弁当はどうでもよい
「弁当まじ~」
母親が作ってくれる弁当は、最近
質が落ちていた。
来る日も来る日も揚げ物ばかり
正直そろそろ学食に変えたいと思っていた。
そんな時…
「乗鞍青児!!」
騒がしい女がやって来た。
「私に言うことがない?」
「ねえよ。そもそも、なんもやってないだろ」
「そんなぁ」
「って、随分と茶色いお弁当なのね。」
「母ちゃん、料理下手っていうか、センスがないんだよな。
お前、作れないの?」
「よ、余裕だからそんなの!
いいわ、明日楽しみにしてなさい!!」
そんなこんなで、翌日…
俺は屋上に呼び出された。
「はいこれ、お弁当」
春波の座っている長椅子の横に置いてあるのは、花柄のピンク色の巾着だ。
顔に見合う、可愛い柄だ。
「いただきます。」
俺は弁当を食らう。
普通の味だ。いたって。
あんだけ胸を張って、楽しみにしてなさい。とか言ってたのが馬鹿らしくなるくらい、普通の味だった。
一つ気になったのは、春波が手を見せないことだった。
完食して。
「うまかったよ。彩りも綺麗だし。」
作ってくれた感謝を込めて本音を隠す。
「ほんと!!?」
目を輝かせながら俺をじっと見つめる。
「本当だよ」
「良かった~」
その時、ガッツポーズをした春波の手が見えた。
ばんそうこうで一杯だった。
こんなになってまで、俺に弁当を作ってくれたんだ。
「ふふふーん、明日からもお弁当作ってきてあげるから♪」
「よろしく、頼みたい。」
味は普通だし。
何より傷だらけの手を見ても頼んだ理由は、自信満々な笑顔を毎日みたいかな
と、思ったからだ。
次の日ーーーーーーーー
全く同じ献立だった。
「ふざけんな❗同じじゃねえか!!」
なんて感情の爆発は押さえて、こんなことは言わないように心がけた。
春波の笑顔は眩しかったからだ。