もっと、知りたいな
数週間が経過し、定期テストが近づいていた。
俺たちの勉強会もスパートに入ろうとしていた。
クラスのみんなと仲良くなった春波は、あの時孤立していると泣いていた時を忘れさせるように楽しそうだった。
きっとこのクラスになれば彼女は楽しく過ごせるのだろう。
「モリー、春波の文系科目どんな感じ?」
授業の合間、春波がいないときに聞いた。
俺自身は彼女がどこを苦手としているのかはよくわからない。
それに、その時、俺は数学の勉強をしている。
「お前よりできてるんじゃないか?」
「え?」
「歴史なり経済なりは物事の順序がわかってないだけで、流れを説明してやればすぐに理解する。国語は単に暗記することが抜けてるだけ。定期的に小テスト的なのをやらせているから、最近はどんどん理解できてるぞ。」
「まじかよ。す、数学だって、お前よりできるようにしてるぞ…?」
「理解力は普通に良いからね。あいつ。」
「な、な、な」
勉強に関して、春波を理解してるのが俺だけじゃない。
なんだかそれが悔しかった。
試験1週間前に差し掛かろうとしているとき、放課後に思い付いたことがあった。
「休みの日も勉強しよう。」
「ふぇ!?」
きょとんとしていた。もっと喜んで飛び付いてくると思い込んでいたのだが…
「なんで…?」
「なんか、いまいち理解できていないところが多いかな、なんて思ったから休みの日で一気に解決しよう。って事なんだけど。そうすれば準備が楽だと思うから。」
建前上はこうだった。本当は、春波をもっと知りたい、モリーに負けたくない。そう思ったのだ。
「わ、わかった。特進のためだもんね。」
最近の春波は、どこか緊張していて昔みたいな元気は感じられにくかった。