勉強タイム
屋上で弁当を食べた後、
春波と俺は図書室で勉強していた。
春波は普段下ろしているか、お団子ツインテールなのだが、勉強の時はなぜかポニーテールにしている。
正直なところ俺はポニーテール弱い
俺は単に家で勉強しなかっただけだったから、問題を解きまくる時間にしていたのだが…
「あーーーーーーーぁ!!もうわかんない!!」
お隣さんは絶叫していた。
図書室は静かにするイメージがあるが
昼休みの図書室は人がいないため、いくら叫んでも問題がなかった。
「ねえ、なんでこういうふうになるの!?
教えてぇ!ねえ教えて!!!」
五月蝿い。めちゃくちゃ五月蝿い。こいつの性格からすると、一旦始めると答えるまで黙らないだろう。なんで、きょかしちゃったんだか…
「これは、ここに書いてある公式があるでしょ、それ参考にして…」
ふむふむ。と言った顔つきで参考書を眺めている。
自分が教えた事が理解されるのは気分がいい。
自分の勉強は一切進まないが…
「じゃあこれは?」
「これは…」
歴史は苦手だ。ということで、
「モリーーーーー!!」
「さっきからうるさいんだよ。」
奥の方の本棚から湧いてでたポールこと、森谷だ。
理系はともかく、歴史や国語だとクラスで一番だ。
昼休みはほぼ毎日、放課後読む本を漁っているらしい。
図書室の住人みたいなやつだ。
「それより、これわかる?」
「ああ、これはこの人が始めた政策で…」
めちゃくちゃ解りやすい。
一方春波は…
「へー。なるほどー。もりーめちゃくちゃ解りやすい‼
こんどわからないところあったら教えて!!」
その日から、森谷が勉強会?に参加するようになった。
森谷の解説がうるさいので、俺は比較的離れたところで勉強していた。
春波は数学より歴史がごっちゃになっているらしい。
徳川家康が、本能寺で殺されたとか言ってたっけ…聞いたところかなり重症だった。
その時俺は、彼女の視線に全く気づいていなかった。
そんなある日、弁当を食べ終わった俺は図書室に向かおうとしていたのだが…
「待って」
春波に呼び止められた。
「また、一人で勉強するの?」
「そうだけど」
口をゴニョゴニョさせた春波は何か言いたげだった。
「私、もりーより、青児に教えてもらいたい。」
「だから、歴史は苦手なんだよ」
「そうじゃない‼」
春波口をへの字にして、上目遣いで睨んできた。
「私は、勉強なんかしたくない❗ただ青児と一緒にいたいだけなの‼」
こういうときって恥ずかしがるもんじゃねとか、思いつつ
戸惑ってしまった。
彼女の目には涙が浮かんでいたのだ。
「最近は家で勉強するし、昼休みはたまにで大丈夫かな…」
「ポニテもたまに見たいし…」
言ってしまった。
女を泣かせるやつは最低だ。
女を傷つけるやつは最低だ。
父親に言われた言葉で一番鮮明な言葉だ。
この言葉が染み付いてる俺にとって、春波の涙は、現時点で消滅させなければいけない最重要目標だったのだ。
「今日は勉強しないから、もう少しゆっくりしていこう」
俺の全力の慰めだ。
「ほんと?」
「本当」
くっそっ!!!性格が違ったらめちゃくちゃかわいいのに…
その上目遣い最高だぜ、ちくしょう‼
「じゃあさ、このお菓子食べてみて☺」
「遂にお菓子まで手作りか…」
「これは昨日買ったやつ。一緒に食べたかったの。」
なんで、俺はこの女に付き合ってるんだろう。好きでもないのに…
それに、本当に小学校にいただろうか…
そんな疑問がふと、頭をよぎった。
その頃図書室では、森谷が愛読してる参考書を持って昼休み中うきうきしていたのは、誰も知らない。
(森谷は教える楽しさを覚えていた)