涙
俺たちは下校途中の公園のベンチに座った。
春波も落ち着き、話せるくらいにはなっていたようだった。
「なくしちゃったのか?」
春波は首をふった。
「似合わないからつけなかっ?」
また首をふる。
「んー…壊れちゃったとか?」
ううん。
とまたまた首をふる。
なくなったわけでも、似合わなかったわけでも、壊れたわけでもない。
俺は他に思い付かなかった。
「私は、すごく嬉しかったよ。毎日着けたい。そう思った。
でも…」
「でも…?」
「……が……めろって、…うから」
また泣き出してしまった。
よく聞き取れないのだが、どうやら誰かに何か言われた。までは聞き取れた。
「誰に、何を言われたんだ?」
「く、クラスの女子…」
え?
「ちょ…うし…にの…るなっ…て」
ヒクヒク言いながら、言いたくなさそうに伝える。
「嘘、だろ…」
こんな明るい春波が、まさか…
孤立!?
「お前、まさか…」
「私…きらわ…てる。みんな…に…」
やはり、クラスで孤立していたのだった。
どうやら、そのクラスには俺の事をを気になる子がいるらしく
知らない人に目つきの悪い俺に話しかけるのが怖かったらしく、ずっとおどおどしていた矢先、春波が転校して
俺と仲良く話している春波を敵視していたのだとか…
そいつはクラスの中心人物的な感じで、
その子は~春波が虐めた。~
と嘘をつき、クラスで孤立させたらしい。
実質的いじめだ。
しかも、その事を話したら学校にいさせなくしてやる。
とまで言ってきたらしい。
そしてブレスレットを着けてきたのを見つかり、
俺が渡したと話したら…
「捨てられちゃったの…」
春波は大声で泣きながら、俺に向かって
「ごめんなさい。大切にするなんて言ったのに、せっかく青児が買ってきてくれたのに…宝物になるはずだったのに…
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん…な…」
「マリア、大丈夫。お前は悪くない。」
心が
痛かった。
俺に迷惑をかけないように、辛いことがあってもいつも笑顔でいてくれていた。それなのに、俺はやれやれめんどくさいと適当にあしらっていた。とても情けない。男として恥ずかしい。申し訳ない気持ちで一杯だった。よくこんな最低な野郎に付き合ってきてくれたな。彼女の愛は本物なんだな。そう思った。
俺が落ち込んだら春波はもっと落ち込む。
だから…
ぎゅっと
ぎゅっと
きつく
抱き締めてあげた。
冬になり、冷えきった体も傷を負った心も温めるように。
小さな体は意図も簡単に俺の腕に包み込まれた。
「辛かっただろ、苦しかっただろ。ごめんな、気づいてやれなくて。」
春波は黙っていた。驚いているのか、泣いているのか…俺に確認する術はない。
「いいの。私が調子に乗っちゃっただけだから。」
「マリアが調子に乗っちゃいけないなんて、誰も決める権利なんてない。
そんなんで悪いなんて思っちゃダメだ。」
「ありがとう。もう少しこのままで…」
「ああ、わかってる。」
どれくらいたったのだろう。
しばらく頭を撫でていると…
なにやらゴニョゴニョと耳元で聞こえる。
そして
「よし!!」
マリアは俺の肩を掴み。
「ありがとう。もう情けない私は見せないわ❗」
普段の春波じゃないか…。戻ってくれてよかった。
俺はいつでも泣きついていいんだぞ。なんて言いたかったけども。
ここはあえて
「そうかい。そりゃ俺も嬉しい。」
なんて、言ってみる。
会話が一段落ついて、春波を見ているとだんだん顔が赤くなっているのがわかった。
さっきまで、自信満々な表情をしていたのに…
そして、
シュタッと俺の逆がわを向く。
「今日は帰る。また明日…」
顔を見せずにそそくさと行ってしまった。
しかし俺は
「解決策。見つけような‼」
彼女はビクッとしたにもかかわらず、無視して行ってしまった。
長い時間座ったまま腰を捻らせていたので、腰がとても痛い事に気づいた。
「俺も帰るか…」
後になって俺は恥ずかしさのあまり悶絶することになる。