と言うことで、素直に道を開ける。
『フン…おぉ、ロッドシェフ。迎えごくろ…』
『カラ君だー!掃除に来てくれたの??……ん?僕のお気に入りの冒険者のことなんて呼びました?ブラウン殿。』
『な、何も言っとらん!』
『……まあいいです♪次は気をつけてください。席に案内して差し上げろ。…あ。言い忘れるところでした♪次に先ほどのような呼び方をしたら、出禁にすんぞおっさん。』
『………し、失礼するっ。』
青ざめる金持ちそうなおっさん。ご愁傷様…
なんか、ロッドの怖い一面を見た気がする。
『それでー?掃除?掃除だよねっ!!』
「どんだけ掃除なんだよ…してやるから厨房借りたいんだけど?」
『もっちろんいいともっ!!』
先輩方とか麗華には少し待ってもらう間、ロッドが料理でも出しとくよと席に案内をし出した。
さてお掃除な。
…数十分後…
掃除が終えたことを厨房外の人に声かけをして確認してもらったら、勢いよく飛び出し、ロッドの所にいくなり大声で…
『シェフ!あの子何者ですか!掃除屋ですか!専門なお方ですか!すんっっごく綺麗になったんですが!!』
『見るーーー!!』
ハイテンションロッドを召喚した。
俺は隅でクッキー作りに励むとしよう。
あと、弁当作ろ。気分転換にしかなりそうにないが。
なぜか、ロッドに食材献上されてるし…
『掃除のお礼!ありがとう!』
「ありがたくもらう。てかそんなに汚れてなかったぞ?腐海の森と比べた俺が悪いが。」
『アレは異常だったのっ。…それで何作ってるのー?』
「おやつだよ。ウルフ達のご褒美用。あと俺の弁当。」
『…?異界人はお腹減らないんじゃないの?』
「気分転換だよ。」
『へー。…いったいどんなものができ……かわいっ。』
嗚呼、クッキーは形にこだわったからな。
ウルフ達をモチーフに作った。
『味見したいなー?』
「1つならいいぞ。」
『わーい。…おいしー。』
量は食材献上されたから結構できたな。
『カラ君ってスペック高いよね。口悪いのがたまに傷?』
「うっせ。」
ほっとけ。
俺の弁当も完成。
それを見るハンター。
「これはやらん。」
『野菜ばっかりなのにすごく美味しそう…じゅる』
肉はウルフ達にやる為の最上級のご褒美用だからな。俺は使わない。サバトラがよく食べる山菜を少し使ってロッドから献上された野菜も天ぷらにしてご飯炊いて完成。
アイテムボックスにしまってもまだ食べたいなー食べたいなーと声をかけてくるロッド。
それを無視して店の外の連中と合流しようとしたら、
『たーべーたーいー!!!ひと口ー!!』
と腰にしがみついて離れない。
例えそんなことをされようともやるつもりはないので、ひこずっていく。
そしてみんなと合流。
「じゃ、行くか。」
「え、それ引っ付けていくの?」
「だって離れねぇんだよ。」
『ひと口ー!!』
「何をひと口なんですか?ロッドさん。」
レイカが究明に図る。
『レイカちゃんっ!カラ君の作ったお弁当が美味しそうなんだ!見た瞬間目が離せなくなったんだ!野菜を揚げた料理だったんだけど、すんっっっっごく!美味しそうだったんだ!!だからひと口!どうしても食べたいっていってるのにくれないんだ!!』
レイカに説得させようとしてるだろ…
「…何、作ったの?カラ。」
「天ぷら弁当」
「んー。鑑定して見たいから出してもらっていい?どうせカラって鑑定持ってないんでしょ?」
よくわかったな。
「構わんぞ。」
出来立てホヤホヤの天ぷらを出す。
それを通り過ぎざまに見る複数の目。それが俺の天ぷらに固定される。少しずつその数は増え、完全に包囲されることとなった。
俺のいるところは今レストランの外と言う普通の環境から一気に戦場に変わった気がした。
「………カラ、鑑定終わったからすぐにしまって。」
「…そだな。」
アイテムボックスにしまった後も視線は続く。
「…結果だけ聞く。」
「…魅了効果付いてた。」
魅了効果……なぜついた。
「持続時間とかは?」
「それはわかんない。」
…そうか、つまり、魅了効果が切れるまでこの戦場から動けそうにないと。
強制的に切れさせるとかできねぇかな。
『カラ君!解決方法があるよ!』
「どうせ食わせろとか言うんだろ…一人前しか使ってねーんだよ…この場にいる人全員に食わせてたら俺のがなくなるわ!」
『うぐぐ〜!』
悔しそうに唸っていようとも無駄。
この状況じゃ、ウルフ達にご褒美もやるにやれない…
「困ったな…ウルフ達に褒美やれねぇじゃん…」
小さく呟くと呼んでもないのに影からウルフ達が全員揃って出てきた。
そして全員が威圧を放つ。
GRAAaaaー!!!!!
威嚇も使ったな今の。
だが、その場の空気が一新した。
凍りついたのだ。俺以外全員が。
もちろん、レイカやモモちゃんも含まれる。
先輩がたは知らん。
そして、正気に戻った?人々は青ざめながら俺の周りから逃げるように去っていった。
「お!解決した!ありがとなー。皆んな。先に一個ずつご褒美な。」
頭を撫でて感謝の意を伝えながらクッキーを食べさせてやる。
嬉しそうに食べるのを確認して、レイカやモモちゃん覚醒に取り掛かる。
「おーい、解決したぞー。起きろー。」
ゆさゆさと体を揺さぶる。
立ったまま放心状態なんだよな。
敵意は少々あったが、殺気は込められて無かったからただの脅し程度なんだが…そんなに聞くのか?
威圧耐性無かったら俺も体を重く感じさせられたしな。耐性スキル様様だな。
「………はっ。」
「あ、レイカ起きた。おはよ。」
「え…なんで、カラは何もなってないの?」
「ん?…慣れてるから?」
「…えぇー?今状態異常の中の恐怖状態になって動けなくなってたんだけど…」
「恐怖状態になると動けねぇの?」
「うん。」
そんなのもあるのか。状態異常の種類把握しといたほうがいいな。後でおっさんに聞きに行こ。
「はっ!」
「あ、モモちゃん。そろそろ下校時間じゃね?ログアウトしたほうがいいよな?」
「うあ!本当だ!!みんな急いでー!」
ウルフ達にはすぐにこっちに戻ってくるからと伝えて影に入ってもらう。みんな上機嫌だったのですぐに入ってくれた。こいつらは本当にいい子なんだけど…なんで、人間はややこしいんだろうな…はぁ。
先輩方はモモちゃんにペシペシ攻撃によりようやく覚醒し、それぞれが俺を見る前に俺はログアウト。
さっさと、荷物を回収して、下校。
ふぅ…とりあえず捕まらず帰れた。昼休憩もゲームができるのではないかと思ったが…今日は確かめようがないのでとりあえず晩飯買って帰宅。
…学校でゲームができるのはいいが…数時間程度なんだよな。学校終わってすぐ帰ったほうがする時間がある気がするんだが……まあ、やっぱりやめるといったらまた揉めるし…当分は大人しくしておくか。




